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【PFL2026#07】アザエル・アジョウジを相手に1年振りの復帰戦、SASUKE「これがリスタートとなる第三章」

【写真】リモート画面が繋がった瞬間、どこかのお店かと思ったほどのインテリア(C)SHOJIRO KAMEIKE

24日(土・現地時間)、ベルギーはブリュッセルのINGアリーナで開催されるPFL2026#07「Brussels」で、SASUKEがアザエル・アジョウジと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

昨年5月、RIZINでビクター・コレスニックにKO負けを喫したSASUKEが、復帰の舞台に選んだのはPFLだった。対戦相手は伝統派空手をベースとし、蹴りを多用して間合いを創るアジョウジだ。そんなSASUKEがコレスニック戦からの1年間、そして「これが第三章。もしかしたら最終章になるかもしれない」とPFLで戦う心の内を明かしてくれた。


PFLからのオファーがこのタイミングで来るというのは、何か運命的なものがあるのかなと思って

――本日はよろしくお願いいたします。……そちらは自宅ですか。

「はい。ちょっと背景がうるさいですかね」

――いえ、そんなことはないです。ただインテリアがオシャレだなと思いまして。

「アハハハ、ありがとうございます。インテリアが好きなんですよ。

格闘技をやっていると、普段の練習とか生活が殺伐としてくるじゃないですか。試合前は試合のことを考えないといけないですし。特に今のファイターは対戦相手だけでなく、ネット上のいろんな声と戦わないといけないから、なかなか心が休まる場所はなくなってくると思います。僕は自分の部屋が好きで、割とインドアなんですよ。だからこうして自分の部屋を飾りつけたりするのは好きですね」

――心の安らぐ場所を自宅に求める人もいますし、どこか外に求める人もいます。SASUKE選手の場合は自宅が一番落ち着くのですね。

「外も好きだけど、やっぱり人の目があると100パーセントはリラックスしきれないというか。自分一人の空間って大事で、特に試合前は家にいることが多いです。家とジムの行き来だけで、あとは買い物でスーパーに行ったりするぐらいです」

――また試合後も日常に戻るために、落ち着くことができる場所は大切だと思います。今回は1年振りの試合となりますが、その舞台としてPFLを選択した理由から教えていただけますか。以前のインタビューでは豪州エターナルMMAも視野に入れていたようでしたが……。

「前回のコレスニック戦で負けて、これから自分の格闘家の道をどうやって描いていけばいいのか――結構、気持ちが落ち込んでいたんですよね。それでも日々が過ぎていく。悶々とした生活をしているなかで、突然降って沸いたようなオファーだったというか。

実は以前にも一度、PFLの話があったんです。でもその時は、いろんな関係があって出ることができませんでした。そんなPFLからのオファーがこのタイミングで来るというのは、何か運命的なものがあるのかなと思って。今、僕がRoad to UFCで負けたキム・サンウォンもPFLに出ているじゃないですか。やはりリベンジしたい相手の一人ではあるし、PFLに行けばまたキム・サンウォンと交わることもあるのかなと思いました。それで話が来た時は、すぐに『PFLで戦おう』と決めましたね」

――なるほど。コレスニック戦後からPFLの試合が決まるまでというのは、試合をするコンディションではなかったのでしょうか。あるいは試合をする気持ちにならなかったのか。

「気持ちは割と早めに切り替えていました。負けた後1カ月間ぐらいは『これからどうしようかな』という感じでしたけど、仕事として格闘技をやっているかぎりは毎日、格闘技に触れる。触れていると楽しい面が見つかるし、また試合をしたいという気持ちになってきて。何よりジムメイトたちが『次はやり返してください!』という声をかけてくれるんですよね。自分の中では、それが大きかったです。

ただ、体の回復はちょっと時間が掛かりましたね。コレスニック戦が終わってから4~5カ月ぐらいは、マックスで動けない状態でした」

――具体的にはどのような状態だったのでしょうか。SNSでも入院と治療しているような写真が公開されていましたが……。

「コレスニック戦のちょうど1カ月前ですか。首のヘルニアが見つかって、左手に力が入らずスパーリングも全然できなかったんですよね。その治療に時間を要して――ちゃんと格闘技の練習ができるようになるまで4~5カ月ぐらい掛かりました。

さらに徐々に慣らして復帰していく過程で、左ヒジにも違和感を覚えるようになって。曲げ伸ばしの可動域が全然なくなっちゃったんですよ。これも長年の蓄積によるもので、すぐに手術しました。そういうこともあって、ちゃんと練習に復帰できたのは去年の終わりぐらいでしたね」

去年の上半期は、あまり良いメンタルではなかったかもしれないです

――実は……もちろんコレスニックは強いし、ボディブロー一撃でKOするのも技術です。ただ、自分はSASUKE選手があのボディ一撃で沈むのは、他にも何か要因があるのではないかと思いました。

「……、……」

――そこでジムメイトである芳賀ビラル海選手のインタビューの際、雑談の中で「SASUKE選手に何があったのか」と訊いてみたことがありました。するとビラル選手も苦い表情を浮かべながら「いろいろありました。でも自分の口からは言えないです。機会があれば本人に訊いてみてください」と。

「そうだったんですね(笑)。彼はすごく真面目で真っ直ぐな男だから、そういう時は何も言わないと思います。

コレスニック戦について言えば、確かに今までの自分と比べて万全なコンディションではなかったです。ただ、それでも自分の中では『やるべきことはやった』つもりでいました。相手の対策にしっかりとハマッてしまったところはあったし、ボディの一撃で負けてしまったことは自分の気の緩みというか。本当にワンミスで……、それが敗因の全てですね」

――なるほど。

「試合は、組みついて倒す。倒せればラッキー、というぐらいに考えていました。組みの練習ができていなかったので、倒せなければ離れてヒジを打つ。それを繰り返して相手を削っていくという作戦だったんです。あとコレスニックが距離を詰めてきたら右を合わせる、とか。

でもそれは相手の動きありきの作戦であって。試合が始まるとコレスニックは蹴りをバンバン打ってくる。スピードは速いけど、その分パワーはそれほどないと感じたんですよ。このペースで手数を出していれば相手は疲れるし、『これは2Rか3Rにテイクダウンいけるぞ。巻き返せるぞ』と思っていた矢先に、コレスニックが蹴りからボディに切り替えてきた。僕が全く予想していないところでボディを受けたので、ちゃんと効いてしまいました。1R残り20秒ぐらいのところで『これはいける!』と、気持ちがフワッと浮いてしまったのが敗因の全てです。それは自分の中でも分かっているので。だから技術云々というよりメンタル的な部分が大きかったのかな、と」

――メンタル面ですか。椿飛鳥戦は勝利しながらも『怒り』というメンタル面の問題を話していました。そしてコレスニック戦では気持ちがフワッと浮いてしまった。ファイターとしてトップに行けば行くほど、常にメンタルを一定に保つことは難しくなるかと思います。そのためにも、やはり自宅とインテリアのような心を落ち着かせてくれるものは必要になりますよね。SASUKE選手に限ったことではなく。

「あぁ、そうか。コレスニック戦の前に椿戦もありましたね(苦笑)。そう考えると去年の上半期は、あまり良いメンタルではなかったかもしれないです」

――SASUKE選手は昨年、30歳を迎えました。ファイターだけでなく他の社会でも、30歳というのは一つの区切りとして、今後のキャリアについて考える重要時期でもあるかと思います。SASUKE選手の場合は椿戦やコレスニック戦の頃に、今後の格闘技キャリアについて考えたり、何か考えが変化した面はありますか。

「う~ん……ここまで格闘技を続けてくると、たぶんもう辞められないんですよね(笑)。選手としてどれだけ続けられるか、というのは――たとえば『もう無理だ』と気持ちが折れたら終わると思いますけど」

――あるいは物理的に続けられないほどの怪我を負うか。

「はい。でも僕は『辞められない側の人間』だと思っているので。気持ちが折れるか、体が折れるかっていうところまで行かないと、ずっと続けている。格闘技よりも自分を熱中させてくれる何かが出てきたら話は別ですけど。……たぶん出てこないでしょうね」

――そう思います。

「アハハハ。年齢的な部分については、一般的にも30歳を超えたら肉体的ピークも過ぎるとは言われますよね。でもMMAというのは他の競技と少し違うと思っていて。ダメージが溜まりやすい面はあるでしょうけど、いろんな格闘技の要素が混ざっていて、何も相手の得意なところで戦う必要はない。戦い方次第では誰にでも平等に勝つチャンスがある。年齢を重ねてもキャリアや技術でカバーして勝っていく選手がいるわけですから。

自分が成長するということに関していえば、年齢は気にしていないですね。自分が強くなることに関して、あまり関係がないのかな、と。それを気にしてネガティブになるぐらいだったら、気にしないほうが良いと思います」

――では2025年の2試合を踏まえて、次の2026年の初戦までSASUKE選手の中では、何か新しいことを始めるのか。それとも今までやってきたことの精度を高めていくのか。選択肢はいろいろあると思いますが、何を選んできたのでしょうか。

「そうですね……まずは技術的なところよりも気持ち的なところを入れ替えて。コレスニック戦は作戦の面では、やれることをやり切って負けたから仕方ないです。ただ負けの引き金をひいたのは自分の気の緩みでした。だからまずメンタル面を強くする。でもそれって格闘技の中だけでなく、日常生活から自分を律するというか。普段から生活の中で、たるんだところを作らない。そういうことは意識してきました。

あと技術面でいえば結構、人を頼るようになりました」

考えすぎてプレッシャーになっても良くないので、頭は冷静に、試合は淡々とやって勝ちます

――というと?

「今までは自分を信じてやっていたというか、自分の直感で動いている面はありました。でも多角的に――たとえばコレスニック戦の試合映像を視てもらい、どこが悪かったのかをトレーナーに訊くのはもちろんです。でも身内だとどうしても、僕を気遣うところもあるので(苦笑)。だから逆に、俗にいう格ヲタの後輩に『忖度なく意見を言ってほしい』と訊いたりとか。その後輩は格闘技の経験はないです。でも技術を知らないからこそ『SASUKEさんの良い時はコレがあるけど、コレスニック戦はコレがなかった』と、ズバッと言ってくれました。そうして、いろんな人に話を聞きながら自己分析をやってきましたね」

――それは意外です。なかには当然ながらプライドもあり、トレーナーや選手以外に意見を求めることはできないファイターもいると思います。

「そうなんですかね? 僕は何とも思わなくて(笑)。もちろん意見を求めたのは名前も顔も知らないネット上の人ではなく、自分のことをよく分かってくれている人ではあります。自分のことを気に掛けてくれている人の声は、スッと入ってきますよね。自分がハッとさせられることもあったし、気づいたところの修正と技術の底上げをやってきたかなという感じです」

――練習に復帰した昨年末からここまで5カ月、どれだけ仕上がってきていますか。

「スパーリングの中で、MMAとして形にハマッてきているとは感じますね。作戦に関わる部分は言えないけど、いろんな人から指摘された課題はクリアしてきました」

――練習の内容は、対策も踏まえたものだったのでしょうか。

「どちらかといえば対策としての要素は強くなくて。相手は背が高くて懐が深いし、蹴りが速い。それで『普通これは届かないでしょ』と思うような間合いから、一気に詰めて打ってきますよね。その時に自分がしっかりと受けて、返しまでできるように。逆に相手は詰められた時や嫌な場所を取られた受け方が良くないので、自分は強い打撃を出しつつ距離をつくっていく。そういう練習は対策面が強いですけど、今回やったことは今後も自分も使っていくことができるし、一つの武器になっていくと思います」

――次の試合で対戦するアザエル・アジョウジは、いわゆる伝統派空手を軸とした独特なスタイルです。

「あれだけ空手の色が強い選手と対戦するのは初めてです。これまで空手出身のファイターと戦ったことはありますけど、次の相手はより特殊というか。それとファイトIQは高いと思います。間合いやプレッシャーで、スタンドでアドバンテージを取ったら相手のミスを見つけ、足を掛けて倒す。さらにトップをキープして終わるなど、リスクを負わないタイプというか。

そういうタイプを崩していくためには、やはり相手のペースで戦ってはいけない。結構、間合いで焦らしてきますからね。だから技術を崩すために気持ちが必要なのかなって思います。リスクを負ってでも喧嘩する時は喧嘩する。相手を精神的に削ることができないと、勝ちも遠いのかなと考えています」

――次の試合は2026年初戦であり、PFL初戦です。この試合の結果次第で、今後の展開も変わってくるだけに重要な一戦となります。

「自分のキャリアにとって転機になる試合だと思っています。自分の中では、第三章のスタートですね。プロデビューして修斗のベルトを獲るまでが第一章。そこから海外に挑戦して跳ね返されたのが第二章で。次はリスタートとなる第三章になります。もしかしたら、これが最終章になるかもしれない。良い形で自分のキャリアを締めくくるためにも、次の試合は重要になってくると思います。ただ考えすぎてプレッシャーになっても良くないので、頭は冷静に、試合は淡々とやって勝ちます」

■視聴方法(予定)
5月24日(日・日本時間)
午前1時30分~ U-NEXT

■PFL2026#07 対戦カード

<ウェルター級/5分3R>
パトリッキ・アビホハ(ベルギー)
ベンソン・ヘンダーソン(米国)

<バンタム級/5分3R>
テイラー・ラピルース(フランス)
ジェイク・ハードリー(英国)

<ライトヘビー級/5分3R>
ボリス・アムバルギャ・アトンギャナ(ベルギー)
ジャレッド・グッデン(米国)

<バンタム級/5分3R>
マルシルリー・アウベス(ブラジル)
井上直樹(日本)

<フェザー級/5分3R>
アザエル・アジョウジ(アルジェリア)
SASUKE(日本)

<バンタム級/5分3R>
バリス・アディギュゼル(フランス)
グスタボ・オリヴェイラ(ポルトガル)

<ライトヘビー級/5分3R>
ドネギ・アベナ(スリナム)
ジョー・シリング(米国)

<バンタム級/5分3R>
モブサル・イブラヒモフ(ベルギー)
ユスーフ・ベナーテ(コートジボアール)

<ウェルター級/5分3R>
カムザット・アバエフ(ベルギー)
ルカ・ポクリ(モルドバ)

<フェザー級/5分3R>
アダム・メスキニ(モロッコ)
キウイニー・ロピス(ブラジル)

<ウェルター級/5分3R>
ルスタン・セルビエフ(ベルギー)
アシュリー・リース(英国)

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