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【Special】月刊、青木真也のこの一番:8月─その壱─黒部三奈×杉本恵「女子格闘技っていう表記自体…」

【写真】黒部の頑張りの裏で、青木は女子MMAに何を感じていたのか (C) KEISUKE TAKAZAWA/ MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年8月の一番、第一弾は1日に行われたプロ修斗公式戦から黒部三奈✖杉本恵の一戦を語らおう。


──8月度の青木真也が選ぶ、この一番。最初の試合をお願いします。

「黒部三奈✖杉本恵ですね」

──修斗女子スーパーアトム級王座決定戦ですね。

「ハイ、黒部✖杉本なのですが──まず修斗の大会が5試合しかなかった。そこですよね。現状の後楽園ホールの使用時間の問題で、それだけしか試合が組めない。

そうしたら、余計にお客さんもチケットを買って会場に来ようっていう気がなくなるじゃないですか。大変です。そんな時にパンクラスみたいに当日に『やっぱダメヨ』みたいなことが起こると、お客さんもチケットを買うことに慎重になります」

──当日に陽性反応が出た、そして大会が中止。これは美談ではなく教訓にしないといけないわけですね。

「チョイ、この現状を考えて違うやりようはあったでしょうね」

──そこは業界全体でありんがら、個々が考えるしかない。そんななか黒部✖杉本戦がなぜ、今月の一番になったのでしょうか。

「黒部さんは女性で。女性で43歳、このコンディションを維持するのって男以上に大変だと思うんです。筋量は下がってくるし。ただ、これを言ってしまうとアレですが、女子のレベルは正直そこまで来ていないから──というのはありますよね」

──修斗のトーナメントは経験値に違いもあり、男子のベルトとは成り立ちから違うモノになりましたね。

「ここでタイトルを創って、タイトルがあるから回っていくというのはあるのでしょうが……」

──にしても、王座決定戦の1試合で決めても良かったのではないかと。

「そうですね。ベルトを獲るというところで、どの階級も公平ということはないのですが、それでも……競技レベルからしてちょっとしんどい。それは修斗だけに限らず、そういうもので。それでも黒部さんのアレをやり切る能力、努力は凄いモノがあるんだと思います」

──黒部選手はフレッシュな部分がありますよね。

「フレッシュですか?」

──格闘技を始めたのが遅かったので、10代や子供の頃からレスリングや柔道をやっていて、競技生活を続けている選手と比較すると、疲弊度が少ないのではないかと。

「それはそうですね、ずっとやっている人と違うというのはありますね」

──メンタル面でも、強くなりたいと思い続けるのは大変なことではないでしょうか。

「そこはもう本当に大したモノだと凄く思います。と同時に試合内容としては女性って倒れない。特にあのレベルだと。だから見ていて面白いとは僕は言えなかったです」

──青木選手からして、面白いと思える女子MMAはあったのですか。

「僕ねぇ、それ実はないんです(笑)。女子の試合が格闘技として面白いと思えた試合はほぼないです。ロンダ・ラウジーですから、ちょっと世の中のように熱狂はできなかった。格闘技としての強さを語るなら、やっぱり男子の試合を見ちゃいます」

──今やジェンダーフリーの世の中で、女子MMAという名称すら危うい表現なのですが、そこに確固たる違いは残っています。

「凄いセンシティブな問題で、女子格闘技っていう表記自体、僕は少し気をつかってしまいます」

──ただし、女子選手の試合を楽しむには男子とは競技レベル間に差があり、『女子だから』、『男子とは違う良さがある』という風に見る必要があるということですね。

「そうですね。だから別競技としての楽しみしかないんです」

──それでも随分と女子MMAのレベルが上がりました。

「そうですね、スマックガールとか男子のMMAが今とほぼほぼ同じルールで戦っている時に、パウンド禁止で寝技30秒とかやっていたわけで。パウンドを解禁する・しないで、論議になるような。修斗にもしてもG-SHOOTOが上の方だけパウンド有りで、ほとんどの試合がクラスC+っていう、アマ修斗でヘッドガード無しルールを創って試合をしていたんです」

──確かにG-SHOOTOは青木選手が修斗の世界チャンピオンになった前後でも、パウンド無しのルールを採用していたわけですね。

「ハイ。女子に若林(太郎)さんが力を入れていて、色々と試すなかにプロ興行でもアマ+で試合を組んでいた」

──MMAは色々な評価の仕方があると思います。頑張っていることも評価ですし、ただし頑張っただけを評価の対象にしてはいけない。特にトップの戦いでは結果&内容が問われるものです。

「この試合でいえば、あんな風な内容になるとは思っていなかったです。でもスタイル的、相性としてタフファイトになりがちですね。被弾しても倒されないから、貰って戦うことができるんです。

気が強いから殴り合いになるし。だから、僕としては格闘技の面白みはないんです。ボクシングで八島有美選手が急性硬膜下血腫で倒れたこととか思い出されたりして」

──それをいうと男子でも起こりえることですよね。

「ずっと殴られ続けると、ですよね。殴るじゃなくて、殴られ続けると。女性は男以上にやり合うところがありますし。いずれにせいても究極、黒部✖杉本のタイトル戦で見えてくるものは黒部三奈のストーリーであって、女子MMAの展開というのは見えてこない。女子は難しいです」

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