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【UFC242】オクタゴン2戦目=モハメッド戦へ、佐藤天 in フロリダ「自分は失うモノはありません」

Ten Sato【写真】インタビュー中に出てきたトレーニング・パートナーのシャミル・ニカエフと。ニカエフはキャリア負けなしの9連勝中の選手で、タイガー・サルナフスキーやクリストス・ギアゴスに勝っている (C)TAKASHI SATO

7日(土・現地時間)にアラブ首長国連邦のアブダビにあるduアリーナで開催されるUFC242「Khabib vs Poirier」。

正規王者カビブ・ヌルマゴメドフ✖暫定王者ダスティン・ポイエーのUFCライト級王座統一戦がメインで同大会に、佐藤天が出場しベラル・モハメッドと対戦する。

7月からフロリダのハーノックス所属となり、太平洋を渡った佐藤にとってオクタゴン2戦目となるモハメッド戦を前にして、フロリダでの練習を振り返ってもらった。


──いよいよUFC第2戦が迫ってきました。

「ハイ、土曜日にフロリダを出ることになっています(※取材は28日(水)の夜に行われた)」

──今も夜の練習が終わったばかりだということですが、ジムからファイターズハウスまではどれぐらいの距離なのですか。

「車で10分ぐらいです。一緒に住んでいる選手の車に同乗させてもらって行き来しています」

──2カ月弱の滞在を振り返ると、どのような気持ちでしょうか。

「充実しています。とにかく格闘技に集中できています。午前中にスパーリング、MMAのドリル、レスリングだったり日によってメニューは違うのですが、激しい練習をして、午後はテクニックだとかミット、ジム・ワークをしています。それとは別にフィジカルをやるような感じですね」

──常に強度が高そうですね。

「ハイ。そのせいもあって水曜日は半休になっています。朝はレスリングなのですが、そこで一度疲労が蓄積してくるので、午後は休みになります」

──それらの練習が全てハードノックスで出来ているということですね。

「そうです。レスリング、打撃、フィジカルのコーチがいて。柔術の黒帯の選手とか、試合が終えた選手が持っている技術を教えてくれるという感じですね。Bellatorに出ているローガン・ストーレーがカレッジで4度オールアメリカンになっていて、ハードノックスで一番レスリングが強い。彼にレスリングを教わることも多かったです。

午前中は全体練習で午後はフィジカルにしても、ミットにしても試合前の選手が対策練習や強度をさらに上げたり、自由度の高い練習ができるようになっています。コーチのいる日が決まっていて、全員が揃う日なんかの午後の練習は、教えを受けたいコーチにお願いする形ですね」

──一般のメンバーのクラスなどはなく、全てプロ練習なのですか。

「昼と夜に一般クラスが1コマずつあります。昼が打撃、夜は打撃とグラップリングのクラスがありますが、凄く人数は少なくてほぼプロだけのジムですね」

──プロへの指導だけで成り立つジムがあるというのが、また米国の凄まじさですね。

「一般クラスはセレブな会員さんが、フィットネス感覚でやっているようなものですね(笑)。他のジムがどうかは分かりませんが、ハードノックスにはジム自体に大きなスポンサーがついているようで。一度、レスリングの練習の前にコーチから『ジムの設備がアップグレードされたけど、この環境は当たり前じゃないんだぞ』って発破をかけられたことがありました。

レスリングの練習が一番厳しくて、疲れて休む選手も出てきますし、出ている選手でも顔に気持ちがひけている様子が出ることもあるので。『勝たないと、これが続くわけじゃないんだ』って本気で怒っていました。あの時も改めて、凄く良いジムだと感じました」

──ベラル・モハメッド戦に向けて、対策練習は?

「ヘンリー・フーフトも映像を見てくれて、テイクダウン防御でも、方針を決めるとその練習をひたすら繰り返し反復してきました。体格の似ている選手がいて、そこで回してもらって。シャミル・ニカエフというチェチェン人の選手がいるのですが、ガンガンぶっ飛ばされてきました(笑)」

──もうフロリダにいるということが、世界中を回るのと同じですね。チェチェン人レスラーと練習できるなんて。

「ニカはライト級なのに普段は95キロぐらいあって、カマル・ウスマンやロビー・ローラーを投げますし、皆がリフトアップされています」

──UFC世界王者を投げる……。

「それでいて、まだ24歳ですからね……。練習としては、同じ体格の相手で回したり、最後の2週間はウスマンと結構組ませてもらいました。ウスマンも凄く気に掛けてくれて面倒見の良い人なんです」

──手応え十分ですか。

「う~ん、不安はないですけど……何とかやっています(笑)。打撃の強い選手、レスリングの強い選手、グラップリングの強い選手がいて、毎日のように悔しい想いをしています。そのなかでしがみついているような感じですが、練習時代は考えてやることができています。

最初は当たりが強くて大変でしたが、慣れというよりも対応できるようになっているので……そういう部分で手応えはあり、自信になっています」

──ところでヘッドコーチのフーフトが毎週のようにセコンドで遠征して、コーチングが滞ることはないのでしょうか。

「確かにヘンリーは毎週のように全米、海外に出かけていきます。でも、ほとんどの場合で月曜日にはジムで指導しているんです。木曜日の夜まで指導して、金と土はヘンリーがいなくても問題ないスケジューリングになっていて。本当にハードワーカーですよ」

──なるほどぉ。その辺りも一流の指導者なのですね。では、モハメッド戦ではこの環境にいる成果が発揮されることを期待しています。

「そうですね、互いに強い部分がハッキリとしているので強味を出せた方が勝つ。そういうシンプルな試合になると思います。殴られることを嫌がらないのですが、とにかくテイクダウンを切って殴ること。そして、切れずに倒されたあとの精度を上げてきました。

パンクラスで戦ったグライコ・フランサもそうですし、こっちに来て練習している皆が、攻撃を受けてからのリターンが早いです。怯むことがない。モハメッドもそうですが、ここを自分は日々経験できています。

甘くない相手ですが、試合で驚いたり、面食らうことはないと思っています。そのうえで体力、精神力の削り合いの我慢の勝負になるはずです。理想は一発で勝つことですが、そうはいかないでしょうし(笑)。でも、まだUFCでは2戦目で自分には失うモノはありません。そこも自分の強味なので、思い切り戦います」

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