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【UFN275】朝倉海戦から9カ月、ティム・エリオット「テイクダウンが絶対でなく、思うがままに戦いたい」

【写真】人間味が溢れているティム・エリオット。本当に日本で試合が見てみたいファイターだ(C)MMAPLANET

5月2日(土・現地時間)、豪州はパースのRACアリーナでUFN275 「Della Maddalena vs Prates」が開催され、ティム・エリオットがスティーブ・アーセグと戦う。
Text by Manabu Takashima

昨年8月に朝倉海をギロチンチョークで下したエリオットが、9カ月振りに実戦の場に戻ってくる。長期療養の理由と、直結する朝倉海への高評価。39歳を迎えたエリオットのMMA観とこれからについて尋ねると、本当にいつも通り丁寧が返答が続いた。


カイ・アサクラに一発蹴られ、一発殴られると『コイツは本物だ』って

――ティム、今週末パースでスティーブ・アーセグと対戦します。今の調子はいかがですか。

「良い感じだよ。ただ、飛行機での移動が思っていた以上に長かった。これまでニュージーランドで試合をしたことがあったけど、あの時より全然長くて。カンザスシティからLAに行き、シドニーへ。トランジットの時間も含めると、それだけでもう1日近く経っていて。シドニーに着いて、国内線でパースまで移動するのに、また空港で乗り継ぐ時間を合わせると6時間ぐらい掛かった。これだけ時間が掛かるとはね……」

――米国から豪州、日本人からするとブラジルへ行くようなモノですね。季節も違いますし、なにより国内と豪州内の移動がそれだけ掛かるのは厳しいですね。

「少し前に現地入りしたいとか思っていたけど、2日前にパースに入って、今言えるのは『長いフライトは、僕にはそれほど関係ないな』ってことかな(笑)。ここまでやってきて、またハイレベルな対戦相手と戦えることが本当に嬉しいよ。こうやって長い移動をするのも、MMAを戦う一部だしね。

それにここパースは凄く良い街で。それほど食べることができるわけじゃないけど、美味しいモノも揃っているみたいだ」

――ファイトウィークの過ごし方は、UFCだと米国内でも国外でも大きな違いはないのでしょうか。

「そうだね。それでも米国で戦いたいと思うのは、時差の調整が必要ないからだよ。フライトはスムーズでも、ベッドで1日眠れない事実はある。こっちに入ってからも、眠りに落ちたと思ったら4時間後には目が覚めてしまった。夜に眠れなくて、Xばっかり眺めていて……これは、良くないよね(苦笑)。計量後は、いつもようにゆっくりと眠れることを願っている。

ただしUFCで戦っていないと、ここを訪れることもなかった。そういう意味でも、素晴らしい機会を得ることができているわけだし、何よりもスティーブ・アーセグという良い相手との戦うわけだから、オクタゴンにジャンプインするしかないよ(笑)。今回の試合では、打撃をもっと見せたいと思っている」

――スクランブル・グラップラーのティムが、打撃で勝負したいと?

「実際、カイ・アサクラ戦が決まる前から重点的に打撃の練習をしていたんだ。でも、あのデンジャラスな相手にストライキング・ゲームをすることはできなかった。本当は、多少危ない展開になっても、自分の打撃を試したかったんだけどね。

でもカイ・アサクラに一発蹴られ、一発殴られると『コイツは本物だ』って。で、彼が空振りをした時にテイクダウンに行くべきだって思い直した。スティーブとの試合では、あの時に見せることができなかった打撃を使いたいと思っている」

――朝倉選手との試合は日本のファンに大きなインパクトと、ショックを与えました。ただ、あの快勝から9カ月も試合間隔が空いてしまったのは、どういった理由からだったのでしょうか。

「アサクラのたった一発のカーフキックで、左足の腓骨を骨折してしまったんだ。ただ試合中も試合後も問題なく、歩いて食事もしていた。その後、ポッドキャストに出演するためにLAに向かう時から、物凄く痛くなってきて。筋肉剥離でもしたのかと思っていると、歩くこともできなくなった。車椅子で移動することになり、UFC PIの担当者に電話をして症状を伝えたんだよ。そうしたら『今すぐ、病院に行くべきだ』と言われて。

そして腓骨が折れていることが分かった。人生であんな痛みを感じたことはないよ。それからほぼ4カ月、ジムでのトレーニングはできなかった。凄く時間が掛かったけど、今となってはポジティブに捉えている」

――というのは?

「体を休めることができたからね。そしてトレーニングの仕方も、考え直すことができた。今回のキャンプではストレングス・コンディショニング・トレや、ランニング、ウェイトは一切しなかった。ハードなドリルを多くして、スパーリングを増やしたんだ。これまでは、キャンプ中にどこか体を痛めていたのが、今回のキャンプは本当にヘルシーに終えられた。こんなに体の調子が良い状態で戦うことができるのは、僕にとっては新鮮なことなんだ。週末のファイトでは、好きなように動くことができるだろう」

――朝倉選手は連敗を喫したことで、バンタム級に階級変更を決めました。

「カイ・アサクラがこの階級からいなくなってくれたことは、ありがたいよ。凄く大きなファイターだから。あの試合の後、彼は期待が大きかった分、凄く批判されたと思う。それがMMAファンなんだよ。本当にムカつく。NBAやNFLのファンのようにチャンピオンシップにひいきのチームが進めなくても、ずっと応援してくれるということはMMAではない。

ファイトゲームは1年間、階級を支配し続けたことがあっても2、3度負けると皆が非難し始める。カイ・アサクラは普通の選手とは違うキャリアの積み方をUFCでしようとして、上手くいかなかった。でも、彼のような強い打撃を僕はUFCでも受けたことはなかったよ。キック力もUFCの誰よりも強い。なんせ、骨を折られたぐらいだからね。

ハイキックでKOされる可能性もあった。彼はUFCで戦う力を十分に持っている。でもMMAっていうスポーツは、予期できないことが多く起きる。ボクシングとは違うんだよ。優れていると予想されている選手が、その力を発揮して勝つ確率がMMAは下がる。その日の調子が、それまで培ってきたモノより大きく勝敗に関係する。それはボクシングと違うところだ。

カイ・アサクラはこれからもUFCで戦い続ける力の持ち主だし、僕は彼がバンタム級で成功を収めることを願っている」

――私が言うことではないかもしれないですが、本当に有難い言葉です。ところで前回はベガスで日本でスーパースターと戦い、今回はホームタウン・ヒーローとの対戦になりますね。

「最高だよ。アンダードッグで戦うと、頑張ることができるんだ。自分の方が勝つと予想されると、より強いプレッシャーを受けてしまう。皆が勝てないと思っていると、肩に乗っているプレッシャーは本当に軽くなる。

そして対戦相手のホームタウンで、ブーイングや野次のなかで戦うことを楽しみたい。そういう空気のなかで、戦うとワクワクしてくる。だからAPEXでの試合が嫌だった。僕は人生を賭けて戦ってきたのに、ファンの数を数えることができるような少ない観客の前で戦うより、50万人にブーイングされた方が面白い。そういうファンの前で土曜日は最高の状態でオクタゴンに入り、最高の試合をしたいと思っている」

UFCで初めてKO勝ちしたいと考えている。僕には、その力があると思っている

――ではアーセグの印象を教えてください。

「本当の意味で、ウェルラウンディット・ファイターだ。何度も試合を見直して、心底そう思う。タイトル挑戦経験もある強豪で、ホームタウンだから最高の試合をしようと思っているだろう。ただし、恐れる部分は少ない。カイ・アサクラの方が『KOされるかも』と考えると、ずっと危険なファイターだった。

スティーブにそのパワーはない。だから、僕だけでなく彼にとっても、この試合は自分の長所で勝負できる試合になるはずだ。

同時にさっきも言ったように、今回は打撃戦を見せたいと思っている。ジムでのドリル、スパーリングを多くしたと言ったけど、打撃でもミット打ちよりスパーをやってきた。色々なジムを訪れて、週に3日スパーリング中心の練習をしてきたんだ。

アサクラ戦の前は、レスリングに重点を置いた練習をした。テイクダウンすることが肝になると思っていたから。でも、スティーブとの試合はテイクダウンが絶対という試合ではなく、思うがままに戦いたい」

――それが打撃だと?

「そうだね。僕がどれだけ打撃を使えるのか、UFCで初めてKO勝ちしたいと考えている。僕には、その力があると思っているから」

――押忍。ところでフライ級は若い世代の台頭が目立っています。39歳になった今、ティムは今後どのような青写真を描いてMMAを戦っているのでしょうか。

「実は今回の試合が、契約最後の試合なんだ。ずっと戦い続けてきて、チャンピオンになって大金を手にしたいと思ってきた。でも、もう僕に残された時間は少ない。今、言われたように若い世代が育ち、チャンピオンもタイトル戦線も変わった。だからこそ、僕にとってもチャンスになる。不安定になったタイトル戦線こそ、僕にタイトルを狙うチャンスが広がる。今、僕がやるべきことは今回の試合で勝って、契約を更新すること。そして、少しでも早く王座挑戦権を争うような相手と試合をしたいと思っている」

――ティム、今日もありがとうございました。では日本のファンに最後に一言お願いします。

「僕は日本を愛している。日本という国に行きたくてたまらない。いつか日本に行く。それは僕のやりたいことリストの一つに入っている。UFCが日本でショーを開くかどうか知らないけど、イベントがなくても妻や子供と日本を訪れ、色々な所を見て回りたい」

――個人的に仮にUFCがティムとリサインしないなら、もの凄く日本で見てみたい試合があります。

「アハハハ。何を言いたいか分かるよ。正直、UFCが年を重ねた僕と契約をするのかは何とも言えない。仮に契約がならなくても、まだ僕はファイトを辞めるつもりはない。その時は日本で戦えるよう動く、絶対に。約束するよ」


■視聴方法(予定)
5月2日(土・日本時間)
午後5時00分~UFC FIGHT PASS
午後4時45分~U-NEXT

■UFN275対戦カード

<ウェルター級/5分5R>
ジャック・デラ・マダレナ(豪州)
カルロス・プラチス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
べニール・ダリューシュ(米国)
クイラン・サルキルド(豪州)

<フライ級/5分3R>
ティム・エリオット(米国)
スティーブ・アーセグ(豪州)

<フェザー級/5分3R>
マーワン・ラヒキ(豪州)
オーリー・シュミット(ニュージーランド)

<ヘビー級/5分3R>
シャミル・ガジエフ(バーレーン)
ブランド・ペリチッチ(豪州)

<ヘビー級/5分3R>
タイ・ツイバサ(豪州)
ルイ・サザーランド(英国)

<ミドル級/5分3R>
キャム・ロウストン(豪州)
ロベルト・ブリチェク(ポーランド)

<ライトヘビー級/5分3R>
ジュニオール・タファ(豪州)
ケヴィン・クリスチアン(ブラジル)

<ミドル級/5分3R>
ジェイコブ・マルクーン(豪州)
ジェラルド・マーシャート(米国)

<バンタム級/5分3R>
コルビー・シックネス(豪州)
ヴィンス・モラレス(米国)

<ミドル級/5分3R>
ウェズ・シュルツ(米国)
ベン・ジョンストン(豪州)

<ウェルター級/5分3R>
ジョナサン・ミカレフ(豪州)
テンバ・ゴリンボ(ジンバブエ)

<ライト級/5分3R>
コディ・スティール(米国)
ドン・マーファン(豪州)

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