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【UFC303】「ATTで揉まれてきたい」(鶴屋怜)。UFC初勝利、鶴屋怜&鶴屋浩、親子対談─02─

【写真】勝利後の鶴屋怜陣営。プロレスラーの中邑真輔さんは、和術慧舟會在籍時代に鶴屋浩氏が主催したアマ修斗・松戸フリーファイトに出場経験があるそうだ(C)Zuffa/UFC

6月29日(土・現地時間)、米国ネヴァダ州ラスベガスのT-モバイル・アリーナで開催されたUFC303で、UFC初勝利を挙げた鶴屋怜と父・鶴屋浩の対談後編。
Text by Manabu Takashima

3-0の判定勝ち、打撃の攻防がなかったことで一部のファンから厳しい声が挙がったデビュー戦だが、UFCで勝って当然というデビュー戦を迎えた日本人ファイターが、一体どれだけいただろうか。一本勝ちできなかったことで、15分を戦いミスを洗い出すこともできた。ボーナスを貰えず、インパクトを残すには至らなかったかもしれない。それでも、いやそれ故に最高の経験ができたことになる。

反省すべき点をみつけ、これからに向けて鶴屋親子は何を想うのか。

<鶴屋怜&鶴屋浩対談Part.01はコチラから>


「打撃を当てられたら、それはダメなことになります」(怜)

──一本勝ちのプランが崩れた。その時に判定勝ちなら30-27も29-28も同じだという判断もされましたか。

 それは……結果論として、なってしまった。そういう風に捉えています。本当は攻め続けたかったけど、そうなってしまったからには勝つのが大前提なので。負けないためには最終回を落としても、リスクを避けた形です。

向うの一発逆転があるとすれば打撃。一本を取られることはない。なら、離れないでいようと。自分ではあのままで勝てるという自信があったので。俺がまるでダメだったようにいう人もいますけど、パンチで危ない場面もなくて、危険なサブミッションもなかった。抑えたときに下からエルボーが一発入ったけど、それだけで。効いたパンチは一発もなかったです。

投げと無双で失敗はしました。でも、何ももらっていない。それでも試合内容が良くないと言われるのであれば、勝つことに拘ってしまった……ということになります。

──UFC初戦、勝ちに拘り勝つことができた。ぶっちゃけていうとネガティブなことを指摘される筋合いは全くないかと思います。

 同時に今回の相手だから、ミスをしても勝てました。2Rを取っていても1度のミスで逆転される相手がUFCには、当然います。5分間で2つのミスをおかしたのだから、今後は同じミスをしないことが大切になってきます。

まぁ、僕は彼の父親でもあるので今回の勝利に「良かったよ。最高だったよ」とは言えないです。そして他の選手と同じように良かった点と悪かった点をあぶりだします。それが初回の足関節と最終回のスープレックス、そして無双ですね。

あの失敗をパントージャ相手にしてしまうと、やられます。そのミスがあって、今後の課題も見えた。その上で勝ったから、今回の試合は「良し」と捉えています。

──昨日、平良選手と松根さんの対談もMMAPLANETでさせていただいたのですが、松根さんは「鶴屋さんは父親だから怜に厳しいだけで、本当に良く戦っていました。怜は強くて、しっかりと戦っていた」と言われていました。

 有難いです。

──ところで平良選手と鶴屋選手、この世に生を受けた順番がありますよね?

 ハイ……。

 フフフフフ。

 順番なんですけど、俺は日本人で最初のUFCチャンピオンになりたくて、ここまで生きてきたので。

──最初のUFCチャンピオンに拘ると焦りが生じないでしょうか。最初でなくても、UFCのチャンピオンになるという目標設定でないと。そのために一本勝ちして、インパクトを残す必要があるという考え方だと、焦って落とし穴が見えないことがありそうで。

 焦る……。焦るというか……。

 一本を取るのは、ここまで続けてきたスタイルですし(苦笑)。自分から攻めるハイスパートを続けるのが、彼のスタイルなので。見ている人が楽しめる試合になって良いかとは考えています。

──もちろん、そうです。と同時にツイスターに拘り、バックからRNCに移行しなかったことがあった。一本への拘りとインパクトを残す拘りが合致しない局面が出てくると──ということなのです。

 それはそうですね……。それは、そうだ。

 俺が攻められていたり、拮抗した勝負だったらRNCを選択していたと思います。でも一方的に攻めていたし、取れそうだったから拘ったわけで。ただ、その考えこそが相手を舐めていた証拠です。ツイスターで取れないのなら、バックでチョークに切り替えるべきでした。そこは反省しています。

──ヘルナンデスが、最後の最後の局面に対処ができる選手だったというのも大きいです。同時にUFCで戦うには打撃が必要だという指摘もあります。個人的には勝つために必要で。UFCだから、打撃が必要というのはまた違うなぁという風に感じてはいるのですが……。

 ハイ。打撃を使って、負けでもしょうがないですからね。最適だと思う攻撃をする。彼は打撃の練習をしていないわけでもなくて、常にジムで打撃の練習を続けています。

 絶対に打撃戦が必要になる試合があることは分かっています。今回の試合ではテイクダウンをするために打撃を使いました。打撃を打ち合わないとダメなんですかね? 何を指摘して、ダメなのかは分からないです……。俺が打撃を当てられたら、それはダメなことになりますけど。

 相手の打撃を受けずに、組んでいく。勝つための技の選択ですからね。

──ハイ。テイクダウン狙いを切られ、打撃勝負に持ち込まれることはなかったわけですし。それこそが、現状の怜選手にとってされたくない試合になると思います。

 そうですね。そういう選手が、フライ級でいるのか……。レスリング・ボクサーと対戦になった時、例えばモカエフはまぁまぁレスリングを使いますね。

 モカエフは打撃も思い切りがあります。レスリングでやられることはないけど、打撃の方は警戒が必要だと思います。

 だから怜よりも、レスリングが強い選手が出てきた場合ですよね。彼が打撃を出す時というのは。

──MMAでは打撃はレスリングや柔術よりも、実力差を跳ね返すことができるという風にも感じます。

 でも、MMAだからレスリング力を跳ね返すことができると思います。俺は(中村)倫也さん、(太田)忍さんとレスリングをやると、天と地ほどの差があります。でもMMAレスリングだとそこまでじゃない。

──スミマセン、言葉が足りませんでした。MMAにおけるレスリングの攻防、柔術での攻防の方がMMAでの打撃戦よりも、そこの部分で力のある方が確実に勝てるということでした。

鶴屋 つまり怜がテイクダウン防御力が高くて、打撃を入れることができる選手と戦ったらということですよね。現状、フライ級ではそういうタイプは見当たらないですが、これから出てくる可能性はいくらでもありますしね。

──そういう風に、チームで意識ができれば良いことで。別にSNSで何か言われて、軸を乱す必要はない。

 とりあえず勝てた。それが一番で。判定勝ちだったけど、今回の経験を生かして次はしっかりと一本勝ちをしたいです。こんなもんじゃないという気持ちではいます(笑)。

──APEXでなくTモバイル・アリーナで戦ったファイトウィークは、どのような経験になりました。

 デカい会場で戦うことは、一つの夢でした。やっとUFCで戦えたこともあるし、過去一で興奮して。そして嬉しかったです。

そうですね、楽しかったといえば楽しかったです!! 計量とか、凄い人で。アレを経験できて良かったと思います。

デミアン・マイアと。実は今回の取材をしたファミリーレストランは、父・浩氏とジャカレ・ソウザ、マリオ・ヘイス、マイアが食事をしたことがある思い出の場所でもあった

 ただラスベガスの大会のファンって、PPVまで会場に来ない人が多いですよ。あれは驚きました。

それでも、これまでにない雰囲気で試合をしていました。怜はお客さんが多くて盛り上がっていると、より乗って来るタイプだと思います(笑)。今回の試合でも、入場の時から凄くリラックスしていて。

「北の湖のように「負けろっ!!」って思われるぐらい強くなれば良い」(浩)

──コールの時の表情など、自信が漲っていました。アンチからすると生意気に見えるでしょう(笑)。UFCで生意気に見える日本人も頼もしい限りですが。

 アハハハハハ。「負けろっ」って思っているんでしょうね(笑)。まぁ、アンチも増えていますね。

──本当に平良選手と対照的です。

 北の湖のように「負けろっ!!」って思われるぐらい強くなれば良いんだよ。

──親父さん……例えが、古くないですか(笑)。

 アハハハハ。まぁ、Xとかで色々なことを書かれていますけど、セフードが良く言ってくれていたので。それで十分です(笑)。

──平良選手の活躍で、怜選手のUFCのデビュー戦を視るようになったライト層までその認知度が広まったということではないでしょうか。

 中学生か高校生が、何でも自分の意見を発信するという文化になりましたしね。まぁ、UFCで勝つことを当たり前に捉えてもらっているなら、それも期待値の高さだと受け止めて……そういう声も含めて、本来の予定よりも早くUFCデビュー戦を受けて、僕は良かったと思えています。5分3Rを戦って、何が良くないのかも怜自身が理解して、このままではいけないという気持ちになっている。すぐにATTに行きたいと言ってきました。

──そこで国内ではなくて、ATTにいう選択になるのは?

 もちろん日本でも良い練習はできます。ただATTでは世界のトップが揃っていて、練習に向かう時にも自分が緊張しているのが分かるんです。それは日本ではない、寝起きでそのままジムにいっても練習できるぐらいの感覚になってしまっていました。

それがATTだと1時間前に起きて、心の準備をする必要があった。スパーリングが5Rあると、全て世界のトップが来るんです。あの空気に慣れてしまえば、どこにいっても自分の力を出すことができる。全然、怖くないはずです。だからATTで、また練習をしたいんです。

堀口選手とやって、次がパントージャ。アドリアーノ・モライシュ、ハニ・ヤヒーラ、ダニー・サバテロが順々に前の目にいる。一回休もうと思うと、コーチから「レイ、休むな」って戻されて(笑)。で、アマチュアの選手にやろうって言われてスパーリングの相手をしたら、「ダメだ。こっちに来い」ってトップの方に連れていかれる(笑)。

──最高じゃないですか。そこにハニの名前が聞かれるのも嬉しいです。

 ハニ・ヤヒーラには寝技でボコられました。最初はヤヒーラと分からなくて、「このおじさん、誰だ?」って思っていたんです。

──ハハハハハ。渋くなり過ぎましたしね(笑)。

 でも、もう組んだらボコられて。やっぱり、良い経験になりましたよ。

 こういう話を聞くと、強くなれるなと思いますよね。僕らも負けない環境を創ろうと努力をしていますが、今ある最高の環境で練習をすることは大切です。ATTに行って、怜も一回り、二回りと大きくなったと感じています。

──パントージャが目標と公言していても、ATTやパントージャ自身は受け入れてくれるのですか。

 パントージャはPIで会った時も凄くフレンドリーでしたし、水抜き中もずっと話しかけられました(笑)。コーチたちも来てくれて『痩せたから分からなかったよ』って言う感じで。

──中村倫也選手も7月中にATTに行くという話も聞きましたが、怜選手の方は?

 気持ち的には8月中には行きたいですけど、次の試合がいつになるのかも考えて、1カ月から2カ月ほどATTに行こうと思います。とりあえず、揉まれて来たいです。

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