【Pancrase352】黒澤亮平に挑戦。少林寺拳法出身も生粋MMAファイター植松洋貴「先入観なくコツコツ」
【写真】2勝3敗1分から3連勝の28歳。対する王者はブランクがありながらも18勝4敗の31歳だ (C)TAKUMI NAKAMURA
9日(日)に横浜市中区の横浜武道館で開催されるPancrase352にて、植松洋貴がストロー級KOPチャンピオンシップで黒澤亮平の持つ王座に挑戦する。
Text by Takumi Nakamura
2021年にプロデビューし、2024年は3戦3勝の結果を残してチャンピオンシップのチャンスを掴んだ植松。小・中・高は少林寺拳法で活躍し、自衛隊勤務を経て22歳で上京。23歳の時に安藤晃司が率いるNEVER QUITに入会して、MMAへの道に進んだ遅咲きのファイターでもある。
NEVER QUITでMMAのイロハを学び「自然と寝てよし・立ってよしのスタイルになった。これといった強みがないところが強み」という純MMAファイターがNEVER QUITに3本目のベルトをもたらすか。
――植松選手はMMAPLANET初登場ということでプロフィール的なところから聞かせてください。植松選手はもともと少林寺拳法をやっていたそうですね。
「父親が少林寺拳法の道場の師範代だったので、その流れで小学生の頃に少林寺拳法を始めました。兄弟全員習わされるみたいな感じで。中学時代は県大会で優勝するようになって、少林寺拳法のスポーツ推薦で高校に進学して、少林寺拳法は高校卒業まで続けました」
――MMAを始めたのは高校卒業後になるのですか。
「結構自分はMMAを始めたのが遅くて、23歳からMMAを始めました」
――高校卒業後に少しブランクがあったのですか。
「そうですね。自分は高校まで少林寺拳法を続けて、顧問の知り合いが自衛隊で働いていて、その人に『お前も来たらどうだ?』と誘われて高校卒業後に自衛隊に入ったんです。ただ何かやりたいことがあって自衛隊に入ったわけでもないので、4年で辞めることになって。それで自衛隊を辞めたあと、突発的に『東京に行きたい!』と思ったんですよ。小さい頃から少林寺拳法をやっていて、高校を出てそのまま自衛隊に入ったんで、遊ぶ時間もなかったし、とにかくそれまで出来なかったことをやりたいと思ったんですよね。結局知り合いもほぼいない、仕事もちゃんと決めないまま上京しました」
――ご両親は植松選手が上京することに反対はしなかったのですか。
「そこは意外とOKしてくれて、心配はしていたと思うんですけど、僕の好きなようにやらせてくれました」
――そこからどういう流れでMMAを始めるのですか。
「自衛隊時代の友達が東京にいて、その友達が格闘技好きでよく試合を見に行くヤツだったんです。それでその友達に誘われて見に行ったのがMMAの大会で『こんな格闘技があるんだ!』と思って、MMAに興味を持つようになりました。そこからどうせ興味があるんだったら見るだけじゃなくてやってみようと思って、近所でMMAのジムを検索した時に、一番最初に出てきたのがNEVER QUITだったんです。それで体験入会を申し込んだら、ちょうど僕が申し込んだ日がISAOさんの試合の日で、みんなISAOさんの応援に行っていて、僕と安藤(晃司)さんのマンツーマンだったんです。その時に安藤さんがすごく丁寧に教えてくれて、NEVER QUITに入会しようと思いました」
――色々な偶然が重なってMMAと出会い、安藤さんのもとでMMAを始めることになったんですね。
「ジムに入った時もプロを目指していたわけではなくて、真面目にジムに通っていたら、安藤さんに『せっかくだったらアマチュアの試合に出てみたら?』と薦められたんです。初めて出た大会がパンクラスのアマチュア大会のトーナメントで、そのトーナメントで優勝できたんです。そこからさらにMMAにのめり込むようになって、パンクラスでプロデビューして今に至ります」
――まさか自分がこんな人生を送ることになるとは一切思ってないですよね。
「はい。(笑)。でも昔から人と違うことや変わったことをやりたい願望があって、それがたまたま格闘技だったのかなと思います」
――MMAの練習を始めて少林寺拳法のバックボーンが活かされていると思うことはありますか。
「少林寺拳法は演武が中心で、実際にコンタクトするものもあるのですが、基本的に相手を殴ったり蹴ったりはしないんですね。イメージ的に少林寺拳法を小・中・高やっていたというと、ものすごく打撃が出来てMMAを始めたと思われがちなのですが、MMAをやるまで一回も人を殴ったことも蹴ったこともないです(笑)。だから一応少林寺拳法がバックボーンとは言っていますが、MMAに関してはNEVER QUITで学んだもの、ほぼバックボーン=MMAだと思っています」
――ではNEVER QUITで練習やスパーリングを重ねていく上で、自分のファイトスタイルを確立させたイメージですか。
「そうですね。最初は打撃ではなく組み技から入って、練習を続けていくうちに打撃にも慣れてきて、それで自然と寝てよし・立ってよしのスタイルになったのかなと思います。MMAを始めた時点で何か特化したものを持っていたわけではなかったので、逆にそれで打撃も組み技もバランスよく伸ばすことが出来ました」
――今は10代からMMAを始める選手も多く、植松選手のように23歳からMMAを始めてタイトルマッチまでたどり着く選手は珍しいと思います。ご自身ではどこが自分の強みだと思いますか。
「僕は特に練習量が多いタイプでもないですし、仕事をしながら練習時間を作って、普通にクラスにも参加して一般会員さんとも練習します。だから特別これをやって強くなったというのはないんですよね。安藤さんに一からMMAを丁寧に教えていただいて、コツコツ練習を続けてきました。だから変に先入観なくMMAをMMAとして始めたこと、これといった強みがないところが強みかもしれないです」
――そして今大会ではタイトルに挑戦するわけですが、挑戦が決まった時の心境は?
「MMAを始めて5年ぐらいなんですけど、そういう意味では割とスムーズにここまで来られたんじゃないのかなと思います。デビューする時にやるからにはチャンピオンなりたいという気持ちはずっと持っていました」
――では対戦相手の黒澤亮平選手の印象を聞かせてください。
「やっぱり今までやってきた相手と比べると実績もキャリアもずば抜けていて、それこそ修斗の元世界チャンピオンですし、パンクラスに来てからも負けなしでチャンピオンまで上り詰めた選手なので、本当に格上の相手だと思っています。自分が持っているものを全て出し切って、言ったらこの5年間の集大成じゃないですけど、そういう意味でも絶対に落とせない試合です」
――可能な範囲で構いませんが、どのような試合をしたいと思っていますか。
「対戦相手としては何でもできる選手で、打撃はもちろん、THE BLACKBELT JAPAN所属の選手なので、試合では出していないだけで組み技も強いと思います。ただ相手を警戒しすぎて、自分の良さを出せないことは絶対によくないので。行くときは行く、相手の流れには絶対に乗せない。常に自分の流れを意識して戦おうと思います。これもよく安藤さんに言われるのですが、相手よりちょっと上回る試合をすれば勝てる、と。そういうところも意識して今回は試合に臨みたいと思います」
――チャンピオンやベルトに対してはどのような想いがありますか。
「この世界に入って『いつかベルトを巻けたらいいなぁ』と遠く感じていたものが、自分の手が届く位置まできて、そういう意味では感慨深いものがあります。それと同時に必ずベルトを巻きたいです」
――パンクラスのベルトはもちろん、格闘家として目標はありますか。
「安藤さん、ISAOさん、菊入(正行)さん…ジムの先輩たちのように、僕も世界の舞台で戦えたらいいなとは思います。目の前で世界で活躍している選手たちを見ていると、自分にとっていい刺激になりますし、やっぱり憧れますね」
――それでは最後にこのタイトルマッチを楽しみにしているファンのみなさんにメッセージをいただけますか。
「今回タイトルマッチということで、必ず周りを盛り上げるような試合にしたいと思います。そしてパンクラスのベルトを獲って、NEVER QUITに3本目のベルトを持って帰って来られるように頑張ります」
■視聴方法(予定)
3月9日(日)
午後11時45分~U-NEXT