【Breakthrough Combat04】7戦無敗の山崎蒼空が振り返るアフメド戦「試合後は落ち込んでいました」
【写真】リモート画面が繋がった瞬間、これは驚く(C)SHOJIRO KAMEIKE
5月14日に開催されたBreakthrough Combat04で、山崎蒼空がザヒド・アフメドを判定3-0で下した。
Text by Shojiro Kameike
山崎は2023年にパンクラスでプロデビューし、翌年にはネオブラッドトーナメントで優勝。2025年に入り、2月にはBTCで韓国のベ・ジョンウにTKO勝利を収めた。続く5月大会では当初、同じく韓国のイ・ジョンヨンと対戦予定だったが、相手の負傷欠場により試合出場の機会を失いかける。
代役として岐阜在住のインドネシア人選手ザヒド・アフメドが選ばれたが、相手の情報もなく、予想以上にディフェンスの固いアフメドとタフな試合を展開して判定勝ち。これでプロデビュー以来の連勝を「7」に伸ばした山崎に、アフメド戦の振り返りと今後について訊いた。
『フィニッシュしなきゃいけない』という気持ちが強すぎて――
――目はどうしたのですか!?
「ちょっと練習で負傷してしまいまして……。明日もまた病院に行ってきます(※診断の結果、1カ月ほど安静にしていれば回復するとのこと)」
――そんななかで取材を受けていただき、ありがとうございます。前回の試合から1カ月も経たないうちに、それだけハードな練習を再開していたのですね。
「はい、試合の3日後には動き始めていました」
――3日ですか。タフな試合内容でしたが、疲労は溜まっていなかったですか。
「試合の疲労というより減量の疲労があったかもしれないです。試合後も1週間ぐらいは疲れが抜けなくて。ただ、いつも試合が終わったらすぐ練習を再開するので、特に問題はなかったですね」
――なるほど。前回の試合を振り返ると、まず直前で対戦相手が変更になりました。
「2~3週間前に対戦相手の負傷と、そこから新しい対戦相手を探すと聞きました。そこから1週間ぐらい経って、アフメド選手に決まったという流れです」
――試合までの期間を考えるとビザ取得の問題もあり、海外から対戦相手を呼ぶのは難しい。しかし国内でも相手を見つけられるかどうか……。山崎選手としては、新しい対戦相手が見つかると考えていましたか。
「正直『もしかして試合はなくなるかもなぁ』という気持ちでした。これまでも何度か、同じようなケースで試合がなくなったこともあったので。コーチとも『今回も試合は流れるかもしれない。次に向けて頑張ろう』という方向性で話もしていたんです。そんななかで対戦相手を見つけて試合を組んでもらえたので、本当に嬉しかったです」
――ただ、決まったものの対戦相手のデータは全くない。
「聞いたら『キックボクシングをやっていて、地下格闘技にも出ている』という話ぐらいで。だから『自分は練習していることを出すだけだ』と、気持ちを切り替えました」
――蓋を開けてみたら……という言い方はアフメド選手に失礼かもしれませんが、ディフェンスも固く、予想以上にタフな試合となりました。
「そうなんですよ。今まで試合でも練習でも、僕がバックマウントやボディトライアングルでしっかり体を伸ばしたら、たいてい相手は諦めていたというか。そこから動けなくなる相手のほうが多かったです。でもアフメド選手は諦めずに動き続けていたから、すごい根性だと思いました」
――ポジションを取られても、殴られても、そして肩固めで絞め上げられても諦めない。アフメド選手のタフさには驚かされました。
「僕の実力不足もありますけど、あれはビックリしましたね。自分も試合前は『1Rの1分ぐらいで終わるかな』と思っていて。実際、開始早々にテイクダウンできて――だけど、技術的にもテイクダウンした時のギロチンやガードポジション、あと立ち上がり方も『これはちゃんとできる選手だ』と感じました。
自分のプランとしては打撃で試合を組み立てて、チャンスがあればテイクダウンを狙い、最後は極めるかパウンドアウトすることを考えていました。でも予想以上に寝かせたあとの展開が強かったです。僕もフィニッシュを急いで力を使いすぎていましたし……後半のほうは、もう腕がパンパンになっていて(苦笑)。
だからスタンドの打撃やグラウンドで極めることより、パウンドで相手の気持ちを折ろうと思ったんです。でも全く気持ちが折れない選手で、どんな展開になってもアフメド選手の目が死んでいなかったです」
――2Rの段階で山崎選手もかなりスタミナを消耗しているように見えました。
「だいぶ消耗していましたけど、そこで自分がやられる気はしなかったです。ただ、僕のほうが『フィニッシュしなきゃいけない』という気持ちが強すぎて。2Rが終わった時は『どうフィニッシュしようか』と考えていました。極めるか、パウンドをまとめるか――」
――山崎選手も最後まで諦めない、そしてアフメド選手も諦めない。結果的にはタフな好勝負となりました。
「自分としては到底、納得できる内容ではなかったです。試合が終わったあとは落ち込んでしまいましたね(苦笑)」
RTUは自分のほうが良い結果を出せていたと思っています
――最後までフィニッシュを狙って攻め続けるのが山崎選手の魅力でもあると思います。今年2月のベ・ジョンウ戦も、初回は相手の組みに苦戦しながら、2Rに入ると一気に仕留めに行きました。
「あの試合も1Rは押されていて、2Rには相手の展開に持っていかせず自分の展開で仕留めることができました。すごく大きな経験になりましたね。
試合ではフィニッシュして勝つ。それはずっとこだわってきた部分で、こだわらないといけないことだと思っています。なかなかうまく行かないですけど、それでも練習では必ずフィニッシュに繋がる動きを意識するようにしています」
――知名度はなくても強い相手を海外から呼び、タフな試合を経験することで日本人選手にも突き抜けてもらう。それがBreakthrough Combatのコンセプトであり、ベ・ジョンウ戦はBTCのコンセプトを象徴するような一戦だったと思います。
「去年の12月、相手の怪我でパンクラスの試合がなくなって。どうしても試合したいと思っていた時に見つけたのが、長谷川賢さんが韓国人選手の相手を募集しているXの投稿だったんです」
――BTC02でチェ・スングクの対戦相手を募った投稿ですね。
「とにかく試合をしたかったし、どんどん強い相手と戦っていかないと世界では勝てないと思って、長谷川さんにDMを送らせていただきました。その時は『今回は別の選手に決まりましたが、ぜひ次の大会に参戦してください』という返事をいただいて。そこから周りにも相談して、2月大会に出ることになったんです」
――それだけMMAで世界を目指すという気持ちが強いのですか。
「はい。僕は小学校から高校までサッカーをやっていて、サッカーに対して情熱がなくなってきた頃、朝倉兄弟の試合を視てMMAをやりたいと思ったんです。地元の道場でMMAを始めると、どんどん強くなりたいという気持ちが強くなりました。
そんな時に動画で世界のMMAファイターの練習を視て――昔から格闘技をやっていたわけでもない自分が、学校(※専門学校)に通いながら1日1回の練習だけで、こういう相手に勝てるのかと考えるようになったんですよ。だから住み込みでMMAに集中できる環境を探していたら、マッハさんの『内弟子募集』というXの投稿を見つけて(笑)」
――道場も試合もSNSで! 現代らしい展開です。プロデビュー以降はパンクラスのネオブラも制し、ここまで7連勝を収めています。
「7連勝はしていますけど、まだまだ自分の試合内容には納得できていないです。先ほど言ったとおりフィニッシュにこだわっているのに、フィニッシュできていない試合もあります。肝心なところで行ききることができていないので、精神面からも鍛えていく必要もあります」
――先日、今年のRoad to UFCトーナメント準々決勝が行われました。世界を目指す山崎選手にとっては、視ていると自身も奮い立つのではないですか。
「そうですね。今回出た2人より、自分のほうが良い結果を出せていたと思っています」
――おぉっ!
「まずは目の負傷を治し、年内には強い相手に勝って、来年のRTU出場をアピールしたいです。よろしくお願いします!」