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【Interview】川尻&水垣対談<03>「基本はネガティブ」(水垣)

Kawajiri & Mizugaki

【写真】川尻達也&水垣偉弥のUFCランカーの合体シーンが渋谷で実現 (C)MMAPLANET

川尻達也&水垣偉弥対談第3弾。互いのスタイルから、フィジカル練習における数値について話が進み、タイトル戦線へ。活きの良い言葉が聞かれるかと思いきや――。

両者のトークはなぜか、ネガティブな心情の吐露をし合う展開に……。

<川尻達也&水垣偉弥生対談 Part.01はコチラから>

<川尻達也&水垣偉弥生対談 Part.02 はコチラから>

川尻 外国人選手と戦うと、ちょっとでも弱気を見せると呑みこまれるんで、絶対に引いちゃダメですよ。バカみたいに突っ込んでくるので打撃は絶対に引いちゃダメ。

──水垣選手は12月のナム・ファン戦では、行けると踏んで倒しに掛かりスタミナを切らしてしまいました。

水垣 あれは本当にショックでした。僕も打撃の展開で3R戦うならバテない自信はあったんです。それでラッシュした後に構えた瞬間に、何か違和感があって。『ヤバいな、これ』って。ワキ汗が出ました(笑)。一度ペースを落とそうと思ったんですけど、そこからはペースを落としても、もうドンドン消耗しちゃいましたね。

──試合を見ながら、ペース配分をしているんだって思いこむようにしていたのですが、3Rに入ると『あぁ、これはガスアウトだ』って(笑)。

水垣 バテちゃいましたね。だから、川尻さんは凄いなって。

川尻 実際は疲れているんですけど、信じるだけです。『大丈夫だ。俺はいけるんだ。3Rもつんだ』って攻めるしかない。実際、あのままいって3Rもつかは分からないんですけど、信じるしかない。

──山田武士トレーナーとの心拍トレーニングでは、数値を出していますが、水垣選手の大宮司岳トレーナーとのフィジカル・トレでも同じですか。数字が出てしまうと、嘘がつけないですよね。

水垣 出しています。練習していると、数字は気になりますね。

川尻 僕は陸上出身なので数字、タイムで成長が見える。陸上にハマったのは、そこなんです。努力すれば、成長できるって知って。少年野球をやっていた頃は、努力することを知らなくて、努力をしたことがなかった。そうしたら努力している人間に抜かされていきました。格闘技は数字と直結していないと言われるし、僕も思うけど、フィジカルで数字がでるのは楽しいです。

水垣 楽しいですよね。数字が上がる、タイムが良くなると。メッチャ楽しい。

川尻 テンションが上がり、それがモチベーションになります。格闘技の練習って誤魔化せるんですよね。体調が悪いとか、コンディションが悪いとか。ちょっと経験とか技術で誤魔化せたりできるんですけど、陸上ってフィジカルそのもので体調が悪いと、タイムに出る。だから常に万全で、良いコンディションでいないと成長しないもんなんですよ。

格闘技は体調が悪くても、誤魔化しながらでもスパーとかでも行けちゃうんですけど、そういう意味でも成長が数字で見られることは最高だと思います。

──川尻選手はスパーリングの時も、もうひと頑張りができる方なのですか。

川尻 僕はもう……、いつもはスパーリングも8Rとか長くやるんですけど、今回は5Rに絞って、その代わり全てを出し切るようにしていました。やっぱり8Rとかやると、ペースを考えて抜くところが出てくるじゃん?

水垣 そうですね。

川尻 このあと何R残っているかと考えてしまうので、5Rに全てを出すようにしていました。だから、倒され立つ、押し込まれて体を入れ替えるというところで、1秒でも動きを止めないように意識していました。

──スプロールなのか、亀になっているのか誤魔化しに入る選手なら知っています(笑)。

水垣 いやいやいや(苦笑)。あの時はアライアンスMMAでの練習で、それからどんな練習をするか分からなかったからですよ。

──国内の練習でも、そんなシーンを見たことありますが(笑)。

水垣 あれはウォーミングアップなので……(苦笑)。

──そんな手抜きの天才、そしてUFCでは活動が長い水垣選手から見て、川尻選手の戦い方で修正すべき点はありましたか。

水垣 こないだの試合に関しては、最初ですよね。普通に足とか触ることができれば、もっと楽に戦えたのにっていうことだけです。

──個人的にはADCC国内予選に出ていた頃(2003年)から川尻選手の寝技は本当に強いというイメージを持っています。それもトップだけでなくて、下の動きも。

川尻 メチャクチャ昔じゃないですか(笑)。もともと、下からの三角は得意なんですよ。僕は佐藤ルミナ選手に憧れて格闘技を始めたので、最初はテイクダウンもしないし、パスもしない。スパーリングで足関節しか狙わなくて。

水垣 アハハハ。

川尻 途中から『このスタイルはあの人が天才だから出来るんだ。俺が真似しても強くなれない』って気付いて、(桜井)マッハ(速人)さんにみたいにならないとダメだって思うようになった。

水垣 僕はガードワークはめっきりですね……(笑)。むしろパスさせた方が立ちやすいんじゃないかってぐらいに思っています。

川尻 あぁ、それもあるよね。わざとバックを取らせて立ち上がったりします。悪いポジションで下になっているより、取らせてしまってすぐに立ち上がる方がディフェンスできます。だから、結構バックを取らせているんだけど、強くて逃げさせてくれない人もいるんだよね。

水垣 そうですね。

川尻 山田崇太郎とか。バック取られたら何もできない。極められて終り。

水垣 バックを取らせて逃げるのは、僕も好きです。ただ、僕は金原(正徳)さんに取られて終わってしまいます。最近は、本当に皆立たせてくれなくないので、どうしようかなって。

──2014年中にタイトル戦線に割って入る目標を持っているには、弱気な発言じゃないですか。

水垣 そうですね。王座挑戦権は今年中に……。

川尻 僕はタナボタでも何でも良いので、チャンスを貰えれば……って思っています。でも、水垣君は7位だよね。あと上に6人とチャンピオンしかいない。あの世界一の舞台で。凄いよ。

水垣 ありがとうございます。でも、ここからが……。

川尻 そう、引くわぁ。ランキングの上を見ると。

水垣 引きますよね……。

川尻 マジかよって。あれ見ると。

──川尻選手は強気と弱気の差が激しく、また目まぐるしく感情が入れ替わりますね(笑)。

川尻 僕、超ネガティブですから。テンション下がりまくりますよ。冷静になるとね。でも、そんなことファンに言えないじゃないですかって、今言っちゃっているだけど(笑)。

水垣 僕も基本的にネガティブです。

川尻 俺なんて、死ねばいいって思っています。生きていちゃいけない人間なんだって。

水垣 僕はそこまでじゃないですね(笑)。

──そのネガティブな想いをエネルギーにして、オクタゴンに入るのですか。

川尻 いえいえ、ずっとネガティブのままです。オクタゴンに入っても、今回は全く変わらなかったです。あぁ、強そうだ。やだって思っていました。

水垣 アッ、僕はなるべく考えないようにしているんですけど、オクタゴンに入って相手と向き合うじゃないですか――、そうすると凄く相手の方が分厚く見えたりしないですか。

川尻 そう、強く見える……。

<この項、続く>

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