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【ONE】青木真也<06>「UFCって二元論の舞台だと思わている。深みがないと言う人がいる」

Shinya Aoki【写真】青木の言葉はともすれば上から目線で独善的と取られるかもしれないが、決してそうではない。彼の言葉はMMAがMMAを理解していない者によって伝えられているという我々、メディアへの警告であり、注意喚起でもある(C)MMAPLANET

青木真也ロングインタビュー第6弾。正体を現した真性MMAアナリストが、MMAの行間を読む──余白の楽しみ方を教示する。

強い弱いという二元論でないMMA、そこにはファイターを人間として見続ける。青木のMMAとの接し方には、絶対的な『愛』が根底に存在する。

<青木真也インタビューPart.05はコチラから>


──ローゾン×ヘルドは足関節マスターのヘルドが、そのスタイルを捨ててテイクダウンとトップキープをしたのにも関わらず下にいたローゾンが判定勝ちをした試合でした。

「ハイ。で勝ったローゾンが『100パーセント、僕の勝ちはない』とインタビューで話したという。ホント、僕はマーチン・ヘルドの戦い方が好きで、これまでずっと見てきました。やっぱり、そのMMAの行間を行く幻想を持つファイターじゃないですか、ヘルドっていうのは。その彼がUFCデビュー戦でディエゴ・サンチェスと戦って、下からの仕掛けを徹底的に潰されるという現実がありました。

だからローゾン戦は同じ轍は踏まないっていうトップコントロールを見せた。でも、判定負け。いやぁ、もうねヘルドの心情を想うと……。と同時に、その哀愁が良い」

──それこそ、リアルだらけのMMAの行間を読む楽しみ方ですね。

「いやぁ、だってさぁ……ローゾンからあれだけテイクダウンを取っているんですよ。それなのに負けた。それだけに哀愁漂う余白は良かった。でね、勝者に『俺の負け』なんて目の前で言われてしまう。あの瞬間、見ているこっちの方がリッチ・クレメンティのアンクルを取った試合や、タイガー・サルナフスキーにヒザ十字を極めた試合を思い出して。

あのヘルドの負けに対して、そりゃあ誰だって判定がどうなんだっていう見方はできますよ。でもね、そこに哀愁を感じられるか、ヘルドの気持ちを思いやることができるのか。

それはBellatorの頃から、彼を見てきたかどうなんです。キャリアのなかではデイブ・ジャンセン戦で負けてリベンジし、でもウィル・ブルックス戦という大切な試合を落とした這い上がってUFCに行き、スタイルまで変えて勝利を欲したという背景を知っているのか。

ただベラトール出身で、ポーランドから強いヤツが出て来て、ジョー・ローゾンっていうもう10年以上もUFCで戦い続けているヤツと戦う。そんな風にただ強いヤツと強いヤツが戦ったわけじゃないんですよ。こういう言い方は高島さんは嫌がるかもしれないけど、強いヤツと強いヤツが戦うだけじゃ熱くなれない。でも、その背景を知っているから楽しめるんです」

──でも、青木選手……ローゾンもヘルドもただ強い選手じゃないですよ。今、青木選手が言ったように彼が足関節でキャリアを積んできたという歴史を見ていると。

「そこなんですよ、そこッ。多くの人がUFCで戦っている選手のことを強いファイターっていうことぐらいでしか見ていない。でもね、強いヤツの歴史を知って彼らの試合を見ているから、熱くなれる。それをね、ただ強いだけなら──って言われると、そういう発言に対して、高島さんは敏感になっているなって(笑)」

──あぁ、今の青木選手の言葉で腑に落ちました。

「どう強くなってきたか。それが前提にある人と、上がってきた者を見ているだけじゃ思い入れも違いますよ。それをね、強いヤツと強いヤツが戦うから面白い、楽しみにしているっていう風に勘違いされているんです」

──なるほど。いや、本当に記者としての慧眼がないことを露呈してしまうのですが、コナー・マクレガーがジョゼ・アルドに勝つことなんてないと思っていました。チャド・メンデスにも。で、あんな試合をされると自分の見る目がなかったことなんてうっちゃって、マクレガーの試合を楽しんでしまうんですよね。

「それが上がっていく段階を見ていくということなんですよ。マクレガーはあの言動がなくても、見るに値するファイターなんです。さらに言動を持って価値をあげている。そこらへんをね、強くて面白いって……上がった所だけを見て、勘違いして見ちゃっているんです」

──MMAが好きな人には第2、第3のマクレガーを自分のなかで発見し、それが外れようが上がる前から選手を追ってほしいですね。そこに役立てる媒体でないといけないと自分自信を戒めることができます。そうなれば、ただ強いだけ……何て風にMMAは見られることはない。

「ほらアスリートの本って、ただの成功例なら売れないはずなんですよ。運動能力の高い人が、その運動能力の高さを使って成果を残した。それって一般の人は何とも思わない。

でも、そこに工夫したこととか、心の葛藤が織り込まれるから商品として売れる。読んでいる人達に伝わる。

それと同じで僕は強いMMAファイターが、ただ強いとは思ったことはないし、その裏でどういうことをやってきているか、見ていなくてもそれぞれのストーリーが存在して然りだと思っています」

──ただ強い選手でなく、強い人間として青木選手はMMAファイターを見ているということですね。あぁ、自分はそこをまるで無意識に伝えてきたことに気付きました。

「そうやってただ強いだけでなく、背景を見ることが当然になっていたからですよ。で、そこが他と剥離があることに気付いていなかった、と」

──なるほど、勉強になります(苦笑)。本当にその通りでした。

「ただ強いから、記事にしていると思われているんですよ」

──……。

「だって皆、二元論じゃないですか。MMAに対して。MMAを深く語っているのに、MMAPLANETは二元論の権化と思われているんですよ」

──アッハハハハハ。そうだったんだ。

「だから、UFCって二元論の舞台だとずっと思われているってことなんです。でね、そこに行く人間ってMMAをしっかりと見ていない。それは個人の勝手なんですけど、見ていないから二元論で語る。

UFCのことを深みがないと言う人がいるじゃないですか。でも、そうじゃない。どれだけのことをやって、選手があの場で戦っているかを知らない。見ようとしない。歴史や背景を見ることができていない」

──う~ん……でも、それはメディアとして力不足を感じるしかないです。

「結局、そこまで見えている人、見ようとしている人のパイってどうなんだってことですよ。何をするか、何を言うか──ではなくて、誰が言うのか、誰がするのか。そこでしか、MMAを見ることができていないのが現状です。

正論としては何を言うか、何をするかが大切。でも、商売にするには誰が言うか、誰がやるのかで落ち着いてしまっている」

──MMA専門メディアとして、身を引き締めないといけないです。

「この議論が存在するだけ、凄いことだと僕は思っています」

──そこも達観していますか(笑)。

「だからって、見ていて何とも思わない試合だってありますよ」

──それも当然だと思います。

「でも、これは……って響く試合がある。響くファイターがいるんです」

<この項、続く>

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