【UFC328】松根良太が語る平良達郎、世界戦延期からの1カ月間「より戦略を煮詰めて、鮮明になってきた」
【写真】日の丸の寄せ書きとともに、世界の挑戦に挑む(C)RYOTA MATSUNE
9日(土・現地時間)、米国ニュージャージー州ニューアークのプルデンシャル・センターで開催されるUFC328で、平良達郎が世界フライ級王者ジョシュア・ヴァンに挑戦する。この一戦について平良の師である松根良太THE BALCBELT JAPAN代表に訊いた。
Text by Shojiro Kameike
昨年12月、平良は元世界王者ブランドン・モレノに完勝し、誰もが『遂に平良が世界王座挑戦へ』と思ったはずだ。同じ日にパントージャからベルトを奪取したジョシュア・ヴァンに挑戦——と期待が集まりながら、なかなか正式発表はなかった。ようやく4月11日(土・現地時間)にUFC327でタイトルマッチが決定したが、試合1週間前に延期が発表される。こうした経緯のなかで平良、そして松根を含めたチームは如何に世界王座に挑むのか。松根にチームの2026年と世界タイトルマッチ、そして平良達郎の現状について語ってもらった。
僕が電話すると、気丈な感じで『大丈夫です。問題ないです』と。逞しくなったな、と思いました
――3月30日に後楽園ホールでLemino修斗があり、そのあと一度渡米。帰国して4月19日にLemino修斗沖縄大会が行われてから再び米国デンバー入り……大変なスケジュールですね(※取材は5月1日に行われた)。
「達郎は3月初めから渡米していて、自分も3月18日から沖縄、東京、そして米国と行ったり来たりで。なかなか沖縄でも指導できていない状態です」
――Lemino修斗ではTHE BALCBELT JAPAN沖縄から、どんどん選手が出てきている。それだけ沖縄のMMAも層が厚くなってきたのではないでしょうか。
「なので、もっともっと指導にも力を入れたいです。でもそのトップを走っている平良達郎がUFCの頂点に挑むわけですから、そこに注力しなければいけないと思っています」
――その平良選手の世界王座挑戦ですが、平良選手がモレノに勝利した時、誰もが「次はタイトルマッチだろう」と考え、その相手は多くがパントージャを想定していたはずです。しかし同じ大会でヴァンがベルトを巻いた時、チーム内はどのような反応だったのですか。
「僕もそうですし、達郎も岡田もパントージャが勝つことを想定していました。防衛し続けているパントージャと戦いたい、という達郎の意志もありました。だからヴァンがベルトを巻いたことに関しては、本当に驚きでしたね。
ヴァンとは一度、2年前ぐらいに試合が決まっていて(※2024年6月、対戦相手がティム・エリオット、さらにジョシュア・ヴァンからアレックス・ペレスに変更されていた)。それもあり、わずかな期間ではあるけれどもヴァン戦の想定もしていたんです。もちろんヴァンは強い。ただ、パントージャよりもヴァンのほうが達郎にとっては相性が良いんじゃないかな、とは思いました」
――世界王座挑戦が決まったものの、1カ月延期となりました。大一番の延期を選手に伝える時、松根さんとしてはどのような心境だったのだろうか……と。
「いやぁ、それはもう……選手にどう伝えて、いかにポジティブに考えていくかですよね。選手がズーンと落ち込んでしまってはダメなので。
以前アルバジが欠場になった時(※昨年8月にアミール・アルバジと対戦予定だったが、試合直前にアルバジの欠場とパク・ヒョンソンへの対戦相手変更が発表された)は、最後のスパーリングの直前にその話が来ました。その時はまだ達郎が連絡を見ていなくて、スパーリングが終わったあと『達郎、アルバジが怪我したらしい』と伝えたんですよね。そうしたら僕の目の前で達郎も落ち込んで……」
――2024年10月、ブランドン・ロイヴァルにキャリア初黒星を喫してからの再起戦とあって、ただでさえ気持ちも張りつめているところに直前の対戦相手変更。あの時はさすがに平良選手もナーバスになっていたと聞きます。
「でもそういう経験をしてきて今は26歳になり、何があっても受け止められるようになってきました。
イリディアムのトップであるジェイソン・ハウス、僕、岡田遼、そして達郎も入っているグループがあり毎回、試合オファーのそのグループに届きます。だからジェイソンからの連絡は自分と岡田、達郎の全員が同時に知ります。そしてすぐ自分も達郎と『オファーが来たな。どうする?』と話し合う。今回ジェイソンから連絡が来たのは、自分が飛行機に乗る直前で、達郎は練習している時間でした。すぐに僕から達郎にもメッセージを送って。
僕が飛行機を降りてから電話すると、気丈な感じで『大丈夫です。問題ないです』と。逞しくなったな、と思いました」
相手は5分5R、100パーセントで動けるほど万全の状態で来ることを想定し、自分自身を最高の状態に仕上げるだけ
――イリディアムから連絡が来た時、最初から試合は延期になるという話だったのですか。
「まずジェイソンから『ヴァンが怪我をした』という連絡が来て、そこから1週間ぐらい中止か延期か、どうなるか分からない状態でした。たとえば夏ぐらいの延期なのか。あるいは他の選手と対戦するのか等いろんなオプションがあって。こちらの希望としては、1カ月後のUFC328で試合できないかなと伝えていて、それが叶った形です。
我々も3月30日の後楽園ホールで、いろんな方から『遂に世界タイトルマッチですね。応援しています!』と声をかけていただきました。でもまだ『ヴァンが怪我をした』とは言えないし、実際のところ中止なのか延期なのかも決まっていない状態で。だから何がどうともコメントできなかったことに関しては、お世話になっている皆さんに対し心苦しい部分はありました。でも一番苦しかったのは達郎だと思うので」
――一方、4月4日(現地時間)のメタAPEX大会で延期が発表された際、ヴァンがチームメイトのミットを受ける映像も拡散されました。
「ミットは受けているし、セコンドに就いていた試合ではキャットウォークからジャンプして降りているしで『どこを怪我したのだろうか』と思いました。もともと多少の怪我なら試合に出る選手だという認識もあって。だから怪我をしたと聞いた瞬間『それほど大きな怪我なのか』とも思いつつ……。
UFCは体制がしっかりしているので、ヴァンがどこを負傷したのか正確なことは伝わってきません。でも、こちらも怪我を加味して戦うわけではない。達郎本人も『相手がどこを怪我している』と意識して練習し、戦うことはないですからね。怪我をしている箇所を突く、という作戦も全くない。相手は5分5R、100パーセントで動けるほど万全の状態で来ることを想定し、自分自身を最高の状態に仕上げるだけですから」
――改めて延期が正式決定した時点で、チームとして予定に大きな変更点はありましたか。
「4月11日に向けて一度ピークをつくっていて、怪我もなく体調も万全の状態でした。その状態でまた1カ月を過ごすとなると、不具合も起こりかねないわけですね。選手には絶対、コンディションの波がありますから。そのため日本に帰ることはなく、また1カ月間米国で過ごす。その前に1週間ぐらい休むという話になりました。食べたいものを食べ、練習の強度も落とし、少し気を休める生活を送る。
ただ、こちらとしては1週間ぐらい休ませたかったんですけど、本人はタイトルマッチということで気持ちも入っていて。完全に休んだのは4日ぐらいですかね。そこからまた練習で上げていって今ようやく、試合前の練習が終わろうとしているところです。昨日最後のスパーリングをして、とても良い状態で来ています」
達郎はまだ26歳で、成長段階にあります。1年前や半年前より、今が一番強いです
――MMAPLANETでは今回の世界王座挑戦に向け、様々な選手や関係者から平良達郎選手についてのコメントやインタビューを掲載しています。そのなかで扇久保選手の解説&分析は読みましたか。
「読みました、読みました。扇久保も……ねぇ、本当に(苦笑)」
――「平良選手は今まで8割ぐらいフィジカルで勝ってきている選手だと思う」と。
「平良達郎の強さの秘訣はフィジカルであり、あの体格や骨格だとよく言われます。でも達郎がウチに入会してきた時は15歳で、まだ50キロぐらいしかなかったんですよ。特にパワフルでもなく、センスが飛び抜けていたわけでもない。普通の少年でした。達郎が瞬発力や技術で勝った時に、フィジカルが強く見えるかもしれない。でもジムの仲間や出稽古に来てくれた人たちも、達郎と練習して『あぁフィジカルが強かった!』と思う人はいないはずです。それだけスパーリングでも柔らかい動きができますから」
――ただ、同じ松根さんの指導を受けた扇久保選手だからこそ言えることでもあったかと思います。平良選手のフィジカルが、松根さんの厳しい指導によって培われた内なるものであると。
「そうですね。体格面でいえば、身長170センチで肩幅もリーチもある。その体格は世界で戦ううえで恵まれたものかもしれません。かといって扇久保が今UFCで戦っていたら、身長が低いから通用しない――とはなっていないと思うんです。僕は彼がUFCに出ていたらトップ5に入ると思っていますし。高い技術と、強い気持ち。それは扇久保も同じですよね」
――なるほど。世界戦が延期されて1カ月間。平良選手はどのような点が伸びてきたか教えてください。
「より戦略を煮詰めて、鮮明になってきた1カ月間でしたね。達郎も今日の調整練習が終わったあと『この期間があって良かった』と言っていました。もちろん何が正解であったかは分かりません。しかし延期になったことをポジティブに変換できていると思います。
何より達郎はまだ26歳で、成長段階にあります。常に強くなるスピードが一定で、伸び続けている。1年前や半年前より、今が一番強いです」
■視聴方法(予定)
5月10日(日・日本時間)
午前6時00分~UFC FIGHT PASS
午前5時30分~U-NEXT
■UFC328対戦カード
<UFC世界ミドル級選手権試合/5分5R>
[王者]カムザット・チマエフ(UAE)
[挑戦者]ショーン・ストリックランド(米国)
<UFC世界フライ級選手権試合/5分5R>
[王者]ジョシュア・ヴァン(米国)
[挑戦者]平良達郎(日本)
<ヘビー級/5分3R>
アレキサンダー・ヴォルコフ(ロシア)
ワルド・コルテスアコスタ(ドミニカ)
<ライト級/5分3R>
ドリュー・ドパー(米国)
マイケル・ジョンソン(米国)
<ウェルター級/5分3R>
ショーン・ブレディ(米国)
ジョアキン・バックリー(米国)
<ライト級/5分3R>
キング・グリーン(米国)
ジャレミー・スティーブンス(米国)
<ミドル級/5分3R>
アテバ・グーティエ(カメルーン)
オジー・ディアス(米国)
<ウェルター級/5分3R>
ヨエル・アルバレス(スペイン)
ヤーソラフ・アモソフ(ウクライナ)
<ライト級/5分3R>
グラント・ドーソン(米国)
マテウス・レンベツキ(ポーランド)
<ライト級/5分3R>
ジム・ミラー(米国)
ジャレッド・ゴードン(米国)
<ミドル級/5分3R>
ローマン・コピロフ(ロシア)
マルコ・トゥーリオ(ブラジル)
<フェザー級/5分3R>
パット・サバティーニ(米国)
ウィリアム・ゴミス(フランス)
<ミドル級/5分3R>
ベイサングル・ススルカエフ(ロシア)
ジジョルデン・サントス(ブラジル)
<フライ級/5分3R>
クレイトン・カーペンター(米国)
ホセ・オチョア(ペルー)



















