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【UFC309】展望 レスリング再認識、戦いに飢えるチャンドラー×冷静沈着シャーウス・オリヴェイラ

【写真】激闘必至。それ故にそうならない展開になっても、非常に興味深い(C)Zuffa/UFC

16日(土・現地時間)ニューヨーク州ニューヨークシティのマジソン・スクエア・ガーデンにてUFC 309「 Jones vs Miocic」が行われる。ジョン・ジョーンズvsスタイプ・ミオシッチという重量級レジェンド二人によるヘビー級タイトルマッチをメインとする今大会のコメインは、前王者シャーウス・オリヴェイラとマイケル・チャンドラーによるライト級トップコンテンダーズマッチだ。
Text by ISAMU HORIUCHI

シャーウス・オリヴェイラは2014年前の10年8月にUFCデビュー。オクタゴン序盤は買ったり負けたりが続いたが、持ち前の極めに加えて強力かつ多彩な打撃を身に付け、2018年6月から破竹の8連勝を記録。2021年5月にチャンドラーとの王座決定戦に臨み、2RTKO勝利してライト級王座に就いた。その後ダスティン・ポイエー戦ジャスティン・ゲイジー戦と強打者二人に連勝するも、ゲイジー戦時に0.5パウンドのウェイトオーバーでタイトルを剥奪されてしまった。

2022年10月にはイスラム・マカチェフと王座決定戦に挑むが、2R肩固めで一本負け。昨年6月にベニール・ダリューシュに1RTKO勝利して復活を果たしたものの、今年4月にはアルマン・ツァルキャンに判定1-2で惜敗し、タイトル戦線から一歩後退を余儀なくされている。


マクレガーのやるやる詐欺、被害=チャンドラー

対するチャンドラーはBellatorライト級王座に三度就いた後、2021年1月よりUFCに参戦ダン・フッカー相手に1R2分過ぎに見事な左フックを当て、TKO勝利し鮮烈なデビューを飾った。続く5月には、参戦2戦目にしてオリヴェイラとのライト級王座決定戦という大一番に挑むも、上述のように2RTKO負けを喫した。

その後ジャスティン・ゲイジー戦トニー・ファーガソン戦ダスティン・ポイエー戦とライト級トップ選手と3連戦して1勝2敗だが、全試合が大激闘でいずれもボーナスを獲得している。

昨年前半には稀代のメガスター、コナー・マクレガーとのビッグファイトに向けてともにTUF31に出演し、チームコーチとして競った。が、マクレガーがドーピング検査リストに再登録したのは、番組放映終了後しばらく経った10月のことだった(検査に引っかからないためにはそうする必要があったということだろう)。

そこから半年検査を受け続けたマクレガーがようやく試合出場資格を得たことで、番組放映から1年以上経った今年の6月、ついに両者の試合が組まれた。が、やっと実現にこぎつけたはずの試合も、直前でマクレガーの足の指の骨折を理由にキャンセルされてしまった。

結果──今年の9月、デイナ・ホワイトUFC代表が「チャンドラーは『もう待つのはヤメだ、試合をさせてくれ』と言っている」と発言し、その後すぐに今回のオリヴェイラとの再戦が発表された。チャンドラーは他の選手と試合せずにマクレガーを待ち続けたことで、30代後半の2年近くを浪費したことになる。さながら格闘技版「結婚(対戦)するする詐欺」の被害者の如しだ。

とまれ、今回約3年半ぶりとなる両者による再戦。当然のように下馬評は前回勝利し、近年コンスタントに試合をしているオリヴェイラが有利と出ている。しかし、より声高にこの試合への意気込みを語っているのは、前回の大一番に敗れ、また2年間試合できていないストレスも溜めたチャンドラーの方だ。

「前回は僕が勝ったけど、もう過ぎたこと。現在は今度の試合に集中しているよ」と静かに語るオリヴェイラとは対照的に、チャンドラーは「あの試合の後、キャリアで一番落ち込んだ。22歳でこのスポーツをはじめた時以来の夢が叶う直前で、シャーウス・オリヴェイラにその夢を砕かれた。今回はあの時起きた間違いを正すチャンスだ。奴を倒してナンバーワンコンテンダーになる」と、勝者に保証されているわけではないタイトル挑戦権獲得を前提に話を進める。さらに

「1月あたりにマカチェフがツァルキャン相手に防衛戦を行い、マカチェフが勝つだろう。でも奴は2月末からラマダン(イスラム教徒の断食月)に入るから、しばらく試合はしない。その間にコナーと俺の試合が実現するかも知れないな! それも勝った後に俺はマカチェフに挑戦し、UFC史上最年長ライト級王座となるんだ! その次は(フェザー級から転向を表明した)マックス・ホロウェイとも戦い、倒したい。俺はMMA史上もっとも凄まじい12ヶ月を過ごすことになるな!」と、どこまでもポジティブに壮大な構想を語る、38歳の愛すべきドリーマーだ。

チャンドラー氏の大いなる野望の出発点でもあるこの試合のポイントは、大激闘となった前戦を踏まえて、お互いがいかに修正、進化した姿を見せるかだ。

前回勝利にもオリヴェイラは「同じミスは繰り返さない」

前回勝利したのはオリヴェイラだが、1Rに踏み込んでの強烈なフックを当て先にダウンを奪ったのはチャンドラーの方。それについてオリヴェイラは「僕は下がってしまうというミスを犯した。チャンドラーのような爆発的な打撃の持ち主相手には、絶対に下がってはいけなかったのに。同じミスもう絶対に繰り返さない」と語っている。

持ち前の瞬発力を活かし、遠い距離から踏み込んでの強打を得意とするチャンドラーに対して、打撃の多彩さではるかに上をゆくオリヴェイラ。宣言踊りにしっかりとガードを固めた上で、強烈にして精度の高いパンチ、蹴り、さらに近距離での肘や首相撲からのヒザも織り交ぜながら前に出てこられると、上背に劣り武器も限られるチャンドラーは苦戦を免れ得ないだろう。

そこでチャンドラーにとって勝利への鍵となりそうなのは、テイクダウンの使い方だ。実際オリヴェイラは、前回のツァルキャンでは要所でテイクダウンを許し、いわゆる「塩漬け」にされた時間の長さ故に惜敗している。

「俺はこの2年間オクタゴンから強制的に遠ざけられたことで、このゲームの大局を眺めることができて、大きく成熟した。今までより冷静に計算ずくに、そしてスマートに勝利を目指す『チャンドラー2.0』をお見せするよ」と語るチャンドラー。

これまでUFCで見せてきた殴り合い上等スタイルに抑えを利かせ、ミズーリ大学時代にNCAA D1オールアメリカンに輝いたレスリングを組み込むことこそ「計算づくでスマートな」戦い方ではないだろうか。もしチャンドラーが、前進するオリヴェイラの打撃をテイクダウンで断ち切ることに成功すれば、勝利の確率は大きくと上がる。

もちろんツァルキャン戦でしてやられたオリヴェイラの方も、二戦連続で「漬け」られるつもりなど毛頭ないはずだ。進化した両者の攻防──前回の大激闘をも上回る戦いになるやもしれないファイトに胸躍らせたい。

■視聴方法(予定)
11月17日(日・日本時間)
午後8時00分~UFC FIGHT PASS
午前11時~PPV
午後7時 30分~U-NEXT

■UFC309対戦カード

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者] ジョン・ジョーンズ(米国)
[挑戦者] スタイプ・ミオシッチ(米国)

<ライト級/5分5R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
マイケル・チャンドラー(米国)

<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
ポール・クレイグ(英国)

<女子フライ級/5分3R>
カリーニ・シウバ(ブラジル)
ヴィヴィアニ・アロージョ(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
マウリシオ・ルフィ(ブラジル)
ハメ・ジョントップ(ペルー)

<バンタム級/5分3R>
ジョナサン・マルチネス(米国)
マーカス・マギー(米国)

<ミドル級/5分3R>
クリス・ウェイドマン(米国)
エリク・アンダース(米国)

<ライト級/5分3R>
ジム・ミラー(米国)
デイモン・ジャクソン(米国)

<フェザー級/5分3R>
ロベルト・ロメロ(メキシコ)
デヴィッド・オナマ(ウガンダ)

<ヘビー級/5分3R>
マルチン・ティブラ(ポーランド)
ジョナタ・ジニス(ブラジル)

<ウェルター級/5分3R>
ミッキー・ガル(米国)
ラミズ・ブラヒメジ(米国)

<ウェルター級/5分3R>
オーバン・エリオット(英国)
バシル・ホフェス(米国)

<女子フライ級/5分3R>
ベロニカ・ハルディ(ベネズエラ)
エドゥアルダ・モウラ(ブラジル)

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