【PFL WT2025#05】ウェルター級T準決勝=ストーリー戦へ。菊入正行「勝ったら、ちょっとした偉業達成」
【写真】ナッシュビルといえばギブソン。そして楽器屋街──に、妙にマッチしたダン・ハーディーを挟んでストーリーと (C)KOJI ANDO
12日(金・現地時間)にテネシー州ナッシュビルのナッシュビル・ミュニシパル・オーデトリアムで開催されるPFL WT2025#05。ウェルター級トーナメント準決勝で菊入正行がローガン・ストーリーと対戦する。
text by Takumi Nakamura
トーナメント一回戦ではTUF32キャストでCage Warriors ウェルター級王者の肩書を持つヨナス・バカルと対戦した菊入。試合は2R終了時にバカルがヒザを負傷してTKOという形で終わったが、菊入はスクランブルの攻防とパンチの正確さでバカルを上回った。
準決勝の対戦相手は元Bellator世界ウェルター級暫定王者のローガン・ストーリー。菊入にとっては過去最強の相手であり、ここを突破すればウェルター級日本人ファイターによる偉業達成とも言える。この大一番に挑む菊入に話を訊いた。
――米国行き直前のインタビューありがとうございます(※取材は5日に行われた)。今回の出発はいつになるのですか。
「8日の日曜日に出発します。日本でのトレーニングは金曜日までやって、という感じですね」
――トーナメント1回戦はヨナス・バカルのヒザの負傷により2R終了時にTKO勝利という形でした。試合中に相手の異変は感じましたか。
「2Rの終わり際にバカルがテイクダウンを取った時にヒザが外れたと言っていたんですけど、試合中は特に異変は感じなかったです。インターバル中にセコンドの安藤(晃司)さんから『3R目で人生変えろ!』と檄を飛ばされていて、自分も気合いを入れていたら、試合が終わっちゃって。ちょっとびっくりしましたね」
――アクシデント的なフィニッシュでしたが、そこまでの試合展開を振り返っていただけますか。
「前回は少し組みを混ぜて戦ってみたり、自分の試したかったことができた試合だったかなと思います」
――言える範囲で構わないですが、何を試そうと思ったのですか。
「やっぱりテイクダウンですね。相手が自分より打撃が強いストライカーということを意識して練習していたので、相手の打撃のプレッシャーが強かった時に、自分から組んでテイクダウンするような試合展開をできたらいいなと考えていました。実際にそういった試合運びができたのが良かったかなと」
――ただ、バカルは過去の試合を見ても打撃主体のスタイルだったので、開始直後にバカルが組んできた時は想定外でしたか。
「試合が終わった後に少しバカルと話をしたら『簡単にテイクダウンできそうだったから、そっちに切り替えた』みたいなことを言われて、なめんなよとは思いました(苦笑)」
――試合を通して自分の距離をキープして打撃を当てる、そこから組むという動きを徹底していたように感じました。
「練習ではかなり組みはやっていて、それを試合で発揮することが少なかったというか。今回のトーナメントでバカル相手に組まなかったら、おそらく自分から組むことはないなと思って、練習からそこ(自分から組む)は意識していました」
――試合後は安藤さんとは、どのような話を?
「やっぱりこう…打撃で行きすぎちゃったところがあったかなと。実際に行きすぎたと思ったところでパンチをもらったり、そこから少し押されちゃった部分があるんで、そういうところがまだ良くなかったと思います。安藤さんからも『あそこはちょっと行き過ぎだよ』みたいに指摘されました」
――ウェルター級という部分も含めて余計な被弾はせず、可能な限りリスクを減らして勝ちにいくことは意識していますか。
「僕は試合では打ち合わないし、安藤さんも打ち合いを好むタイプのファイターじゃない。僕は安藤さんに教えられた通りのことをやるし、セコンドの指示をしっかり聞いて戦っています。ただ打ち合いはしないとしても、あまりに行かなすぎるとラウンドを取られちゃうので、そこのバランスは意識していました。自分的にはちょっと行きすぎたかなと思ったんですけど、ジャッジペーパーを見ると1、2Rとも三者三様のイーブンだったんですよ。要はあの展開だとどちらがラウンドを取るか分からないわけで、リスクを押さえつつもっと行かないとダメなんだなと思いました」
――なるほど。客観的に見て判断する材料が多かったという部分でも、次に生かせるものはありましたか。
「そうですね。相手の打撃をもらわないで、打ち合いはしない。ただ相手を見すぎる部分を減らして、前に出るときは前に出る。今はそういう風に考えていますね」
――トーナメントの準決勝では元Bellator世界ウェルター級暫定王者のローガン・ストーリーと対戦することになりました。
「最初は『俺もローガンと試合やるところまできたか』という気持ちもありましたけど、今は別にそういった感情はないです。トーナメントで戦う1人の相手という感じです」
――準決勝の相手はストーリーになると予想していましたか。
「ローガンの相手がジョセフ・ルシアーノに変わった時点でローガンが上がってくるなと思っていました」
――対戦相手としては、どのような印象を持っていますか。
「見ての通り、ケージレスリングですね。とにかくケージに押し込んでテイクダウンして、トップキープして削る。そこが抜群に強いと思います」
――やはりストーリーのケージレスリングにどう対応するのかが、ポイントだと思います。そこの対応や対策はいかがでしょうか。
「今回ファイトキャンプで相手をお願いしようと思っていた選手たちの怪我が多くて、なかなか一緒に練習できる時間がなかったんですよ。その分、試合で起こりそうなシチュエーションを細かく分けて、そこの練習に付き合ってもらいました。言ってもローガンみたいな選手は日本人にはあまりいないですし、今回はそういった形で作ってきました」
――ストーリーと戦うイメージは出来上がっていますか。
「そうですね。ローガンの試合って、見ていてあまり変わらないじゃないですか。デビュー当初はすごく勢いがあって、パンチを振り回しながらテイクダウンにいくみたいな感じでしたけど、最近はそこまでパンチを振り回さないというか。相手が打撃できたところに組んだり、相手の動きを見て組みに行く・ケージに押し込んでみたいな感じですよね」
――それこそ先ほど話したようにリスクを負わずに自分の強みだけをぶつけて勝つことがテーマですか。
「そうですね。それもあってローガンがやってくるであろう動きをシチュエーション分けして、その対策をしながら全体的なイメージを作ってきました」
――トーナメントの準決勝というのはもちろん、ストーリーに勝つことになれば大きな勝利だと思います。
「ローガンは3敗しかしていなくて、それも(ヤーソラフ・)アモソフに2回負けて、(シャミル・)ムサエフにやられただけですからね。でも今は正直ワクワクの方が強いです。これに勝ったらやべえぞみたいな。もし僕がローガンに勝ったら、客観的に見ても日本のウェルター級におけるちょっとした偉業達成じゃないですか。今そのワクワクが大きくなっていますね」
――菊入選手もBellator・PFLで3連勝していて、自信がついてきた部分もありますか。
「やっぱり自分は気持ちだと思います。もちろん技術も大事なんですけど、自分は毎回気持ちで負けないように作り上げているんで。今回もローガンは強敵ですけど、それに気持ちで負けないようにしっかりやってきたんで、それを見せます」
――いい意味でチャレンジ精神を捨てて、やるべきことをやれば勝てるというマインドですか。
「そうですね。そうじゃないと試合でやられる。特に自分が劣勢の時に気持ちで圧されたら、絶対にそのまま圧し切られちゃう感じがするんですよ。そうならないようにどんな状況でも気持ちを強く持って戦う。今回もそこは1番大事にして練習してきました」
――日本からもたくさんの人が菊入選手のことを応援しています。最後に日本のファンにメッセージをいただけますか。
「僕が必ずKOでローガン・ストーリーを超えます。その姿を日本から楽しみにしていてください。応援よろしくお願いします」
■視聴方法(予定)
6月13日(金)
午前9時15分~U-NEXT
■PFL WT2025#0対戦カード
<ウェルター級準決勝/5分3R>
ジェイソン・ジャクソン(ジャマイカ)
サッド・ジーン(米国)
<フェザー級準決勝/5分3R>
ヘスス・ピネド(ペルー)
ガブリエル・ブラガ(ブラジル)
<ウェルター級準決勝/5分3R>
ローガン・ストーリー(米国)
菊入正行(日本)
<フェザー級準決勝/5分3R>
モヴィッド・ハイブラエフ(ロシア)
キム・テキュン(韓国)
<フェザー級補欠戦/5分3R>
ジェレミー・ケネディ(ロシア)
アダム・ボリッチ(米国)
<フェザー級/5分3R>
アザエル・アジュージ(フランス)
イーブ・ランジュ(フランス)
<ウェルター級補欠戦/5分3R>
マゴメド・ウマラトフ(ロシア)
アンソニー・アイヴィー(米国)
<ウェルター級戦/5分3R>
ジョセフ・ルシアーノ(豪州)
サレック・シールズ(米国)
<ウェルター級戦/5分3R>
ムハメド・ベルハモフ(ロシア)
ケンドリー・セントルイス(米国)
<フェザー級/5分3R>
アレクセイ・バーガンデ(米国)
ネイサン・バーズレイ(米国)
<バンタム級/5分3R>
ジェイソン・ダナー(米国)
ネイサン・ギルモア(米国)