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【ONE】青木真也<05>「どこまでいっても愛」。「行間なんですよね、MMAのファンタジーって」

Shinya Aoki【写真】ついに論客 としての秀でた一面を見せることとなった青木。そのMMA論を堪能してもらいたい(C)MMAPLANET

青木真也ロングインタビュー第5弾。理屈としては分かっても同意できない──つまりは共感できない青木の感性。ただし、彼のMMAを見る眼は確かだ。

泥沼、出口の見えない青木真也インタビューはここから急転直下、第三者としてMMAを語ってもらうことに。技術論に上乗せされた情感を感じ取る青木の感性。ブライアン・スタンを凌駕することは当然、ケニー・フロリアンやドミニク・クルーズにも負けないスーパーMMAアナリストとしての青木真也がついに正体を現した。

<青木真也インタビューPart.04はコチラから>

──格闘技界に向けての発言は、それは皆が色んな思いで聞いていると思います。

「理解されないですよね。勝ち負けじゃない。相手はどうでもいい。ベルトは興味ない。でも、それで食っているんだから理屈としては通っているんです。そして賛同はしてもらえない。万人が理解できるものじゃないから」

──万人の理解を求めていないじゃないですか。

「そう、それですッ!! 嫁にも議論することが無駄だって言われました(笑)。僕は他人の……例えば、今ここで一緒に話している高島さんの考えを変えようとか、そういうことを試みようとすることは無駄だと思っています。

で、家族っていう単位でも極論でいえば他人ですから。嫁には嫁の考えがあって、僕には僕の持論がある。上手くやっていくには、相手の意見を尊重しあって生きるしかないんです。だから、人の考えを変えようという気持ちは全くないです」

──このインタビューにしても興味は持ってもらえると思います。でも、読者も青木選手の考えに共感する人はいないでしょうね。

「分かんないでしょうね。で、イラつく」

──分かっていて、話すから困る(苦笑)。ただし、青木選手がチェックした試合について語る。これは絶対にMMAファイターも興味深く読んでくれる確信があります。

「そうそう『青木選手、最近どうですか』って尋ねられても、結局はこういう話になってしまうので」

──では、ここからは人間・青木真也へのインタビューではなく、MMAアナリスト青木真也へのインタビューに変更しましょう(笑)。

「そうしないと、もう哲学インタビューになってしまって底なし沼状態になってしまう。話にならないですからね。もう、この堂々巡りで(笑)」

──その通りです。だからもう、そういう話は切り上げましょう。で、唐突ですが最近、気になった試合はありましたか(笑)。

「いきなりですか(笑)。そうですね……、桜庭選手と戦った時に『どこまでいっても愛なんだ』って言ったんですけど、最近またそうやって思ったのがBJ・ペンでした」

──1月15日、ジャイー・ロドリゲス戦は切なかったです。

「どれだけあの若い選手が可能性を秘めていても、やっぱりBJの試合はBJ軸で見ますよね。BJには思い入れがあって、2008年や2009年に本気でBJと戦いたかったし」

──その想いをインタビューで語り、団体の原稿チェックで800ワード分削られたこともありました。添削されて、腹が立って元の原稿をごみ箱に捨ててしまいましたよ。この日にために置いておくべきでした(笑)。

「ハハハハ。そのBJがやっぱり落ちてくる。階級だけでなく力も。それでも試合に出るんだっていうのを見ていると、思い入れがあって感情にビシビシ訴えてくるんですよ。

そういうものですよね?」

──その通りなんだと思います。ずっとMMAを見るというのは。

「愛なんですよ」

──MMAはリアル。残酷なほどリアルです。だからこそ、ファンタジーを求める。それが愛であることも当然ありえます。シラットの技がケージの中で見られる。カポエイラのメイアルーア・ジ・コンパッソでKOする。そんなシーンに思いを馳せる。

「余白です。行間なんですよね、MMAのファンタジーって。MMAは決定的な軸があるから、余白の部分で戦うにはハードルが凄く高いですからね。だから求める。それを求めるからMMAは楽しい」

──ハイ。個人的にはそこがMMAと巌流島の違いです、自分にとって。恣意的な場所で見られる現象は、そのまま描写して終わりなんです。突拍子もないから、ファンタジーなんです。

「そう。何だろうな……目の前に今、コーヒーがありますけど、それを飲んだことに対して、コーヒーを飲んだってことで終わるのか、それを村上春樹や村上龍のように、その背景、情景に切り込みを入れて長く描写していくのか」

──ハイ。

「そういう格闘技をやりたいんですよ。そういう部分ではクロン・グレイシーと川尻達也の試合は行間が期待できる試合でしたし、クロンが裏切らなかった」

──それはどういう部分で、ですか。

「川尻選手のクリンチアッパーに対して、クロンが引き込んだ。あの容赦ない、攻撃を無効化する手段。もう、思わずにニヤリですよね。

お互いがテイクダウンされたくないっていう気持ちで戦っているから、繰り広げられるのがダーティーボクシングです。クロンはあっさり、それを無効化してしまった。

今まで見てきた世界観をアッサリとクロンは変えてしまったんです。それはライアン・ホール×グレイ・メイナードの試合にも通じています。あれで判定勝ちできると、MMAの技術体系が変ってきますよね。

あのゲームで勝ちになるという結果が出た。これが続くようだと、試合の作りとして幅が出来るので面白みはあります。ホント、コンセプトとしては自分が10年前にやっていた事と同じなんです。だから、あのライアン・ホールの勝ちで自分の10年間を取り戻された感じがします」

──格闘技論でいえば、立ち技は付き合わないと負けで、寝技は付き合わなくても構わないというのは、立ちに偏向している。でも、北米MMAの隆盛によって、ワールドスタンダードになりました。そんな10年間を経て、ライアン・ホールの勝利があったと。

「あの判定がずっと続くことはないと思います。でも、アレが評価されると格闘技はずっと面白くなるし、下攻め軽視が変わると良いなという気持ちは正直あります。グラウンドで蹴りがないと、寝転がった同士での足関節の形は絶対的に有効なはずですからね。

北米のスクランブルMMAを覚える前の発想。以前のMMAの発想を持っているとMMAはもっと自由で良いものなんですよ。だから、ライアン・ホールの勝利はMMAをより描写できる試合だったんです」

──いやぁ、やっぱり青木真也のMMA解析は面白い。

「でもね、高島さん……ライアン・ホールを語って、それでこうやって面白いっていう人が普通にいたら、ゴン格は今の5倍は売れていますよ(笑)。今の日本の感じだと、自由な発想を持って格闘技やる余裕がない。選手も、団体もです」

──メディアもですね……。コーヒーを飲んだ──だけでない描写。勉強させられます。

「僕らが今、話している格闘技論は難解じゃないですかね。MMAだけ見ているっていうのも、問題だと思います。他の競技に関して、教養というか知識が無いとMMAを読めないんじゃないかと思います。例えばジョー・ローゾンとマーチン・ヘルドの試合ですけど……」

<この項、さらに続く>

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