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【Special】月刊、青木真也のこの一番:5月─その弐─オリヴェイラ✖チャンドラー「遠回りをして最後に」

【写真】UFC在籍11年目、ライト級で世界の頂点に立ったシャーウス・オリヴェイラ (C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

2021年5月の一番、第ニ弾は15日に行われたUFC世界ライト級選手権試合=シャーウス・オリヴェイラ✖マイケル・チャンドラー戦について語らおう。


──青木真也が選ぶ2021年5月の一番、2試合目をお願いします。

「オリヴェイラ✖チャンドラーです。この試合、オリヴェイラがパンチでチャンドラーに勝ったことは当然のように注目されますが、そのオリヴェイラの強味は下……ガードで守れることにあったと思います。初回のピンチをガードで凌げたことが大きかった」

──初回に右を効かされ、最初は亀になって足に組もうとしたところでパウンドを受けて、ガードを取ったところですね。

「ハイ。オリヴェイラがガードを取ると、上に居てもサブミッションを警戒してチャンドラーも勢いを持続することができなかったです。あそこをガードで凌げたことが、勝負の分かれ目でした。

ただし、ガードを取ることが誰しもに有効ではなくて。それはオリヴェイラの技量があるからで。チャンドラーと5分✖5Rと戦う。25分の試合ですけど、チャンドラーは割と短距離走の選手です。その試合で最初のピンチをガードで凌げたのはさすがです」

(C)Zuffa/UFC

──その序盤、思った以上に身長差があってチャンドラーはボディ打ちしか見せていなかった。これは近寄れないのかという風にも見えました。

「相打ちになりそうな感じで。だから、結果的にああいうフィニッシュはあると思っていました」

──オリヴェイラが効かされてガードを取ったのとは対照的には、チャンドラーは効かされたあと組みにいかなかったです。

「MMAに於いて打撃の人、一点突破型になっていますね」

──青木選手はチャンドラーのUFC初戦後、まだオリヴェイラ戦が決まる前にチャンドラーはオリヴェイラに分が悪いと言っていましたしね。

「オリヴェイラ推しでしたよね。それはウィル・ブルックスなんです」

──ウィル・ブルックス?

「ハイ。もともと2人ともウィル・ブルックスと戦ってます。で、チャンドラーはブルックスにやられていて、オリヴェイラは完勝しています。そこを見て、両者の間に力の差はあるんじゃないかと僕は見ていましたけど、やはりUFCなんだということを再認識させられますね。それもウィル・ブルックスが勝てなかったわけで……そこは、ちょっと感じましたね」

──UFCが抜けていると。

「でも、皆が分かっていると思いますよ。だってねぇ、レベルが違うじゃないですか。そんな場所で11年、オリヴェイラは興味深いキャリアを積んでいます。結果的に全部を埋めてきた」

(C)DAVE MANDERL

──実はオリヴェイラのUFC初戦が、たまたま五味選手、岡見選手が出場した大会で(※UFC on Verus02。五味がタイソン・グリフィンにKO勝ち岡見がマーク・ムニョスに判定勝ち)、全く知らない選手だったのですが、見事に腰を切った腕十字をダレン・エルキンスに極めて、その当時からUFCで下から極める選手がいるんだって驚いたことが思い出されます。

「でも最初は言えば、下だけの選手だった。なんか派手なサブミッションはあるけど、穴もある。そうだったのが次に打撃ができるようになった。でもスクランブルで逆に取られもした……、そうするとレスリングに関しても穴を埋めた。それもウィル・ブルックス戦なのですが、テイクダウンをしましたからね。

これは異常な進化……です」

──異常ですか。

「もともと寝技の人間が、遠回りをして最後にカチっと合わせることができた。ここまでの進化は、ほぼほぼ例がないですよね」

──現代MMAでいえばボクシング&レスリングでいくと、ここまでのガードワークを身につける時間はないかもしれないですね。

「背中をつける練習をしている人間は、米国でも少ないかもしれないですけど……だからといってオリヴェイラが柔術やグラップリング競技で結果を残せるのかといえば、また違う話で。でも、本当にスペシャルな存在です」

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