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【Shooto2025#09】亮我の挑戦を受ける関口佑冬「先は見ていない。胸を張って正規王者になることしか」

【写真】9月のニューピアホール大会で次戦に向けてマイクを握った際、記憶にない母への呼びかけを行った関口。その想いが通じることに(C)MMAPLANET

16日(日)東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto2025#09にて、修斗世界フライ級王者の関口祐冬亮我の挑戦を受ける。
Text by Takumi Nakamura

関口は1月大会で安芸柊斗を下してフライ級暫定王座を獲得。5月大会で正規王者・新井丈との統一戦が予定されていたが、新井の負傷欠場により試合そのものが流れた。

これを受けて関口が正規王者に昇格し、ランキング1位・亮我を迎え撃つ形となったが、関口自身は「自分ではまだ自分のことを正規王者だと思っていない王座決定戦のつもりで戦う」という。

今大会は年内最後の後楽園大会、その舞台に立つ王者として関口は「混じりっ気なしの総合格闘技やMMA、修斗を見て欲しい」を語った。


相手云々ではなく、常にレスリングとグラップリングの向上を視野に入れてやっている

――当初、関口選手は5月のニューピアホール大会で新井丈選手とフライ級王座統一戦で対戦予定でしたが、新井選手の負傷欠場で試合が流れてしまいました。あの時は心境はどういうものだったのでしょうか。

「新井戦が流れたあと、実は別の相手で試合が決まりそうだったんですよ。そうしたらその相手も怪我してしまって。それでも修斗側がギリギリまで相手を探してくれたのですが最終的に話がまとまらなくて、結果的に欠場という形になりました」

――そうだったのですね。とはいえ対戦相手が二転三転しつつも試合が決まらず、気持ち的に落ちることはなかったですか。

「今思うと逆によかったかなと思います。僕もちょうど子供が生まれたタイミングで、育児に集中させてもらったので、いい休養期間をもらえました」

――新井選手の欠場により関口選手が正規王者に認定され、今大会ではランキング1位の亮我選手の挑戦を受けることになりました。亮我選手の印象は?

「すごく勢いがある選手ですよね。あとはファイトスタイルは自分と似ているけれど、ゲームメイクのやり方は自分とは真逆のタイプだと思います。自分は結構相手の様子見て戦うタイプですが、亮我くんは必ず自分から試合を作りに行くタイプで、そこに勢いを感じますね。自分のスタイルを貫くという意味では新井丈とも似ている部分があると思います」

――当然対策は変わると思うのですが、そういった意味では新井戦に向けてやってきたことを継続している部分もありますか。

「自分は相手どうこうで練習内容が変わることはないですね。自分が目指している強さの部分に対して練習をしているだけで、仮に相手が足関をめっちゃやってくるから、足関の練習をやるとか、そういうことはあまり考えないです」

――では関口選手自身、今はどんなことに力を入れて練習を続けているのですか。

「今後も続いていくキャリアの中で、自分の目標はずっと変わらなくて、それはレスリングとグラップリングを強化することです。正直僕は喧嘩ができれば、そこまで(打撃の)技術は要らないと思っているんですよ。特に自分の階級は打撃がどれだけ秀でていても、一撃で試合が終わることってほとんどないじゃないですか。

分かりやすい例で言うと、安芸(柊斗)くんとシモン(スズキ)くんがやった試合みたいに、どちらかが打撃を効かせても、結局組まれてドロドロになると、組みが弱い方が負けてしまう。それが自分の階級、フライ級だと思っています。だから相手云々ではなく、常にレスリングとグラップリングの向上を視野に入れてやっている形ですね」

――前回インタビューした時にも、関口選手はフライ級は打撃一発でKO決着になりにくい分、組みの時間が長くなりやすい→組み技の強さが必要という話をしていました。そこをさらに突き詰めているような形ですか。

「はい。そこはもうブレることなくというか、やる相手が誰であっても変わらないですね」

――ちなみにここ最近のMMAの試合を見ていて、関口選手的に印象に残った試合はありますか。

「自分は結構扇久保(博正)さんが好きで、扇久保さんの試合は印象に残っています」

――まさに関口選手の理論を体現しているのが扇久保選手だと思います。

「堀口(恭司)さんも打撃で行けるとこまで行ったけど、デメトリウス・ジョンソンにはレスリングと寝技で負けてしまって、そこから組み技を取り入れて、今ものすごく完成されたファイターになっていますよね」

――打撃主体の選手はどうしてもキャリアを重ねると反応の速度が遅くなったり、打たれ弱くなってきたりする面もありますが、逆に組技主体の選手は技術が伸びる部分があるのかもしれないですね。

「僕は青木(真也)さんも好きなんですけど、キャリア終盤で長く結果を出し続けている選手は組みの選手が多いいですよね。逆に(イスラエル・)アデサニャなんかはちょっと厳しいかもって感じじゃないですか。唯一例外で(イリャ・)トプリアがいますけど、トプリアもUFCに来るまでは寝技で勝ってきた選手で、レスリングと柔術が強い上でのボクシングですからね」

――試合で使う場面が少ないだけで、いざやろうと思えば抜群に組技が強いですよね、トプリアは。

「(シャーウス・)オリベイラと組んだ時にも、普通にトプリアの方が組みも強かったですからね。オリベイラから上を取ってパスして、オリベイラがトライした足関の流れに対しても、普通にケアしながら切って距離を取って立ち上がったじゃないですか。仮にドロドロの展開で組みつかれても大丈夫だという安心感があるからこそ、あれだけトプリアはパンチを振れるんだと思います」

――基本的にMMAにおいて打撃で決着しなかったら絶対に組みの時間が必ず来るわけで、そうなるとそこでどういい流れを作るかが重要ですよね。

「パンクラスのタイトルマッチ(濱田巧×大塚智貴)でも最終的に組み勝った方がスプリット判定で勝ったりもしていたので、やっぱり軽量級は組みだなと思いました。重量級だったらアレックス・ポアタン・ペレイラみたいに組みをやらずに打撃だけでも行けるとは思うんですけど、フライ級でペレイラみたいに左フック一択で攻めていっても絶対に勝てないと思います」

王座決定戦のつもりで戦って、絶対に勝ってベルトを巻きたいなと思います

――試合の話に戻すと、関口選手としては実際に亮我選手とコンタクトして、どう戦うかを決めていく感じですか。

「自分は結構フィーリングで戦うので、いざ肌を合わせてみて、じゃんけんで言うところのグー・チョキ・パー、どれを出すかを決めようかなと思っています」

――今回は防衛戦という形になりますが、試合に向けた心境は普段と違いますか。

「自分ではまだ自分のことを正規王者だと思っていないので、試合に向かう気持ちで言ったら亮我選手と同じ気持ちというか、王座決定戦のつもりで戦って、絶対に勝ってベルトを巻きたいなと思いますね」

――同大会で新井選手が復帰して田上こゆる選手と対戦することになりましたが、このことはどう感じていますか。

「はっきり言って同じ日に復帰するなら俺とやれよと思いましたね(苦笑)」

――先に関口選手の試合が決まっていたとしても、その気持ちはありますよね。

「自分の気持ちとしては新井選手とやりたいですけど、格闘家は一度勝っている選手とはやりたくないものなので。実際に新井選手にどういうオファーがあったのかも知らないし、そこは正直分からないです。ただ新井くんは真面目というか、すごく真っ直ぐなヤツだから、自分が欠場してタイトルマッチに穴を空けているから、ここでタイトルマッチは虫が良すぎると思っているのかもしれないですよね。

あと新井くんのYouTubeやインタビューを見ていると、もちろん強い相手とはやりたいんだろうけど、お客さんが沸く試合を一番やりたいんだろうなと思うんですよ。それでいったら、僕とやってもお客さんは沸かないだろうし、田上(こゆる)くんとやった方がバチバチのストライカー同士で盛り上がると思います。きっと新井くんの定義の中で、殴り合いみたいなことが一番のテーマにあると思うので、もし僕とやることになっていたら、おそらく新井くんが見せたい試合にはならなかったと思います。そういった意味でもこの相手で試合が決まったんじゃないですかね」

――複雑な心境もあると思いますが、新井選手とはいずれ戦いたい?

「そこはもう別に、ですね。新井くんがやりたければやるし、新井くんがやりたくなければやらなくていいかな、と。俺の本音としては負けた選手とは全員やりたいんですよ。初期の頃に負けた梶川(卓)選手ともやりたいし、平良(達郎)くんともやりたい。自分に権力があって好きなだけファイトマネーを積めるんだったら、自分が負けた相手とは全員やりたいです」

――正規王者として防衛を果たしたあと、どのようなビジョンを持っていますか。

「先のことは一切見ていないです。胸を張って正規王者になることしか見ていません。このベルトは新井くんが怪我をして、たまたま自分のところに巡り回ってきたベルトだと思っているので、次の試合でしっかり勝って、第10代修斗フライ級チャンピオンになりたいです」

――今年最後の修斗後楽園大会、ファンに何を見せたいですか。

「“修斗”を見て欲しいですね。打撃の選手は華があるのはすごく分かるんですけど、自分は扇久保さんをリスペクトしているし、修斗の理念である打投極。ジムにも貼ってあるんですよ、『“打て”という“打”ではなく、“投げろ”という“投”ではなく、“極めろ”という“極”ではない。自然の流れにのった技術がとぎれなく連係し、なめらかに回転することが修斗の姿である』って。その通りの試合、混じりっ気なしの総合格闘技やMMA……修斗を見せたいです。

それこそ自分も亮我選手も修斗をやっていると思うんですよ。特別どこかが強いわけじゃないけど、スクランブルの中でパンチを当てたり、タックルも振って上の打撃も振って、全部をごちゃ混ぜにしている。その2人が試合をするわけだから、めちゃめちゃいい試合になると思います」

――攻防に切れ目がない、スタンド・グラウンドが分かれてない…そんな試合になりそうですね。

「逆に新井くんはどちらかというと組みを切って、打撃で倒す感じじゃないですか。あれはあれでお客さんには分かりやすいし、新井くんみたいなスタイルの方が一番ウケすると思います。でも僕(がやっているの)は修斗だし、そこを目指してやっているので、日曜日も修斗を見せたいなと思いますね」

お母さんは十月十日、俺をお腹の中で育ててくれたわけだから、その感謝の気持ちを伝えたいと思いました

――また9月のニューピア大会で挨拶した際、「自分はお母さんに会ったことがなくて、しっかりベルトを獲って、お母さんにベルトを渡したい。もし自分の声が届けば試合を見に来てください」という呼びかけもありました。言える範囲で構いませんが、お母さんとはどういう関係なのですか。

「自分の物心がつく前に両親が離婚しているんですよ。お姉ちゃんがギリ覚えてるかなぐらいの年齢で、僕が忘れっぽいのもあるかもしれませんが、自分の中でお母さんの記憶はないですね」

――そのお母さんが試合を見に来るという話もお聞きしました。あのマイクアピールがきっかけになったのですか。

「あのマイクだけでは難しかったと思うんですけど、あれから自分で色々と調べて直接ではないですけど手紙を渡すことが出来たんです。俺はお母さんに育ててもらったわけではないんですけど、格闘技ができるのは五体あってのことだし、自分の子供が産まれる時に出産に立ち会ったんですね。そこで母親の偉大さみたいなものを感じて。

親として育てる・育てないは関係なく、お母さんは十月十日、俺をお腹の中で育ててくれたわけだから、その感謝の気持ちを伝えたいと思いました。その旨を手紙に書いて、連絡先も一緒に書いていたら、お母さんから『ぜひ試合に行かせてください』という感じで、敬語も交えながら連絡が来て、それで会場に来てもらうことになりました」

暫定から正規王者となった2人。ベルトに相応しいファイトに期待したい

――まさに格闘技が色んなものをつないでくれたのかもしれないですね。

「本当にそう思います。もし自分がタイトルマッチをやるタイミングじゃなかったら、お母さんに会おうと思わなかったかもしれないので。しっかり勝って、勝った上でベルトと一緒にお母さんに会えたらいいなと思います」

■視聴方法(予定)
11月16日(日)
午後5時55分~ ツイキャスPPV

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