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【Pancrase361】杉山しずかとフライ級QOP決定戦、和田綾音「皆と一緒に戦っている。孤独じゃない」

【写真】初インタビューで緊張しながらも、芯の強さがうかがえる和田(C)SHOJIRO KAMEIKE

14日(土)、横浜市中区の横浜武道館で開催されるPancrase361で、和田綾音杉山しずかと空位の女子フライ級王座を争う。
Text by Shojiro Kameike

昨年3月に杉山をKOして女子フライ級QOPとなった渡邉史佳のベルト返上を受け、同級1位で前王者の杉山と、同級2位の和田が王座決定戦を行うこととなった。和田にとっては2024年7月のプロデビューから3戦目で到達したタイトルマッチ。このチャンス到来に本人は「驚きましたけど、やるしかない」と語る。格闘技経験はなく、体を動かすために入会したALIVEで、現在は女子クラスも受け持つ和田—。周囲から「根性ファイター」と呼ばれる彼女のキャリアに迫る初インタビューは、ジムメイトへの信頼感にあふれていた。


毎日あらゆるクラスに参加し放題で、月会費がこれぐらいならアリだな

――杉山選手との王座決定戦を控えている和田選手です。ALIVEに入るまで、格闘技経験は全くなかったそうですね。

「はい(笑)。大学を卒業したあと、ALIVEに入会しました。大学に入るまでは3歳から水泳をやっていて、大学では合気道部に入りました。ただ合気道は護身術ですし、MMAとは全く別ものなので、ゼロからのスタートだと思っています」

――水泳の種目は何だったのでしょうか。

「自由形で長距離ですね。おかげでALIVEに入った頃から体力はあるほうだと思います」

――なぜ幼少期から水泳をやっていたのに、大学で合気道部に?

「小学校の頃は全国規模の大会に出たりしていました。でも中高では東海大会までしか行けずに終わって。水泳で大学の推薦も貰っていたけど『この後の人生はどうしようかなぁ。このまま水泳を続けていくかどうか……』と考えていたんですよ。そんななか、もともと日本語を教える先生になりたかったこともあって、外国語大学の日本語学科に進学しました。そこに水泳部はなかったので、『水泳はここが一つの区切りなのかな』って思いました。

合気道部に入ったのは――大学で部活のパンフレットを見たら、何か楽しそうだなと思って(笑)。良い先輩や友達がいたおかげで、大学の4年間は続けることができて黒帯も頂きました」

――ということは、基本的にスポーツ少女ではあったのですね。

「体を動かすのは好きです。ALIVEに入ったのも最初はエクササイズ感覚でした。ホームページを見たら、毎日クラスがあって参加し放題と書かれていたんですよ。他のスポーツジムだと週2回とか制限があったりしますけど『毎日あらゆるクラスに参加し放題で、月会費がこれぐらいならアリだな』というぐらいの気持ちで入会しました。入会したら。先に入っていた人たちが、すごく優しくしてくれて。それが8年ぐらい前、2018年ごろです」

――2018年ごろというのは、まだ竹本啓哉選手がヒゲを伸ばしたり、モヒカン刈りにする前ですか。

「アハハハ! 竹本さんはメッチャ優しい人ですよ。『やる気があるなら何でも質問して良いよ』という感じで」

――分かっています(笑)。そこからMMAの試合に出るまでは長かったのですね。

「柔術の試合のほうが先でした。柔術は結構試合に出ていましたね。でもMMAのクラスにも出ていたんですよ。そうしたらある日、MMAをやりたいという女性がALIVEに入会してきて。その人もゼロから格闘技を始めて試合に出たいと聞き、『あぁ良いなぁ、私もやってみようかな』と思いました(笑)。それで……コロナ禍の前ですかね。鈴木社長に『私もMMAの試合に出て見たいです』と相談して。社長は相手がやりたいということに対してNoは言わない方なので、それがキッカケで私もMMAをやることになりました」

MMAはケージの中でも声が聞こえる。一緒に戦っている感があります

――以降はALIVEの選手練に参加するようになったのでしょうか。

「その時は、選手練には出ていないです。これは難しいところで――ALIVEは男性が大きい方が多いじゃないですか。それこそ体格が大きい人ばかりで、全体練習に参加しても怪我をすることになるし。

幸運なことに、修斗で新人王を獲ったことのある赤木康洋さんが、付きっ切りで面倒を見てくれました。重久正コーチも個別でトレーニングを見てくれたり、他の先輩方も優しくて、自分の試合が近くても『一緒に練習しよう』と気に懸けてくれました。

アマチュアMMAの試合に出るようになったのは、2020年か2021年ごろだったと思います。MMAはやることがたくさんあるので、楽しいですね。打撃だけじゃなく寝技もあるし、寝技も打撃前提のテクニックを覚えないといけないですし」

――当時からプロのファイターになろうと思って、アマチュアの試合に出ていたのですか。

「MMAはアマチュアだけと考えていて、プロになる気は全然なかったです。でもプロ昇格が懸かった全日本大会で勝つことができて、『プロでもっと試合がしてみたいなぁ』と思ったんですよね。

アマチュアは試合数も少ないし、相手の情報がないことも多いじゃないですか。だから試合に向けてオールマイティに対応しないといけないというか。プロだと相手の試合動画を視て、分析して『こういうトレーニングが良いんじゃないか』という話し合いが濃くなりますよね」

――ずっと水泳部に所属していて、大学でも合気道部に所属していた和田選手です。スポーツとしては、分析とトレーニングが普通だと感じるのではないですか。

「そうですね。小さい頃から水泳で遠征とかもしてしましたし。違うとすれば、水泳って水中だから水の音しか聞こえないけど、MMAはケージの中でも声が聞こえますよね。『○○さん、応援してくれているなぁ』って思うと、一緒に戦っている感があります。私は孤独じゃない。セコンドの声も聞こえますし」

――たまに悪い声が聞こえたりとか。

「そういう声も聞こえてきて、自分は『確かに!』とか思ったりします(笑)」

――それだけケージの中では冷静で戦うことができているのですね。

「冷静で戦うように心がけています。経験が少ないからセコンドの声もよく聞きたいし、冷静でいないと危ないということは分かっているので」

――試合スタイルとしては、やはり柔術がベースになるのですか。まずテイクダウンからバックテイク、そしてRNCや腕十字を狙う。そんななか、元ボクシング世界王者ライカ選手のパウンドが飛んできたりと。

「このポジションになったら殴られる、というのはレッスンで学んでいます。実際にパンチが来たら『うわっ、来た!!』とか思いましたけど」

――なんだか楽しそうですね。

「ぁ~、そうですね。レッスンで学んだことを試合で出して、冷静に対処する。そういうのは楽しいです。やっぱり女子選手が少ないから、練習で女子と組むことはなかなかできないんですよね。試合をしながら『女子選手って、こんな感じなんだな』と思っています。そんな状態なので、プロで2戦して勝つことはできましたけど、『もっとこうできたよなぁ』と判定する点も多いです」

――今もMMAと並行して柔術の試合には出ているのですか。

「MMAの試合に出ている間は、柔術の試合には出ないようにしようと思っています。MMAの合間の週2~3ちょっと練習する程度で試合に出るのもなぁ……と思いながら。あとルールも間違えそうで。殴っちゃうんじゃないかな、と」

――それは間違えないでしょう(笑)。

「それだけ身に沁みついているものが出ちゃいそうなんですよ。試合をする限りは、しっかりとルールに沿って練習したいので、今はそれだけMMAに集中しています。

ただ、女性も多く参加されているので、柔術のレッスンには出ています。前回の試合前もお願いして、組んでもらいました。ボコボコにされて『強いっ!!』と思いながら(苦笑)」

ジムの会員さんに『綾音ちゃんは根性ファイターだからねっ!』と言われて『はい、そうです!』と答えました(笑)

――そして今回、プロ3戦目でタイトルマッチに辿り着きました。

「驚きました。もう1試合ぐらい誰かと対戦して――と考えていたので。正直、アマチュアも含めて試合経験は少ないです。それでも皆さんがやりたがっているタイトルマッチに出る権利を頂けたことは、ラッキーといえばラッキーで、だけど練習環境の面では、いろんな人がサポートしてくれています。プラス春日井(健士)さんのところで女子練も始めました」

――えっ、寒天練に女子部門があるのですか。

「そうなんです。今年の1月から鈴木さん(鈴木”QP”まい)というMMAファイターと練習させてもらっています。そうして練習環境が整ってきたなかで、今回のチャンスを頂くことができました。だから『やるしかない!』という気持ちですね。

女子寒天練の練習仲間、鈴木QPまいは3月8日のDEEP大阪大会で栗山葵と対戦する(C)AYANE WADA

でも――やるしかないっていう気持ちの反面、不安もあります。だから、とにかく練習するしかなくて。先日、ジムの会員さんに『綾音ちゃんは根性ファイターだからねっ!』と言われて『はい、そうです!』と答えました(笑)。

最後まで諦めない。合中に集中力が切れたり、ダメかもと思うと不利になったり負けてしまう試合も見てきました。練習でも『これはダメだ』と思ったら、途端にガードが甘くなったりとか。そういうのも経験しているので、テクニックも大事ですし、気持ちの面も重要だと思っています」

――なるほど。空位の王座を争う杉山選手の印象を教えてください。

「MMAは経験がモノを言う部分もあるので、強敵です。重田選手との試合は本当にフィニッシュが衝撃で……。相手の頭が下がっているチャンスを逃さず、ニンジャチョークを極める。やっぱり技術はもちろん、経験の差は大きいなと思いました。そこで一本取れる強さには気をつけたいですね。そういう相手に自分がどれだけ通用するのかが分かる試合です。嬉しい反面『なぜ受けちゃったんだろう?』と思う瞬間もありますけど(苦笑)」

――でも、やるしかない。

「はい。格闘技を続けていくかぎり、永遠にその繰り返しなんだろうなって思います。

どの試合でも、どんな結果になっても、私を責めるような人はいない。できることをやれば、皆が温かく迎えてくれる。このジムにいて、それは分かっているので。だから立ち向かうことができるんです」

■視聴方法(予定)
3月14日(土)
午後2時~ U-NEXT

■対戦カード

<ライト級KOPC/5分5R>
[王者] 雑賀ヤン坊達也(日本)
[挑戦者] ラファエル・バルボーザ(ブラジル)

<ストロー級KOP決定戦/5分5R>
船田電池(日本)
宮澤雄大(日本)

<フライ級QOP決定戦/5分5R>
杉山しずか(日本)
和田綾音(日本)

<フライ級/5分3R>
伊藤盛一郎(日本)
ジョセフ・カマチョ(グアム)

<フェザー級/5分3R>
透暉鷹(日本)
カルロス・カヴァウカンチ(ブラジル)

<ウェルター級/5分3R>
内藤由良(日本)
ガブリエル・レーベン(フランス)

<フェザー級/5分3R>
木下尚祐(日本)
シン・ジェヨン(韓国)

<バンタム級/5分3R>
髙城光弘(日本)
山口怜臣(日本)

<ストロー級/5分3R>
リトル(日本)
佐々木瞬真(日本)

<ミドル級/5分3R>
平田旭(日本)
林源平(日本)

<フライ級/5分3R>
大塚智貴(日本)
猿飛流(日本)

<フライ級/5分3R>
岸田宙大(日本)
眞藤源太(日本)

<フェザー級/5分3R>
岡田拓真(日本)
清水博人(日本)

<バンタム級/5分3R>
山木麻弥(日本)
荒田大輝(日本)

<ライト級/5分3R>
神谷大智(日本)
葛西和希(日本)

<フライ級/5分3R>12-0
菅歩夢(日本)
谷村泰嘉(日本)

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