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【Pancrase362】宮城成歩滝とバンタム級暫定王座戦、山口怜臣「一緒に創ってきているという想い」

【写真】自身の世界観と貴重なエピソードが爆発のインタビュー(C)SHOJIRO KAMEIKE

31日(日)に東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase362で、山口怜臣宮城成歩滝とバンタム級暫定王座を争う。
Text by Shojiro Kameike

昨年9月に松井斗輝を判定で下して以来の試合となる山口。2026年に入り、当初は3月14日の横浜武道館大会で髙城光弘と対戦する予定であったが、直前に髙城の負傷により試合が中止に。今大会で宮城との暫定王座決定戦に臨むこととなった。

MMAPLANETでは今年末、愛知県名古屋市の寒天ファイトスピリットジムで髙城戦が発表されていた山口のインタビューを行っていた。しかし取材後、試合中止となったために掲載を見送っている。改めて今回、宮城との対戦について取材すると、パンクラス福井幸和代表とのエピソードが明らかになった。ここでは1月末のインタビューと、宮城戦に向けた内容を続けて掲載したい。


骨格的な部分でアスリートとして体を整える。全身が連動する動き方を見直してきました

――9月の松井斗輝戦は、徹底的に組み伏せて判定勝ちを収めました。まずは松井戦の感想をお願いします。

「終わった時には『俺、すごい試合やったな』と思ったんですよ。解説の人とかも、そう言っていて。でも今振り返ると、稚拙な内容だったというか。本当に気合いと根性だけで、技術というものはなかったなと思っています」

――技術がなかった、というのは?

「相手の弱いところに全力を投下しただけで、それは本当の強さじゃないかなって思うんです。たとえば打撃も勝負しない距離感でステップ踏んで、勝負する距離になったら、とにかく足を掴みに行く。押し込んで殴って離れる。そしてまた入る、というのを繰り返していただけで。あれは技術というよりも、フィジカルと根性みたいな世界観でした。

もちろん日本人選手であれができる人は少ないです。ただ、良かったからといって、ずっとやっていくかどうかと言えば、それは僕の求める格闘技ではない。僕もあれから練習してきて、今はあの試合が稚拙だったなと思えるぐらいにはレベルアップしていますね」

――自身の試合を、それだけキッパリと「稚拙だった」と言い切ることができる選手も、多くはないと思います。

「あぁ~……、国内で『押し切れば勝てる』みたいなノリの試合であれば、あの内容でも良いんですよ。でも僕が目指しているのはUFCのベルトであって――まだまだそんなことを言えるレベルではないけど、今はUFCで戦う準備をしている段階です。そのUFCの基準で考えると、前回の試合内容では通用しないですからね」

――UFC出場という目標を掲げる選手は多いです。ただ重要なのは、その目標に辿り着くための行程を考えているか。その行程と今の自分を比較し、すり合わせし続けているかどうか。

「それこそ年末はプーケットのタイガームエタイに行っていて。そこにダニエル・コーミエがチームを率いて来ていたんですよ。一緒に来ていた選手とガチで殴り合ったりしてきました。僕がタイガームエタイに行くのは自分の視座を高めたりとか、ONEの選手と会ったりとかするためで、今言われた比較というものはできましたね」

――UFCで勝てるようになるという目標に対し、今の自分はどれぐらいの距離にいると思いますか。

「……今の自分は、UFCで戦っているところは想像がつくんですよ。まだランキングに入ったりとかチャンピオンになるところまでは想像できていないし、これから見えてくるところなのかなって思います」

――では次の試合に向けて一番修正してきたのは、どのような部分ですか。

「打撃とか組みとか個々の技術というよりも、体の使い方を――骨格的な部分でアスリートとして体を整える。全身が連動する動き方を見直してきました。それと心の在り方や、普段の食事などもそうですね。以前から気をつけていたものではありますけど、自分の中ではもう一段引き上がりました」

メジャースポーツならお前はプロになれていないから

――理想としては、ここでベルトに挑戦させてほしかったでしょうか。

「そうでもないですね。いずれやるべき時は来るし、時間が過ぎれば過ぎるほど僕は強くなっていく一方なので。年齢的な面も含めて本当に焦りはないです。なんだか――今はDWCSか、RTUか、どこのマネージメントだったらUFCと契約しやすいか……って議論されることが多いじゃないですか。僕、それを見て『弱いな』って思うんですよ」

――弱い?

「目の前のやるべきことをやって、強けりゃ契約してくれるよって話です。先日、UFCのファイトボーナスが倍になると発表されたじゃないですか。絶対そういう選手が欲しいと思うし、僕も今そのスタイルにアジャストしていっています。今までは全局面で圧倒して、とにかく実力で勝つ。でもそのスタイルを求められていないなら、言い訳せずそのレベルでやらないといけない。だから、まだタイトルマッチまでの時間をかけてくれるなら、自分はまたタイへ修行しに行ってもいいし、強くなるだけだよって感じですね。

自分も5連勝していて自我というか、『もっと示したい』と思うようになりました。判定で圧倒的に勝つのもいいけど、ヤバいKOを見せることができたらいいな、と。もっと言うと、解説とかで『ここでもう一つ、倒してほしいな』とか言っている人に分からせたい。

というのも、日本国内で起こっているKOって、一発勝負みたいなのが多くて嫌なんです。自分は土台から積み上げてきて全部できるから、いろんな振り幅がある。僕はイリャ・トプリアみたいな選手になりたいと思っていて」

――目標をどこに置くかは選手それぞれです。しかしUFCを目指すのであれば、UFCで求められるものを基準として戦っていくも当然であって。

「ちょっと角が立つ言い方になるかもしれないけど、世界的に見れば、パンクラスですらローカル団体なわけじゃないですか。でもそれ以上にローカルなところで戦績を積んでRTUだ、RIZINだみたいな話って、何か違うと思うんですよ。そもそも同じ土俵に立っていないというか。たとえば5分2Rでしか戦っていない選手とか、5分3Rで戦績を積んでからでないと……3Rでやった時にスタミナはもつのか、無駄に力が入っていない体の使い方ができているのか。それこそ体が出来ていないと生き残れないのがプロの世界であり、UFCのように連敗したらリリースされるとか、そういうふうにしないと競技レベルも上がっていかない。本当の意味でのメジャースポーツにならない。

それほど戦績も残していないのに『もっと格闘技がメジャースポーツになれば、俺たちも稼げるのにな』とか言う人いるじゃないですか。『いや、メジャースポーツならお前はプロになれていないから』って(笑)。プロ野球選手になるのは、どれだけ倍率が高いと思っているのか」

――それは、確かにそうですね。

「ヌルマゴとかもローカルで16連勝して、UFCに行ってようやく稼げるようになった。そういう世界なんですよ。そんななかで日本はローカルで戦っている選手でも、スポンサーとか仕事もあって、すごく恵まれている。かといってスポンサーさんが出してくれているお金をジュエリーや車に使うのは、どうなんだろうなって。もちろん僕も環境に恵まれていて、スポンサーさんに支えてもらっています。ただ、僕はそのお金を全て自分の修行だったり、練習パートナーに支払ったりとかしている。そのほうが健全だと思うんですよね。やっぱり、いろんなものを犠牲にしないと……」

――この場合「犠牲」という言葉が誤解を生むのかもしれません。犠牲ではなく投資。より成長を目指すのであれば、必要なものに投資していくのは当然で。

「あぁ、なるほど。だからこそ試合にも凄みが出て来ると思うんです。そういう世界観をつくり上げて、体現していきたいですね」

俺たちは下から凌ぎを削ってきているんだぞ

ここまでは1月末に行ったインタビューの内容だ。その後、3月の髙城戦はキャンセルととなり、宮城戦が正式決定してから実施したインタビューの内容をお届けする。

――3月の試合がキャンセルになると連絡を受けたのは、いつ頃ですか。

「2月の半ばから下旬のあたりですかね。キャンセルになった翌日からタイガームエタイに行く準備を進めて、1週間後にはプーケットにいました」

――行動が速い!

「もともと去年の12月に試合をする予定で、ずっと流れてきていますからね。今回もずっとスパーリングやっていました。強度の高い相手とスパーリングしかしていないぐらいで(笑)。だから勝負勘というか、野性味のあるところをつくることができたんじゃないかと思います」

――その場合、ピークをつくることも難しくなるのではないかと思っていました。

「正直、難しかったです。一旦タイでも上げ切って、名古屋に帰ってきてもスパーリングをやってきたので、早く仕上がりすぎたところはありました。かといって新しいことを取り入れようにも、時間があるようでない。いつでも試合ができる状態だけど、変えすぎてもいけないっていうバランスを取るのは難しかったですね」

――練習仲間は試合をしているなか、自分だけ試合が決まらないという点に対し、モヤモヤした気持ちはなかったですか。

「それは難しいところですね。決まらないようで、決まっていたというか」

――なるほど。3月の試合がキャンセルになった時点で、対戦相手はともあれ次は5月に試合を……とパンクラス側から話があったのですね。

「そうなんです。その時点でランキングを上げてきているのが宮城選手でしたから、次の相手も宮城選手になるだろうと考えていて。だからモヤモヤ感はなく、常に『やるぞ』という気持ちでいることはできました」

――宮城選手とは2024年7月、ネオブラの準決勝で対戦して判定勝ちしています。その宮城選手とベルトを賭けて再戦することになりました。

「あのトーナメントには宮城選手や荒田大輝選手が出ていて――あの時のネオブラに出させてもらったことを凄く感謝しています。2年後を考えたら、本当に人材の発掘になっていて。そのなかで僕は凌ぎを削って優勝し、MVPを獲得できたことは大きな経験でした。それも僕たちの年が特別というわけではなく、今後そういう年が増えていくんだろうなと思います。

ハッキリ言うと、上位ランカーで居座りながら試合を断り続けている選手がいるなか、『俺たちは下から凌ぎを削ってきているんだぞ』という意識はずっと持っていて。アマチュアから勝ち抜いてきた人間が上に来るというのは、IMMAFの流れを視ていて自然なことですし。だから今回のタイトルマッチは、それが示される試合だと考えています」

今回はフィニッシュしたい。それが今の僕に一番求められているものだと思います

――初戦と比べて、宮城選手の印象は変わっていますか。

「相手のことを下げたいわけじゃないけど、僕と対戦したあと山木麻弥君にも負けて連敗になったじゃないですか。そこから少し立て直して、ランキング外や下位ランカーに自分のところで勝ってきた。結果、2月の松井涼選手との試合で一発爆発したというか。そう見ると、本質はそこまで変わっていないかなって思います」

――この約2年間のことを考えれば、自分の上がり幅のほうが大きい、と。

「そうですね。特に松井斗輝選手との試合が僕を成長させてくれました。比較させてもらうと、やってきた相手のクオリティが違うとは思っています。と同時に、初戦の試合内容はそこまで参考にしていなくて。むしろ会見で向かい合った時に感じられることは、たくさんありました」

――というと?

「相手も守るものがある強さをというか、互いに気持ちの勝負では折れることがないだろうと思いました。そうなると純粋にアスリートとして、どちらが上か。格闘技の技術として、どちらが上かを測れる試合になりますね」

――今年2月の大会から、パンクラスが海外のみ再びUFCファイトパスで配信されるようになりました。UFCを目指すうえで、より目標が具体的になるのではないですか。

「……これは3~4年前の話になりますけど、IMMAFで遠征した時に福井さんと一緒に過ごしていて。当時から『自分はこういうふうに考えていて、今こう動いています』と説明を受けていました。だから僕は、パンクラスで戦っていけばUFCへの道があるなと思ったんです。こんなことを言うと、団体の代表が肩入れしている選手のように思われるかもしれないけど……」

――いえ、プロモーターが大会の方向性について選手に説明するのも当然ではないですか。実際にどうかは分かりませんが、山口選手以外にも説明はしているでしょうし。

「それなら良かったです。自分としては、この3年間ぐらいは『一緒に創ってきている』という想いがあって。今回のタイトルマッチは、特にそういう気持ちが強いですね。だから今回のタイトルマッチと防衛戦で良い勝ち方をすれば、来年のRTUとかではなくDWCSや本戦契約もあるんじゃないかと考えています。そのためにも今回はフィニッシュしたい。それが今の僕に一番求められているものだと思いますし。

そのためにここまでスパーリングでも倒す勘は身につけてきました。ただガツーンという一発のKOではなく、ボクシングのインファイトとかムエタイの散らしとか――そういう完成度を見てほしいですね。見てくれた人は絶対に忘れられない試合になると思います」

■視聴方法(予定)
2026年5月31日(日)
午後1時15分~ U-NEXT

■Pancrase362 対戦カード

<フライ級KOP決定戦/5分5R>
時田隆成(日本)
岸田宙大(日本)

<バンタム級暫定王座決定戦/5分5R>
山口怜臣(日本)
宮城成歩滝(日本)

<フライ級/5分3R>
濱田巧(日本)
ジョセフ・カマチョ(グアム)

<フェザー級/5分3R>
遠藤来生(日本)
三宅輝砂(日本)

<ライト級/5分3R>
平信一(日本)
鈴木慈也(日本)

<バンタム級/5分3R>
矢澤諒(日本)
バラカトゥロ・アサドゥラエフ(タジキスタン)

<57.7キロ契約/5分3R>
時田一生(日本)
藤野武(日本)

<フェザー級/5分3R>
福里凱亜(日本)
沢木純也(日本)

<バンタム級/5分3R>
髙木徳三(日本)
平澤宏樹(日本)

<バンタム級/5分3R>
谷村泰和(日本)
水島和磨(日本)

<バンタム級/5分3R>
小山敬司(日本)
石原健流(日本)

<フライ級/5分3R>
齋藤楼貴(日本)
嶺大基(日本)

<フライ級/5分3R>
稲垣祐司(日本)
天坂匡孝(日本)

<フライ級/5分3R>
獅道(日本)
佐々木裕亮(日本)

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