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【UFC303】オクタゴン初勝利。鶴屋怜&鶴屋浩、親子対談─01─「思った以上の技術力」(怜)

【写真】勝って兜の緒を締めている──そんな鶴屋親子だった (C)MMAPLANET

6月29日(土・現地時間)、米国ネヴァダ州ラスベガスのT-モバイル・アリーナで開催されたUFC303で、UFC初勝利を挙げた鶴屋怜。
Text by Manabu Takashima

カーロス・ヘルナンデスとの一戦はジャッジ3者とも29-28をつける快勝だった。と同時に平良達郎が一本を極めている相手だっただけに、判定勝ち──に加えて最終回を取られたということでファンの反応は様々だった。

とはいえUFC初戦をしっかりと勝利できたことは、今後を考えると大きい。それゆえにフィニッシュ勝利をデフォルトと考えていた怜自身、そして陣営のあり方も記念すべきUFC初勝利を父・浩氏とともに尋ねた。


「ツイスターに固執してしまいました」(怜)

──UFC初勝利、おめでとうございます。

 ありがとうございます。

──試合内容、試合に関するファンのリアクション、様々な反応があったかと思いますが、何があろうがUFCデビュー戦で勝った。おめでとうございます以外の言葉は、それ以下のモノでしかないです。

 とりあえず初戦は勝たないといけない。勝たないと意味はないので、そこは嬉しいです。でも達郎君がフィニッシュしている相手だし、自分もフィニッシュをしないといけないという気持ちが強過ぎたかと思います。そうですね……余裕があり過ぎました。

──余裕があり過ぎた?

 ハイ。試合中でなく、試合前ですね。勝てる相手だから、どうフィニッシュしようかという想いが強過ぎて。それが空回りをしてしまったような気がします。打撃が上手い選手だという感覚でいたのが、いざ試合が始まると寝技が巧かったです。やじろべぇスイープとか使っていて。ああいう動きって、UFCでも余り見られないじゃないですか。

──やじろべぇスイープ……というのが、分からないですが……(笑)。ヘルナンデスはXガードからやハーフ、ディープハーフからスイープを仕掛けていました。

 防御が巧かったですね。こいつは小さい頃からやってきて、当時の技の名前のままなんです。今時の若い選手はやじろべぇ・スイープなんて言わないですよね。

──確かに(笑)。それにしてもヘルナンデスは、防御力が高かったです。

 全く寝技がゼロの選手だと思っていたのが、逆に寝技の選手かと思うぐらい巧かったです。対策もされていました。ツイスターに関しても、入ろうとしうた瞬間に相手のセコンドが、凄く指示をだしてきて。そこでワキを取られなくなりました。「あぁ研究されているな」と思いましたね。ただ、そこからバックを狙えば良かったのですが、僕自身もツイスターばかり狙ってしまって……。いつもなら冷静にバックに回っているのに、なぜかツイスターに固執してしまいました。

──RNCの方がフィニッシュできるイメージがありますが、それはツイスターより仕掛けが多いからで。相当数、防御されています。逆にツイスターの方が極まるという印象もありますしね。

 それにツイスターは過去にUFCでも3度ほどしか極めた選手がいなくて。やっぱりインパクトを残せるというのがあって、試合前からもそういう話もしちゃっていました。そうなるとボーナスはあるよねとか……。そこでツイスター狙いに頭が固まってしまっていましたね。

──とはいえセコンドがツイスターの防御を指示したとしても、実行できるのはヘルナンデスの防御力であるということで。その防御力がつくだけ、トラックポジションからの攻防ができるパートナーがいるということかと。

怜 いやぁ、足を抜いて来るとは……あの反応は、ちょっと驚きました。腕が取れてから、足を抜かれるっていうのは。しかもクロスするところに入れてきて。あの反応をしてきた人は、練習でもほとんどいなかったです。想像以上に柔術のスキルが高い選手でした。

──それがUFCということでしょうか。

 あの相手に判定かと思われたかもしれないです。でも、思った以上の技術力で……やりにくいところがありました。と同時に、そうじゃないという風に舐めていたところは反省しないといけないです。

──それはきっと怜選手だけではないと思います。例えば今回、MMAPLANETとでの試合前のインタビューは亀池氏にお願いしたのですが、彼もそうだし、自分もそう。勝てる。一本が取れる相手という風に見ていたことは間違いないです。恐らくは他の媒体も、中継スタッフにもその空気があったかと思います。

 正直を言えば、僕らサイドも舐めていたところがあります。僕も対戦相手の試合映像を何度も繰り返しチェックしました。そして「この相手だったら、問題ない。一本を取りに行けるぞ」という風に話してしまっていました。今の怜の力なら2Rで取れるという確信があったんです。つまり僕自身、試合に向けて緊張感が欠けていたかもしれないです。

「失速したという意見も聞きましたけど、そういうことはなかった」(怜)

──とはいえ1Rと2Rは攻め続けての判定勝ちですし、反省ができた勝利というのは大きくないですか。

 そうですね……試合後に彼に伝えたことは、1Rのヒザ十字からアンクル(トーホールド)という足関節。UFCという舞台でああいう技はやはり極まり辛いですし、仕掛けもそうですが力を使い過ぎたことは反省しないといけない。

それと3Rのスープレックス(ベリートゥベリー)、汗をかいている状態であの仕掛けをするのは慎重さが欠けていたのではないかと。特に本来のクラッチの組み方ではないのに強引に仕掛けてしまったことは。

 クラッチに関しては左を上に組むと、左に投げることができます。でもあの時はテイクダウン狙いで懐に入っていたので、右手が上にあって。あの組手だとグレコローマン・レスリングでも、あまり返せることはないです。それなのに相手がレスラーでないし、行けるだろうと強引に仕掛けてしまいました。そうしたら全く手繰れていなくて。

 下になって、結果的には何もされなかったですが、今後は命取りになるような相手がいるということを話しました。

 ただ、あそこから失速したという意見も聞きましたけど、そういうことはなかったです。

──そのままボトムに収まったという印象は強いですが。

 上を取り直して攻めようと僕は思っていました。でも岡田(遼)さんから「下で休んで良いから」という指示があったんです。本当に何をされることもなかったので、下でしばらく様子を見ることにしたんです。にしても、上手く流しに行っていたというのはありますね。

 相手がガッチリと抑えてきたじゃないですか。あそこで攻めてくると、怜も動いていたはずです。殴ってきたりすると、下でも創って行ける。ただ、動かないなら無理に動くとこっちが疲れるし、相手がそこをついてくることもある。なので休んで良いという指示にしました。

 ブーイングも起こっていましたしね。

 2分ほど休んで、休んで起き上りに行こうと。

 実況でワキを差されているのが良くないって言われていたのですが、あれはワキを差させているのではなくて小手を巻いていたんです。別にワキを差されているという実感はなかったです。

──29-28で良いという判断と、30-27……あるいはポジションを挽回してフィニッシュを狙って欲しいという希望もあったかと思います。ただ、自分も中継を視ていてスタミナをロスしたという風には感じました。

 僕も最初から最後まで上になってずっと殴り続けようと思っていたんですけど……プランと違うことが起きて、そこはパニックまで行かないですけど、焦ったというのはあります。同時に相手も相当に疲れていて殴ってこないし、腕を押し込んでくるだけだったんです。なら、こっちから動いてリスクを冒す必要はない。押し込んでくるので小手を巻いていれば、大丈夫という判断をしました。

──結果、ハーフからシングルで起き上りクリンチでケージに押し込んだ。その時点で残り2分10秒になっていました。

 あそこから押し込まれて、無双を仕掛けたんです。そこで上になりたかったのですが、あれも判断ミスでした。バックを取られかけて、そこも危ないという風に思われてしまったようです。僕自身は、問題はなかったのに。

──無双はMMAも有効な技だと捉えていました。

 位置ですね。

 ケージがあったので、相手は崩れそうになったのに詰まって転がらないで済んだんです。で、僕の方が無双をかけていたから、バックを取られかけてしまって。

──無双だと、体を沈めますしね。

 ハイ。あれはオクタゴン中央で仕掛けるべきでした。

 無双に関しては、怜は高校の時から得意にしていたんです。ジムでのスパーリングでも決めることもできている。でもあの試合では、仕掛ける場所が良くなかった。そこも反省点ですね。仕掛ける技、場所、時間帯を考えようと。

<この項、続く>

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