【UFN277】14カ月振りの再起戦へ、鶴屋怜「2番目で良いやって思うようなら、格闘技なんて辞めれば良い」
【写真】22歳、23歳、24歳。この頃の1年は大きい。そう素直に感じさせられた取材だった(C)MMAPLANET
30日(土・現地時間)、マカオはコタイのギャラクシー・アリーナで開催されるUFN277「Song vs Figueiredo」で、鶴屋怜が1年2カ月振りに実戦の舞台に立つ。
Text by Manabu Takashima
Road to UFCシーズン2優勝。キャリア9連勝、8つのフィニッシュ勝利を引っ提げUFCとサインした鶴屋は昨年3月にジョシュア・ヴァンと対戦しキャリア初黒星を喫した。テイクダウンを切られ、思うように組めない。寝技に持ち込めない展開のなかで、打撃を被弾して判定負けに。
5カ月後にニャムジャルガル・トゥメンデムベレルと対戦予定も眼の負傷で欠場した鶴屋だが、この間にヴァンがUFC世界フライ級王座に就き、同門の平良達郎が世界挑戦を決めた。
「日本人初のUFC世界チャンピオンになること」を目標に駆け抜けてきた鶴屋は、今月6日に行われた取材でチームメイトの感情も鑑みて、試合展開を予想してくれた。
その後、彼自身の復帰戦に向けてインタビューの話題を変えるなか、日本人初に対するこだわりを吐露した。世界最強を目指す上で、決して失ってはいけない強い意志を持ち続けている鶴屋の言葉から、変わらぬ想いとこの間の成長が感じられた。
一番最初になるということが自分の拘りだった
――ヴァン×平良戦について、技術的な見方をしっかりとしてくれた鶴屋選手ですが、精神的にはやはり複雑かとは思います。ずっと日本人で初めてUFCチャンピオンになるという目標を持って生きてきたのですから。と同時に昨年8月、目の負傷で欠場が決まる前に再起戦に向けてインタビューをした時に、無敗の呪縛から解けてそこは楽になっているようにも感じました。
「そこはありました。やはり、負けなしできたことにはプレッシャーを感じてはいたので」
――そのキャリア初黒星を喫した相手が、ブランドン・ロイヴァルに勝ち、9カ月後に世界チャンピオンになりました。無敗でキャリアを終わることができるファイターでなければ、誰もが敗北を経験します。最初に負けた相手が世界チャンピオンになった。それは初黒星に関して、ある意味納得ができるということはなかったですか。
「そうですね。ヴァンが世界チャンピオンになったことで、チャンピオンに負けているだけなので……まぁまぁまぁ、それでも悔しいですけど。チャンピオンだから目標にもしやすいですしね。そういうところは、ありますね」
――王座挑戦の時期も年齢やキャリアが関係してくる面があり、そこは自分でコントロールできない部分です。それでも、今も日本人として一番早くUFCチャンピオンになりたいという気持ちはありますか。
「それは、もちろんあります。これまで7人ですか、UFCの世界タイトルに挑戦して皆、負けているじゃないですか。達郎君は同門だし、負けて欲しいとかは絶対にないですよ。でも達郎君が世界チャンピオンになって欲しくないというより、僕が最初の日本人UFCチャンピオンになりたい。その気持ちが強いから……それって結局は達郎君にチャンピオンになってほしくないということになってしまうんです……」
――その気概があって当然だと思います。同じジムでなければ口にいくらでもできることですし。世界一の座は一つ、日本人初も1人しかいないわけですしね。
「ありがとうございます。仮に同じ階級の(内田)タケルがタイトルに挑戦しても、絶対に僕は悔しがると思います。格闘家で、そう思わないヤツはいないはずです。2番目で良いやって思うようなら、格闘技なんて辞めれば良いです。
達郎君がUFCと契約した時も悔しかったし、タイトル挑戦が決まった時も、やっぱり悔しかったです。だから達郎君の結果が出る前ですし、今も日本で最初のUFC世界チャンピオンを狙っています」
――正直な気持ちを話してくれて感謝しています。
「俺が一番にチャンピオンになりたい。チャンピオンになることが最大の目的だけど、一番最初になるということが自分の拘りだったので。ジョシュア・ヴァンに僕は負けて、ジョシュア・ヴァンが男でアジア人初のUFC世界チャンピオンになった。2000年代生まれ対決という部分でも負けたし。ヴァンには色々なモノを持っていかれたので……」
打撃を使わないのに日本のレスラーって、MMAに転向するとレスリングが弱くなる
――いつかリベンジとベルトを、と。そんななか1年2カ月振りの試合が迫ってきました。目の負傷もあり、ロングレイオフとなりましたが、表情から物言いから大人になりましたね。
「本当ですか(笑)」
――そしてこの間、MMAファイターとしてどこに一番力を入れて、どこが一番力がついたと思っていますか。
「気持ちの部分ですかね。無敗の時は、それこそ勝ち続けているから天狗じゃないですけど、自信があって。でも負けて……フライ級には達郎君だけでなく、堀口(恭司)さんも来ている。だから、あの時は勝つっていうメンタルだったのが、今は負けられないという気持ちになっています。本当に考えることが増えたので、気持ちの部分が変わったと思います。
それと戦い方としてはヘンリー・セフードの所に行って、レスラーがやるべきMMAを教わることができたのは大きかったです。レスラーのための打撃というのか、テイクダウンにつなげる打撃をやってきたことでMMA自体がガラッと変わったかと」
――打撃は綺麗でなくても、テイクダウンの圧が落ちない打撃をセフードは使っていました。
「それって気持ちの問題だと思うんです」
――それはどういうことですか。
「日本人は組みの人間が打撃を使って、上手くないと指摘されると『下手だから使わない方が良い』っていう風になっちゃうんだと思います。国籍でなく、人それぞれかもしれないですけど、向うのヤツは平気でぶん回して、自分のモノにしてしまっているんじゃないかと。
僕はそういう風には思いたくないけど、心のどこかで気にして打撃を使わなかったのかもって。そうしたら、その心のどこかにある気持ちが、体にも影響してくると思うんですよ。だから、打撃を使わないのに日本のレスラーって、MMAに転向するとレスリングが弱くなることが多いんですよ」
――なるほどです。
「やっぱり日本人って、言いたいことも言わない習慣もあるし。ストリックランドみたいに、なんでも口にするヤツって結果的に肝が据わっている。日本人は心のどこかで臆病になっているところはありますね……。粗を探されるのが嫌というか。外国人選手は、そういうところがないってわけじゃないけど、そこまで気にしていない感じがします」
――そこも踏まえて、テイクダウンのために使う打撃はどのように磨いてきましたか。
「今は内山高志さんを指導していた韓国人のホン(ドンシク)先生に見てもらっています。たまたま馬橋に住んでいて、柏まで週に3回来てくれています。コーチもガンガン言ってくれるし、だから僕も何でも尋ねることができるというか。
これも気持ちになってくるのですが、ホン先生からは『格闘技は喧嘩。お前にはそういう気持ちがないんだよ』って言われました。で、俺も『なくはないけど……その部分が表れていたなかったのかな』って。ミットでもガードが少し下がると、思い切り打ってきて……。そういうところも、先生の凄く良いところで」
――気が合う先生に指導されると、しっかりと身になりますか。
「そうですね、近距離のフックやボディもホン先生は凄く強くて、そういうところを吸収しています。もちろん、組んで勝てるなら得意なところで戦って勝てば良いです。それこそジョシュア・ヴァン戦では、得意なところで戦えなかった。それで武器がなくなってしまっていたので、そのためにボクシングをやりこんでいます」
――ではアギラーというファイターについては、どのような印象を持っていますか。
「かなり大振りしてきますけど、メキシコ人なのでボクシングは普通にできる。相当に振ってくるので、ワンパンで倒される可能性もあります。だから自分の強い部分――テイクダウンしてグラウンドで勝ちたいというのはあります。
寝技はギロチンは得意だけど、すぐに下になってしまう選手で。スムダーチーとの試合も、自分から3回ほど下になっていました。ストライカーに寝かされている時点で、組み技はそれほどかと。普通にやれば、寝技でコントロールしてぶん殴っていけるとは思います。でも、パンチはあるので警戒しないといけないです」
扇久保さんのようにトップでコツコツと殴り続けて勝ちにいけるのは凄い
――日本人選手内のフライ級の序列も、変えていく必要があります。と同時にUFCのフィニッシュ志向は一層高まっていますが。
「ボーナスもめっちゃ増えましたよね(笑)。フィニッシュしにいけ、アグレッシブに戦って言っているようなモノじゃないですか。パフォーマンス・オブ・ザ・ナイトに選ばれなくても、フィニッシュすれば2万5000ドルのボーナスがあって。
だからフィニッシュってなるんだろうけど、まずは確実に勝たないといけないと思います。一本も狙いますけど、これまでのように初回に絶対に一本を取るという風でなく、3R・15分あるなかで一本を極める。
達郎君が一本勝ちしている相手だけど、簡単に一本取れる相手ではないです。だからこそ、一つ一つ進めて勝ちたいです。勝ちに徹するなかで、一本を取れれば良いぐらいで」
――平良選手は極めまでのプロセスをしっかりと踏むフィニッシャーです。
「ハイ。やることも決まっていて、一つずつ積んでいます。でも自分は、行けるなと思うとそっちを仕掛けます。だから今のようにバックを取るよりも、扇久保さんのようにテイクダウン後に、相手にハーフやクローズドガードを取らせるのは凄いなって思います。あそこでキープできるのは、本当に凄いです。なんで、あんな風にできるのか。そっちの上手さが欲しいです。
僕はレスラーだったからか、組むと癖のようにバックを取りにいってしまうんですよ。でも扇久保さんはしっかりとテイクダウンをして、ガジャマトフに背中をつかせる。それからパス、マウントて殴る。あの戦い方は、バックを取るより疲れない。バックだと足の力は使うし、極めを狙うことで殴りも甘くなります。結果、全体的に削られてしまうんですよ。足がパンパンになってしまうし、心肺機能のスタミナでなく足や腕のスタミナがなくります」
――チアノーゼ状態ですね。そうなると心を折れたとか、言われがちですか。
「そうなんですよ(苦笑)。でも気持ちじゃない。腕や足がいうコトを聞かないんだって。スタンドに戻っても、バックを取り続けていることで影響も出ます。そうやって考えると、扇久保さんのようにトップでコツコツと殴り続けて勝ちにいけるのは凄いです」
――一本を連発していた鶴屋選手にとって逆張りのようなスタイルなわけですね。
「あれができるのは落ち着いているからで、僕はもっと興奮してしまいます。扇久保さんは闘志を抑えて戦うことができて、それが強さで。肝が据わっていると思います」
――そこも踏まえて、アギラー戦は15分の間に一本を取るということなのでしょうか。
「UFCになってから気持ち良い勝ち方をしていないから、終わらせたいというのはあります。本当の自分を出せていない。俺はもっと強いはずなのに、UFCという場で相手を強く見過ぎてしまう面がどこかにあったのかって。だから、普通にいつもの自分を出したいです。そのためには落ち着いて戦うことが必要だと思っています」
■視聴方法(予定)
5月30日(土・日本時間)
午後5時00分~UFC FIGHT PASS
午後4時30分~U-NEXT
■UFN277対戦カード
<バンタム級/5分5R>
ソン・ヤードン(中国)
デイヴィソン・フィゲイレド(ブラジル)
<ライトヘビー級/5分3R>
チャン・ミンヤン(中国)
アロンゾ・メニフィールド(米国)
<ヘビー級/5分3R>
セルゲイ・パブロヴィッチ(ロシア)
タリソン・テイシェイラ(ブラジル)
<バンタム級/5分3R>
朝倉海(日本)
キャメロン・スマーザーマン(米国)
<ウェルター級/5分3R>
ジェイク・マシューズ(豪州)
カールストン・ハリス(ギアナ)
<フライ級/5分3R>
アレックス・ペレス(米国)
スムダーチー(中国)
<ミドル級/5分3R>
ルイス・フィリッピ・ジアス(ブラジル)
イ・イサク(中国)
<ウェルター級/5分3R>
ティン・ワン(中国)
ジョゼ・エンヒッキ(ブラジル)
<バンタム級/5分3R>
アオリーチーラン(中国)
コディ・ハッドン(豪州)
<フライ級/5分3R>
鶴屋怜(日本)
ヘスウ・アギラー(メキシコ)
<女子ストロー級/5分3R>
アンジェラ・ヒル(米国)
シィォン・ヂィンナン(中国)
<フェザー級/5分3R>
チュウ・カンチエ(中国)
ロドリゴ・ヴェラ(ペルー)
<女子ストロー級/5分3R>
ローマ・ルックンブンミー(タイ)
ジャケリニ・アモリン(ブラジル)



















