【WJJC2022】嶋田裕太の茨の道=ライトフェザー級。オカシオ,イアゴ&昨年準優勝者撃破で表彰台&三強戦
【写真】嶋田のハーフ、レッスルアップ、スイープはワールドクラスだ(C)SATOSHI NARITA
2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて行われる、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権。
Text by Isamu Horiuchi
プレビュー第2回は、NYのマルセロ・ガウッシア道場で長期修行を続ける嶋田裕太が出場するライトフェザー級の見どころを紹介したい。
強豪揃いのこの階級だが、他の選手から頭一つ抜けた優勝候補と呼べる選手が3人いる。まずは前回優勝のパトことジエゴ・オリヴェイラ。
続いてそのパトと昨年の準決勝で大死闘を演じ、4月のパン大会で優勝を遂げたメイハン・マキニ。3人目は、ADCCブラジル予選にてノーギながらパトを下したジオゴ・ヘイスだ。
ヘイスとマキニは昨年のワールドプロ予選で対戦。この時はヘイスが競り勝ちそのまま本戦優勝を果たしているが、4月のパン大会での再戦時には、50/50シーソー戦の末に12-10でマキニが勝利し、その後も優勝を果たしている。パトが23歳、マキニは21歳、そしてヘイスに至ってはまだ20歳になったばかり。すでに圧倒的な若き力により席巻されているのがこの階級の現状だ。
この3人に加え、昨年の世界大会で組み合わせに恵まれたこともあり決勝進出を果たした米国のマラチ・エドモンドも出場。そして19年の世界大会優勝者の一人である──この時は前人未到の同門4人によるクローズアウトだった──イアゴ・ジョルジ、4月のパンナムにてそのジョルジにストレートフットロックを極めて準優勝を果たしたルーカス・ピニェーロら強力ベテラン勢もエントリーしている。
このような過酷なトーナメントに挑む嶋田は、4月のパン大会以来の試合となる。同大会ではひとつ上のフェザー級にエントリーし、一回戦を順当勝ちした後、僅か10分少々のインターバルで過去2連敗を喫している強豪アレクサンドロ・ソドレと対戦。最初の上選択をアドバンテージと判定してもらえない不運もあり惜敗したが、シッティングガードからの鋭い仕掛けからシングルに移行して倒し切る等、その動きが世界最高峰に十分通じるところまで来ていることが見て取れる内容だった。
今回の嶋田の一回戦の相手は、ユニティ柔術のエドウィン・オカシオに決まった。ジュニーの愛称でWNO等ノーギグラップリングの大会での活躍し、ジオ・マルティネスや今成正和等のビッグネームから勝利を挙げている。シッティングガードから足を絡めてのヒールフックを最も得意とするが、今大会はそれが禁止された道着着用ルール。この分野の頂点を目指す嶋田としては負けられない相手だろう。ちなみにオカシオは4月のパン大会にもエントリーし、初戦で橋本知之と戦う予定だったが欠場している。
2019年には前述したクローズアウトでの世界制覇を含め、メジャー5大会全制覇という偉業を成し遂げた経験を持つ世界的超強豪だ。近年マキニ&ヘイスの超新星2人には連敗を喫しているが、その実力は健在だ。強烈なパスガードの持ち主のジョルジに対し、やはり上攻めを得意とする──同時にシッティングからのレッスルアップにも一段と磨きがかかっている──嶋田がいかに自分のペースで試合を運べるか。
今から9年前、2013年のブラジレイロ紫帯ライトフェザー級決勝で、ジョルジに勝利している嶋田だが、茶帯以降は対戦がなくても実績という点でリードを許している感は否めない。翌日の準決勝進出=世界のメダル獲得に向けて、最初にして最大の山場がこの試合となりそうだ。
このジョルジを倒せて、はじめて準々決勝に進める嶋田に立ちはだかる可能性が高いのは、昨年準優勝のマラチ・エドモンド。楽な相手であるはずはないが、エドモンドは黒帯での試合経験がまだ少なく、4月のパン大会でもルーカス・ピニェーロにチョークで完敗している。ジョルジに比べれば与し易いと言えるかもしれない。
ここも超えることができた場合、翌日の準決勝で嶋田を迎え撃つのはおそらくメイハン・マキニ、そしてさらに決勝で当たるのはパトことジエゴ・オリヴェイラとジオゴ・ヘイスの勝者だろう。つまり最終日には、現在この階級を席巻する真のトップの3人のうちの2人との連戦が嶋田を待っていることとなる。
頂点への道のりは目眩がするほど険しいが、4月の見事な戦いぶりから判断する限り、最終日に世界最高峰と渡り合う嶋田の勇姿を我々が見られる可能性は大いにあるだろう。