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【ONE165】グスタボ・バラルト戦へ、箕輪ひろば「一つのパートが強いのはトータルファイターではない」

【写真】(C)TAKUMI NAKAMURA

28日(日)に東京都江東区の有明アリーナで開催されるONE 165「Superlek vs Takeru」で箕輪ひろばがグスタボ・バラルトと対戦する。
Text by Takumi Nakamura

4月のボカン・マスンヤネ戦では繰り返しローブローを受け、まともに試合ができないまま、判定負けを喫した箕輪。あの試合を自分の経験不足として消化し、自身のMMAの精度を高めるべく練習を続けてきた。箕輪はバラルト戦をクリアし、ストロー級王座挑戦につなげると誓った。


――約4年ぶりの日本での試合が近づいてきました。仕上がりはいかがですか(※取材は22日に行われた)。

「冗談抜きで過去最高かもしれないですね。海外の試合と違って、ずっと日本で調整できるので、やはりそこはやりやすいです」

――何か減量やコンディショニングの面で新たに取り入れたことはありますか。

「いつも通りのことをホームで出来ている、という感じですね。『こういう調整したいな』と思っていたことをやれています」

――前回4月のボカン・マスンヤネ戦は判定負けという結果でした。試合中にマスンヤネのローブローが続いて、正常に進まなかった試合だったと思いますが、あの試合を振り返ってもらえますか。

「結果だけで言えば落としちゃいけない試合だったという自覚はあります。次に誰がストロー級にベルトに挑戦するかを考えた時に、ボカンに勝っていた方が有利だったわけですし、あの負けで(ランキングが)下の選手とやらないといけなくなったわけで。

ただ試合内容で言えば、あれで俺の負けなの?という感想です。まずローブローを3回蹴られていますし、ローブローをもらう前はテイクダウンされてないんですよ。2Rにテイクダウンされてヒジをもらった場面も、ローブローをもらったあとにテイクダウンされている。僕はそこを明確にして欲しくて、結果的にローブローと判断されてブレイクになるんだったら、試合として成立しているのはローブローが入る前までで、テイクダウンされてヒジをもらった場面は判定の範囲外じゃないですか」

――確かに。そこはノーカウントのはずですよね。

「僕はそうなるものだと思っているし、今でもそう思っています。ダメージで言ってもボカンは僕の打撃で顔がボコボコになっていて、ギロチンとアームロックもキャッチが入ってもおかしくないくらい極まっていた。キャッチの有無はレフェリーの判断なのでとやかく言わないですけど、それにしても『う~ん………』という感じです。もし再戦が組まれるなら勝てる、じゃなくてもっと圧倒して勝てます」

――ずばりフィニッシュする自信はありますか。

「はい。ローブローがなかったらギロチンもアームロックも極めていました」

――納得できない試合だと思いますが、そこはどう消化していますか。

「2Rにギロチンが入った時も、ローブローのダメージで下半身に力が入ってなかったんです。あれもテイクダウンされたわけじゃなくて、引き込んでギロチンにいくしかなかったというか。ああいう状況でも一本を取れる選手は取れるわけで、あそこで取れない俺が悪いなって思っていました、“試合直後”は。

でも落ち着いて考えたら、相手の反則でそういう状況に追い込まれているわけだから、なんで反則された方の俺がそう考えなきゃいけないのって(苦笑)。だからあの試合は“実力”じゃなくて“経験”不足ですね。今までああいうローブローをもらったことがなかったし、そういうことが自分の試合では起こらないと思って生きてきた僕が悪かったです」

――ではそのマスンヤネ戦を踏まえて、どのようなことを意識して練習してきましたか。

「僕の理念は総合的に強くなることで、どこか一つのパートが強いのはトータルファイターではないと思っているので、トータルファイターにどれだけ近づけるか。それが出来るのは最初からMMAという競技に触れてきた僕らにしか出来ないことだと思っているので、レスラーに負けたからレスリングを強化する・グラップラーに負けたから寝技を強化するではなく、今まで通り全体的に強くなることを考えながら、要所要所のパーツを磨いてきました」

――MMAは細かい技術を磨く必要がある反面、MMAはMMAという大雑把な見方、いい意味で雑に全体を捉えることも必要だと思っています。

「例えばレスリングが強い選手にレスリングで勝つんじゃなくて、MMAで勝つ。去年RIZINで佐藤将光選手が太田忍選手に勝ったじゃないですか。僕はあれがMMAの一つの勝ち方だと思うんですよ。MMAファイターはああいう対処をしなければいけないと思っています」

――マスンヤネ戦では見せられなかったと思いますが、自分がやりたいことは形になってきていますか。

「そこは間違いないですね。継続してTRI.Hスタジオ、トライフォース赤坂(JTT)、ボクシングジム、大学のレスリング部にも行かせてもらっていて、各々のトップ選手たちと練習しています」

――パ―ツの技術を伸ばしてMMAとして融合させる。時間をかければかけるほど融合するものだと思っているので、今回の箕輪選手の試合が楽しみです。

「僕には僕の中で自分のMMAの強みだと思っている部分があって、それは周りから見ていても分からないというか、実際に戦った相手にしか分からないものだと思うんですよ。で、その強みに自信を持てるようになってきたんです」

――MMAの攻略は単純に攻める・守るだけではなく、相手を崩せるかどうかだと思っています。その相手の崩し方として、如何に技術や戦術を持ち込むかで勝敗が変わるもので、箕輪選手はそこが明確になってきたということですか。

「僕もMMAを始めて14年、半分以上がプロキャリア。しかも何か格闘技のバックボーンがあったわけではないですからね。しかも僕の師は阿部直之という人間で、阿部さんから教わるということも変わらない。だからブレないんですよ。よく色んな場所に行って練習するのがいいという記事や意見を目にしますけど、昔の僕は『かっこつけんなよ。もっと自分のジムでやることがあるだろ』って思っていたんです。

でもその考えも少し変わってきて、トライフォース赤坂がJTTに変わって、色んなコーチが教えに来るようになって、海外だったらここまで進んでいるんだと思う一方、ぶれない軸を一本持っている方が絶対にいいとも感じるんです。

先輩の山上(幹臣)さんがROAD FCでユ・ジェナムとやった時に韓国まで帯同したんですよ。当時うちのジムは出稽古を一切やってなかったんですけど、山上さんが『出稽古をやりたい』ということで色んなジムを周っていたんです。ただそれで結果を出せなくて、帰りのバスのなかで僕に『出稽古は行けばいいってもんじゃない。自分のスタイルが分からなくなる』とボソっと言ったんです。当時の僕はアマチュアのペーペーだったんですけど、そういうものなんだと思って聞いていて、実際に僕は出稽古は行ってなかったんです。

僕はアマチュアはそれでもいいと思っていて、同じ練習相手とひたすら同じことを練習すると、自分の形が出来て自信もつくから、それが試合に出せる。ただプロになるとそうはいかなくて、色んなことを経験して、試合中に何が起きても対応できるようにしないといけない。そうなった時に僕も出稽古に行こうと思ったんですけど、山上さんの言葉が頭に残っていたから、阿部さんに『どうしたらいいですかね?』と聞いたんです。

そしたら阿部さんが『出稽古にいくこと自体は悪くない。それを自分のジムに持って帰ってきて落とし込めないことがダメなんだ。落とし込む作業は俺とお前でやるから、お前は頭でっかちになっていい。色んなことを吸収して持って帰って来い』と言ってくれて。そこからは素直に色んなことを取り入れられるようになりました。だから自分の主観とそれ以外の目で見てくれる人がいるという練習環境はすごく大きいですね」

――実は武尊選手も同じことを言っていました。「海外で新しい技術を教わって、それを日本に持って帰ってきて取捨選択していく」と。どちらか片方だけではだめで、そこを両輪で回すことが必要ということですね。

「そうなんですよ。僕も昔は『練習終わって集合写真とってSNSに載せて強くなるわけねえだろ』と思っていたし(笑)、実際に出稽古に行くとそういうテンションの選手もいるから、あんまり出稽古の雰囲気そのものが好きじゃなかったんですよ。だから僕にとってTRI.HやJTTは出稽古先というよりも、長く練習させてもらっている一つの練習場所で、一週間の練習スケジュールのなかに組みこまれている。そしてそれをまとめるためのSTFでの練習があるという形です」

――さて今大会で対戦するグスタボ・バラルトの印象を教えてください。

「受けが強いグレコローマンレスラーですよね。テイクダウンをしてくるわけではなく、倒されないことを前提に打撃をバンバン振ってくる。山本”KID”徳郁スタイルだけど、そこまで当て勘があるわけじゃないみたいな」

――打撃が得意というよりも好きな印象です。

「あと彼は腕の短さが逆に厄介だと思うんですよ。ここまで入ったら当たらないだろうって距離で当たっちゃうんで。そこはきちっと対処しないといけないですね」

──そこまで相手のことをイメージできていたら、攻略のパターンはいくつもあるようですね。

「今回は攻略しやすいです。過去の試合を見ていても、明確なスタイルチェンジをしている形跡はないので」

――2024年は、どのよう1年にしたいと思っていますか。

「まずこの試合に勝ってランキングの上位に残る。そしてタイトルマッチをやりたいですね。次は挑戦権をかけて日本人対決でもいいんですけど、僕は日本人=同志というイメージがあるので(日本人対決を)やるんだったらタイトルマッチでやりたいです。ONEは近頃の“SNSで煽れば試合が決定”という舞台ではないので、用意された相手に勝って行って、早ければ年内、遅くても来年の春には挑戦したいです」

――急ぐことなく然るべきタイミングで挑戦したい、と。

「これは僕の考えなんですけど、やることをやっていればちゃんと順番は回ってくる。そう思っています」

――それでは最後に日本のファンにメッセージをいただけますか。

「僕は大会の第1試合で、メインじゃないなら第1試合をやりたいタイプなので、まずはONEに感謝したいです。第1試合は第1試合の仕事をして大会を活気づけるので、応援よろしくお願いします」

■視聴方法(予定)
1月28日(日・日本時間)
午後5時00分~ABEMA格闘チャンネル
午後6時30分~ABEMA PPV

■ONE165対戦カード

<ONEキックボクシング世界フライ級選手権試合/3分5R>
[王者] スーパーレック・ギアットムーガーオ(タイ)
[挑戦者]武尊(日本)

<ONEサブミッショングラップリング世界ライト級(※77.1キロ)選手権試合/12分1R>
[王者]ケイド・ルオトロ(米国)
[挑戦者] トミー・ランガカー(ノルウェー)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
青木真也(日本)
セイジ・ノースカット(米国)

<スペシャルルール187.25ポンド (※84.94キロ)契約/3分3R>
秋山成勲(日本)
ニキー・ホルツケン(オランダ)

<キック156.5ポンド(※70.99キロ)契約/3分3R>
マラット・グレゴリアン(アルメニア)
シッティチャイ・シッソンピーノン(タイ)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
ゲイリー・トノン(米国)
マーチン・ウェン(豪州)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
平田樹(日本)
三浦彩佳(日本)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
ダニー・キンガド(フィリピン)
若松佑弥(日本)

<キック・ヘビー級/3分3R>
ラデ・オパシッチ(セルビア)
イラジ・アジズプール(イラン)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
ボカン・マスンヤネ(南アフリカ)
山北渓人(日本)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
グスタボ・バラルト(キューバ)
箕輪ひろば(日本)

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