【ONE73】ンサンとの世界戦から11日後の長谷川賢─01─「打たれ強さは予想外でした」
【写真】試合から11日を経て、インタビューをした。その時は顔の傷は、このような感じだった(C)MMAPLANET
6月29日、ミャンマーでオンラ・ンサンの持つONE世界ミドル級王座に挑み、5RにKO負けを喫した長谷川賢。しかし、その敗戦はアジアのMMA史に刻まれる激闘であった。
顔の腫れがまだ残るが、納まりつつあった長谷川に──あの一戦を振り返ってもらった。
──激闘から11日、まだその証が顔にも残っている長谷川選手です。
「もう試合後や飛行機を降りた後と比べると、腫れもマシになって元気です。アゴが少し痛いぐらいで、帰国後にCTを撮っても問題はなかったですし。ただ体が治ってきて、その分悔しさが沸々と……。
もっと上手く戦うことができたんじゃないかと。組めば良かったのは間違いないですが、パンチも当たっていた。最初は見えていてディフェンスできていたものが、疲れて殴られるようになった。そこで切り替えが出来ていなかったです」
──もともとはどのような作戦でオンラ・ンサンに挑んでいたのでしょうか。
「3Rからギアをあげて4Rと5Rを戦おうと思っていました。2Rにパンチが思った以上に当たり始めて、これは倒せるじゃないのかという手応えを感じるようになったのですが、ンサンの打たれ強さは予想外でした(苦笑)。
それとやはり組みを混ぜて、上を取ってスタミナを温存でいていればと……」
──ケージ上の暑さは?
「予想以上でした、そこも。でもンサンも同じ条件ですしね」
──ンサンは一旦動きが落ちたのに、また戻りました。あれがホームの声援が関係しているのであればアウェイの戦いとはそういうことなのでしょうね。
「そんなことあるのかなって思うぐらい、最終回に動きが戻っていました」
──4Rと5Rのインターバル、ンサンの応援ソングみたいな曲が場内に流れ、会場がまさに一体化していました。
「そういうことがあったんですね(苦笑)。気づいていなかったけど、まぁンサンのホームだったということですね。本当に打たれ強かったです。右フックと左ストレートは手応えもあった。押し切れると思ったんです。ただ今から振り返ると、当たっていても当てられていましたね。
ウェルター級から階級を戻すときにディフェンスを見直して、練習を積んできました。そこを見せようという思いが強すぎたのかもしれないです。僕の感覚では打たせて、紙一重でかわす。当たってもオデコで受けているし、以前よりはパンチをもらっても効かない──という言い方はおかしいのですが、見えているからガードをすり抜けてきたパンチも、それほど痛くない。当てられても相手を見ていられるようにはなっていました」
──組みとの連係が見られなかったのは、練習してきたことを出したくなるからでしょうか。
「ハイ(苦笑)。よく練習していることが、一番出やすいですですし。柔道もずっとやってきたのですが、咄嗟に出ない。それは試合前の練習でやってこなかったから。練習の時から、柔道技を入れていないと試合では使えないです。
それでもあの試合で、打撃がダメだったとは思っていないです。これまでより一つ上がったと思っています。だからこそ、そこにシングルレッグや柔道の大内、大外、払い腰が使えていれば、また違った試合になったかと思っています。柔道技も見つめなおして、練習からいれていく必要があると思います」
──特に柔道は、米国勢は理解が及んでいない部分が残っています。
「解説もすべてジュードースローですしね(笑)。持っていたモノを使えるように、武器はいつも磨いておかないといけないと思い知らされました」
──今回、ONEで戦ったのは初めてでしたが、ファイトウィークの雰囲気などいかがでしたか。
「自分は合っていると思います。以前、水野(竜也)先輩のセコンドでフィリピンに行った時よりも、スタッフが温かくなっているように感じました」
──伸びているところでスタッフも活気があります。
「僕は部屋にいなかったのですが、ホテルを僕より先に出るスタッフがわざわざ体を心配して、様子を見に来てくれって部屋に残っていた人に聞いて、すごく嬉しかったです。
ホテルのロビーにいても中国人選手や、スタッフから『凄い試合だった。ありがとう』とか言ってくれて……。それが嬉しかった──なんかアジア全体で盛り上げているんだなって」
<この項、続く>