【ADCC WORLDS OPEN】オール一本で65キロ級制した米倉、次なる目標=「本戦出場」を前に控える大舞台
【写真】ADCC Worlds Open 65キロ級優勝の米倉。渡豪前も大阪、岡山、神戸でセミナーや特別クラスを精力的にこなし、CJIのTシャツ姿でインタビューに応じてくれた (C)SATOSHI NARITA
22日(日)東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto2024#07にて、山上幹臣がストロー級で黒部和沙と対戦する。
text by Satoshi Narita
ADCC世界大会が行われる前々日の8月15日(木・現地時間)には、世界大会と同じラスベガスのT-モバイルアリーナを会場に、ADCC USAが主催するWorlds Open(ワールズオープン)が開催された。
確認できた限り日本からは5名が参戦。アドバンスド-65キロ級には米倉大貴、竹内稔、比家秀晃が名を連ね、共に一本勝利を重ねた米倉と竹内が決勝で相まみえ、米倉が一本勝ちし金メダルを獲得。昨年11月のアジア&オセアニアトライアル準決勝で竹内にアナコンダチョークで一本負けを喫していたが、今回の勝利で借りを返した。
1200人が参戦し、12面で進行された本大会は、世界大会と同時期開催で注目度も高く、世界各地で毎週のように実施されているオープン大会の中で最難関のトーナメントだろう。この大会に照準を合わせて1カ月間、テキサス州オースティンのB-TEAMで強化合宿を行い、満を持して頂点に挑んだ米倉に、大会のこと、今後のことを訊いた。
「11日から30日までメルボルンとパースに行きます。で、30日から10月6日までインドネシアのバリ島で、僕をスポンサーしてくれているAL LEONEのキャンプに参加します」
──15日には広島でADCC広島オープンが開催されます。米倉選手もエントリーされていましたが?
「キャンセルします。ワールドオープンの結果次第で出ようかなと思っていたんですけど、優勝できたので、豪州のプロマッチに集中しようと。豪州に行く目的は、練習だけじゃないんです。細かく言うと、26日までラクラン(・ジャイルス)のAbsolute MMAで練習して、それからパースに移動して28日に試合です。『BATTLEGROUND』というイベントのコメインでグラップリングの試合が組まれていて。相手は豪州に住んでいるブラジル人で、それなりに結果を出しています。トライアルにはまだ出てないけど、シドニーオープンは5戦5勝、全部一本勝ちですね。スタイル的にはルオトロっぽくてよく動く、野性的です」
──試合はいつ頃から決まっていたのですか。
「ラスベガスに行く前からです。去年のAIGAに出てから世界で試合に出られる機会が増えて、ようやく海外のプロマッチに呼んでもらえるようになりました」
──ラスベガスのワールズオープンは4試合すべて一本勝ちで優勝、どの試合もほぼ秒殺という圧巻の試合内容でした。
「それ(秒殺)は狙っていました。トライアルの経験もあったから、トーナメントで長丁場に持っていきたくなかったんですよね。やっぱり1、2回戦は、足関で早く極められるなら極めたい。レスの攻防だと3、4戦目で体力がなくなって、一本勝ちで勝ち上がってくるような相手に体力負けしてしまう。だから、なるべく足関節でガンガン攻めて取り切って、体力を温存した状態で準決勝、決勝に行くという戦略でした」
──1、2回戦は10th Planetの選手で、相手は相手で足関節に長けているのかとも思いましたが。
「そうですね。ただ、僕が長けている部分はパスと足関節なんです。そこで勝負しないと、この世界では勝てない。自信を持っている武器でどう戦うのか、足関の攻防で負けない練習をB-TEAMのキャンプでもやってきました。実際、組む中でわかることもあって、2回戦の選手は引き込んでわかったんですけどレスラータイプで、徹底的に足を触らせない。それなら足関で挑んでみようととことん追いかけて、ただ足関を狙うだけじゃなくて、嫌がって前かがみになったら腕を狙うとか、足だけにこだわらず常に圧をかけ続けることを意識しました」
──結果、1回戦は開始11秒でヒールフック、2回戦はフットロックで1分51秒一本勝ちでした。
「キャンプでテイラー・ピアマンという選手から学んだフットロックで、それで極められてうれしかったですね(笑)」
──準決勝の相手はプエルトリコの選手で、オール一本勝利で勝ち上がってきました。
「ちょろっと見ていたけどバックを取る技術が長けていましたね。ジョセフ(・チェン)に試合前に言われたんです。『相手は上を取ったら圧をかけて亀にさせてバックを狙ってくるから気をつけろ』と。でも、向こうも僕の試合を見ていたからか、引き込んできてくれたので、パスで勝負しようと。で、パスに意識が行くあまり足関の警戒が弱くなっていたので、加点時間帯でもないし、僕から下になって足を狙いました」
そして竹内稔選手との決勝は、2分42秒、RNCで勝利でした。
「周りにすごい言われていたんですよね。『ダースのエスケープを練習したほうがいい』とか『稔さんのほうが強いから』って……。
僕の中の言い訳としては、トライアルで稔さんに負けたのはトライアルの体力配分を知らなかったから。3回戦でカザフスタンのタフな選手と当たって疲れ切ってしまい、インターバルも短いところで稔さん(との準決勝)だったじゃないですか。
オーバータイムになったら負けると思ってガムシャラにいってしまって、そしたら頭を外に出されて形をつくられて、逃げる体力もなくやられてしまった。それが僕の中にずっとあって……。だから、技術以外の部分をどう調整していくかもキャンプの課題で、今回は体力が切れてもしっかり出し切る練習をしてきました」
──トーナメントを戦い切る準備は万全だった、と。キャンプの様子をSNSで拝見していましたが、キャンプ終盤は体力的にも精神的にもかなりキツそうでした。
「あれは食が合わなくて……(苦笑)。食べても食べても入っている気がしなくて、それで激しい練習じゃないですか。激しい練習をやる曜日は決まっていて、他の曜日は休みだったり、フロースパーとかミディアムスパーという軽めの練習なんですけど、強度が高い日はとことん高い。かといって休むわけにはいかない雰囲気があるんですよね。
どんなに疲れていても昼だけは行く。で、しっかりしごかれました。今回のキャンプはディマ(・ムロバンニ)コーチが主導で練習を進行してくれて、スパーのペアも同じ階級で合わせてくれてたんです。ジョセフなら(岩本)健汰やジェイロドで、僕は66キロに出場する選手と組んでいました。ヨーロッパトライアルで優勝したロシアのゲルベグ・イブラギモフ、オーウェン・ジョーンズ、シュウ(・フアチン)、イーサン(・クレリンステン)の中に入れてもらって」
──素晴らしく充実した環境ですね。
「毎日成長を実感していました。特にオーウェンとはよくペアを組んでもらっていたんですけど、止まることなく常に技をかけ合って、練習で初めて吐きましたよ(笑)。彼も苦しがっていたけど、僕はそれ以上でした。15分ノンストップのスパーをインターバルなしで続けて、多いときは25分ノンストップで。でも、その練習をしていたから、今回のオープンも絶対的自信をもって挑めました。これだけやってきて簡単に負けるわけはないと。会場にジョセフやオーウェンが来てくれて、こんな有能なセコンドが付いてくれるんだからという安心感もありましたし」
──仲間たちに勝利を祝われて、米倉選手が感極まっていたのも印象に残っています。ところで、CJIやADCCの本戦は会場で観戦しましたか。
「CJIはセコンドパスで入らせてもらって、ADCCは決勝だけ見に行きました。CJIはものすごい大きなイベントだったけど、自分の階級に近いものがないし、ADCCの66キロも適正ではないけれど、近い階級として、そこを目指したい、あの舞台に立ちたいと改めて思いましたね」
──とはいえ、目下の照準は月末のプロマッチということですね。
「あとは10月末のパンパシです。去年はノーギでダブルゴールドだったんですけど、今年も出たいと思っていて。柔術もタリソン(・ソアレス)が出るならもう一回やりたいです。前回は決勝で足を鳴らしたんですけど、それで勝ったと思って緩めてしまったら、タップもなくて続行になって……。あれを思い切り極めていたらという後悔があるし、柔術でもこれだけ通じるんだとも思ったので、またやれる機会があればいいなって」
──今もドーギを着た練習はしているのですか。
「ハイ、完全に止めたわけではないです。クラスもあるし、スパーもしています。それに、追々発表されると思いますが、パンパシが終わったら12月のAIGAのチーム戦に出場できるかもしれない。去年もこれで僕の人生がよくなっていきましたから、またチャンスをもらえたことは大きい。手放したくないですね。しかも、今回は60キロで適正体重なんです。前回は65キロで2勝1敗だったので、60キロでどこまで通用するか、どこまで自分が成長できているのかを確かめたいと思います」