【Shooto】宇野薫に完勝防衛、修斗世界フェザー級王者・斎藤裕─02─「あの攻撃は普通じゃないと……」
【写真】試合から2週間以上経ってなお、斎藤の左目の状態はこのようなモノ。試合中がどれほどだったのか、想像できよう (C)MMAPLANET
4月23日(日)、浦安市・舞浜アンフィシアター大会で修斗世界フェザー級王座防衛戦を宇野薫相手に戦い、防衛に成功したチャンピオン斎藤裕インタビュー第2弾。
連敗中、MMAPLANETを含めたメディアの煽り方、プレッシャーのなかで試合を迎えた斎藤は、序盤の攻勢も3Rのある局面から、予想しえなかった厳しい局面を迎えていた。
<斎藤裕インタビューPart.01はコチラから>
【「左目は三重、四重にしか見えなかった」】
──序盤はそういう斎藤裕の試合になりそうな展開ではありました。それが4R、5Rにもつれ込み宇野薫の諦めない姿勢が評価される試合となってしまいました。
「これは……どこまで言って良いのか……。3Rですかね……反則の蹴り上げがあって、グキッという音がしました。僕はもう折れたと思いましたし、眼球だったのでアレから左目は三重、四重にしか見えなくて。ずっと霞んでいるような感じでした」
──それは距離間がもう掴めないですね。
「ハイ。僕はオーソドックスなので、前の目だからもう距離は合わなくなりました。
明らかにヒザをマットに着いている状態でしたし、宇野さんもやっちゃったっていう顔をしていました。なのでレフェリーに訴えたのですが、試合はそのまま流されて。
宇野さんもきっと明らかに反則だって思ったので、あのまま背中をつけていたんじゃないでしょうか。でも、そのあとヒジとかでも目を狙ってきていたので、『えげつねぇなあ』って思いました(苦笑)。
えげつないけど……それも強さなんですかね。蹴り上げはアクシデントですが、あの後の攻撃は普通じゃないと感じましたね」
──今も左目は充血していますが、負傷の度合いはどうなったのですか。
「眼窩底はいっていなかったです」
──それは良かったです。試合中はえげつない宇野選手も、それを知るとホッとすると思います(笑)。
「ハイ。でも、もう宇野さんとマモルさんはえげつないですよ(笑)」
──そこでマモル選手が出てくるのは?
「試合が面白い、面白くないでなく、マモルMMAをやり通す姿勢ですね。あの首相撲、何人の人が分かるんだってことを躊躇せずやり通す。自分を貫いている、自分を信じている部分がえげつないです」
──斎藤選手も左目が見えなくなったことで、組んで勝負に行きました。
「そうですね、捕まえてからのヒザになりました」
──テイクダウンもタイクリンチを応用した崩し、テイクダウンを多用していました。
「そこもずっと練習してきたことです。ただ、宇野さんとの試合では目のこともあって余裕がないなか、無意識に出していた感じです。僕の感覚では、柔道の足技的な技ですね」
──なるほど。
「まぁ何を言っても後の祭りですが、目に問題がなければもっと色々とデキることはありました。ただ、あの試合ではアレが精一杯でした。
大切な試合でそうなってしまう。運が悪いでは済まされないのですが、逆にアレが鼻に当たっていたら、折れて血も止まらなくてTKO負けになっていたと思います。ただ、あそこまでの傷だったので見えなかったでは済ませてほしくない、そういう競技運営をして欲しいです」
──日本人選手は潔く戦い、ブレイクを要求するケースなども本当に少ないと思います。
「そうですね……僕自身、メインということもあって変な空気にしたくないという気持ちが働いたことは事実です。それも甘さかもしれないですね。宇野選手のえげつなさを考えると……」
【「逃げはアカン、やり切らないと」】
──確かに……。その宇野選手の最後の反撃の機会、5RにバックコントロールからのRNCを防ぎました。足をフックされる前に胸を合わせた。あそこは意地と馬力を感じました。「どうやってバックに回られたのか、分かっていないのですが、深く入っていました。逃げ方を間違えると、持っていかれたと思います。ただ、意外と落ち着いていたので前に崩れることなく、後ろにもたれてスペースを作る様にして、腕を入れることができました」
──そこで背中をずらして、チョークに拘った宇野選手はブルドックチョークのような形になってしまったと。
「あそこは宇野さんも一本を取るつもりで仕掛けていたはずです。最後のワンチャンスに賭けたような。でも、僕も体力的に全然大丈夫だったので、譲るわけにはいかなかったです。完封しないといけないと思って戦っていました」
──その譲らない試合と最後は逃げ切りましたという試合では、また見る方の感覚も変わっていたと思います。
「譲れなかったですね。正直、1Rから3Rまで取っていて……4R前のインターバル中にセコンドに『目が潰れた』って伝えたんです。普通はそういうことはまず言わないんですけど、そこまで強烈だったので。
なので4Rと5Rを落としても勝ち切れるという気持ちになりかけていたのですが、この試合を落とすと格闘技を続けることができるか分からなくなるので、『逃げはアカン。やり切らないと』という気持ちで、残りのラウンドにも臨むことができました」
──強い意志が働いたのですね。今回、目のこともありましたが完勝防衛です。その事実をどのように捉えていますか。
「そうですね、できることをやり切った。後から反省点は勿論あるのですが、連敗中でメディアの煽りもあるなかで苦しんだ時間に、自分を信じてやれたこと、そして勝てたことが最高の収穫でした。
宇野選手は誰から見ても、尊敬すべき選手でしかないです。そのような選手と縁があって、修斗のタイトルを賭けて戦うことができた。それは皆に巡って来る機会ではないです。そんな機会を得ることができた試合、意味のある戦いでした」
──そうなれば、斎藤選手の次が気になります。
「う~ん、次は何も決まっていないです。今後については修斗とも話し合っていく必要があります。修斗のチャンピオンとして初防衛を果たしました。なので、プロとしてこれからを考えていきたいです」
<この項、続く>