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【ONE165】武尊、継続×海外修行=進化「一度新しい技術を取り入れて、取捨選択して自分を創っていく」

【写真】MMAPLANET初登場の武尊。「空手時代はサウスポーだった」など興味深いエピソードが飛び出した(C)MMAPLANET

1月28日(日)に江東区有明の有明アリーナで開催される「ONE 165: Superlek vs. Takeru」にて、ONEキックボクシング世界フライ級(61.2キロ)王者スーパーレック・キアトモー9に挑む武尊。
Text by Takumi Nakamura

衝撃的なKOシーンや激しい打ち合いでファンを魅了する激闘派としての印象が強いが、2017年に渡米してドゥエイン・ラドウィックに師事するなど、早くから海外での練習を取り入れている。MMAPLANET初登場となるインタビューでは武尊の技術の習得に対する考えなど“濃い”格闘技の話を訊いた。


――今回はMMAPLANETでのインタビューということで、格闘技の濃い話を聞かせていただきたいと思います。まず昨年6月のベイリー・サグデン戦は5R2分59秒に左ハイキックでKO勝ちという結果でした。武尊選手にとっては初の5Rでしたが、実際にやってみた感想はいかがでしたか。

「意外といけるなと思いましたね。僕はずっと3Rでやってきたので、あの時も最初から3Rぺースで戦っていたんですよ。だからペース的にこれで5Rまでいけるかなという不安があったんですけど、4・5Rになると逆に気持ちが乗ってくるというか、実は長いラウンドの方が得意なのかなと思いました」

――フィニッシュは左ハイキックでしたが、ハイキックでのKOは初めてですよね。武尊選手は普段から新しい技や武器を増やすことは意識しているのですか。

「ハイキックはむちゃくちゃ練習していたし、あの時はグローブが今までより大きかったというのもあって、パンチじゃ倒せないと思って蹴りに切り替えたという部分もあったんですよ。僕もアメリカやタイで練習していて、海外製のグローブは大きめのものが多くて、ちゃんと握れないものもあるんです。そういう時は自然と蹴り中心に組み立てたりしていて、過去のそういう経験が活きた部分もありますね」

――なるほど。グローブの影響もあったんですね。

「あのハイキックは近距離で身体を倒して相手の死角から蹴るもので、空手式の蹴り方なんですよね。そういう小さい頃からやり続けていたものが、色んな技の引き出しを空けていくうちに出てきたというイメージですね」

――武尊選手はただ打ち合いが強いだけじゃなく、自分が有利な展開で打ち合いに持っていくことが上手いと。それだけ技の引き出しも多くて駆け引きも上手い、武尊=実はテクニシャン説を提唱しているんです。

「ありがとうございます(笑)」

――もともと器用なタイプだったのですか。

「全然器用じゃないですね。単純に格闘技をずっと続けているから出来る技が増えていって、でもそれを試合で使いこなせていないから、結果的に殴り合って倒しているという感じですかね。だから技術そのものはすごく色んなものを練習していて、サグデン戦は熱くならずに冷静に戦えて、長いラウンドだったので、そういう技を出せたんだと思います」

――デビュー当初からインロー、ミドル、三日月蹴りと左の蹴りはコンパクトで得意ですよね。

「僕、空手時代はサウスポーだったんですよ。先生から『スイッチしてサウスポーで練習しろ』と言われて。それで蹴りそのものは左の方が強くて、キックに転向にするときにオーソドックスにしたんです。それで左の蹴りが得意なんだと思います」

――武尊選手が空手時代はサウスポーだったというのは面白いですね。また武尊選手は定期的にアメリカ・タイで練習していますが、立ち技の選手でこれだけ海外での練習に時間を割いている選手は少ないと思います。日本と違って練習に集中できるということもあると思いますが、なぜ海外での練習を重要視しているのですか。

「日本にいると練習面でも色々と気を遣うことが多いんですよね。例えばスパーリングパートナー選びにしても、立場的に誰とでもスパーリング出来るわけじゃないし、怪我させちゃったらどうしようとか、どうしても気にしちゃうんですよね。海外にいくとそこまで気にしなくていい……というとあれかな(笑)。でも海外は僕が出稽古に行く側で、ジムの選手たちに胸を借りるじゃないけど、挑む立場なのでそういう気遣いをしなくていい部分はあります。あとはもちろん練習だけに集中できるし、空いた時間を身体のケアに充てられるんですよね。だから試合前に海外で合宿すると、すごく心身共に整った状態になるので、日本に戻ってからの最後の追い込みをいい状態で出来ますね」

――アメリカに行くようになった当初はドゥエイン・ラドウィックが指導するBANG Muay Thaiで練習していて、今はLAが拠点になっているそうですね。

「ラドウィックさんはすごくよくしてくれて最高のトレーナーなんですけど、デンバーの気候が自分には合わなかったんです。デンバーは結構寒い場所なので、ずっと建物のなかは暖房がついているような状況で、それでコンディションを崩しちゃうんですよね。それで一度LAで合宿したときに、LAの気候が最高で。外を走っても疲れないし、湿気が少ないから余計な汗もかかないんです。ラドウィックさんも月1でLAで指導していて、LAにはTJ・ディラショーのジムもあるから、そこで何度か練習させてもらいました。ただあくまでそこはMMAのジムなので、練習する相手がみんなMMAファイターなんです。そこで打撃だけの練習になると、どうしてもレベルに差が出てしまうので、打撃専門の相手と練習したいと思って、LAのBOXING WORKSというジムに行くようになりました。そこは基本的にムエタイのジムで、ジャネット・トッド(ONEキックボクシング女子世界アトム級王者)もいるので、今はそこがメインになっています」

――もうラドウィックと練習することはなくなったのですか。

「いえ、ラドウィックさんとも連絡をとりあって、ラドウィックさんがLAに来るときと滞在期間が被る時には練習をお願いしています」

――また武尊選手はアメリカと並行してタイでも練習していて、昨年9月にはスーパーボン・シンハ・マウイン(元元ONEキックボクシング世界フェザー級王者)のスーパーボン・トレーニング・キャンプでも練習していましたよね。

「立ち技においてムエタイの強さは証明されているし、僕自身もムエタイへのリスペクトがあります。あとはロッタン選手とやることを見据えて(※取材は対戦カード変更前)、ムエタイに触れておきたいというかムエタイ攻略を見つけたいと思って、タイの選手と肌を合わせたいと思いました」

――欧米人とタイ人ではやはり違いますか。

「欧米の選手とは全く違いますね。スーパーボン選手のジムでノンオー選手ともスパーしたんですけど、やっぱりすごくテクニックがあるから攻略方法を見つけるまでに時間がかかるんですよね。でも練習すればするほど、自分の戦い方だったら『ここを突けばいい』というところが見えてきたので、そこはいい勉強になりました」

――スーパーボン・トレーニング・キャンプでは主にノンオー・ハマ(元ONEムエタイ世界バンタム級王者)と練習していたのですか。

「そうですね。スーパーボンは怪我していてマスをやらせてもらうくらいで、ガチスパーはノンオーだけです」

――SNSでは武尊選手とノンオーのガチスパーが話題になっていました。動画を撮られているのは気づいていましたか。

「もちろんです。ジムにいる人がみんな見ていたし、みんなスマホで撮ってましたね(笑)」

――かなりバチバチでしたが……。

「あの時はアメリカからタイに直接入って23時間くらいかかったんです。それでほぼ休まずにジムで練習をスタートしたんで、人生で一番時差ボケがやばかったんです。夕方になると視界も狭くなってくるし、寝不足のまま身体を動かすから低血糖症みたいになっちゃって。そんな状態でノンオーとスパーリングすることになったんです。それで舐められちゃいけないと思って、気合い入れていきました(笑)」

――そういった状況でのスパーリングだったんですね。今日お話を聞いていても武尊選手は新しい技を覚えることや色んな場所で練習することが好きなんですね。

「やっぱり新しいものを取り入れていかないと進化できないし、格闘技は技術そのものがどんどん進化するじゃないですか。同じことを継続してやることも大事ですが、新しい技術は一度練習して取り入れてみる。そのうえで自分に合わない・使えないと思ったら取捨選択すればいい。僕の場合は海外で新しい技術を取り入れたら、それを最終的に(渡辺)雅和さんとの練習で創り上げていく形です。その作業が出来る雅和さんがいるからこそ、僕はどんどん新しい技術には触れていきたいですね」

――カーフキックもいち早く取り入れていましたし、最近ではスリッピングアウェーも習得して。

「スリッピングアウェーは何となく真似してやっていたら、いつのまにか出来るようになっていました(笑)」

――武尊選手も32歳になりましたが、まだまだ伸びしろはあるようですね。

「はい。技術は伸びているし、フィジカル的な数字も上がっているんですよ。実は1~2年前に作ったスーツがパツパツになっちゃって、今までそんなことはなかったんです。むしろスーパー・バンタム級(55㎏)時代に作ったスーツも頑張れば入るぐらいで」

――やっと60kgで戦う身体が出来上がってきたという感覚ですか。

「そうですね。パツパツになったスーツも通常体重が67kgくらいの時に作ったものなんですよ。今の通常体重は64㎏くらいで体重そのものは軽くなっているのに、背中・腕がかなりデカくなっています。そういう部分でも自分にはまだまだ伸びしろがあるんだなと思います」

――約1年7カ月ぶりに日本で戦う武尊選手がどんな進化を遂げているのか楽しみにしています!

■視聴方法(予定)
1月28日(日・日本時間)
午後5時00分~ABEMA格闘チャンネル
午後6時30分~ABEMA PPV

■ONE165対戦カード

<ONEキックボクシング世界フライ級選手権試合/3分5R>
[王者] スーパーレック・ギアットムーガーオ(タイ)
[挑戦者]武尊(日本)

<ONEサブミッショングラップリング世界ライト級(※77.1キロ)選手権試合/12分1R>
[王者]ケイド・ルオトロ(米国)
[挑戦者] トミー・ランガカー(ノルウェー)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
青木真也(日本)
セイジ・ノースカット(米国)

<スペシャルルール187.25ポンド (※84.94キロ)契約/3分3R>
秋山成勲(日本)
ニキー・ホルツケン(オランダ)

<キック156.5ポンド(※70.99キロ)契約/3分3R>
マラット・グレゴリアン(アルメニア)
シッティチャイ・シッソンピーノン(タイ)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
ゲイリー・トノン(米国)
マーチン・ウェン(豪州)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
平田樹(日本)
三浦彩佳(日本)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
ダニー・キンガド(フィリピン)
若松佑弥(日本)

<キック・ヘビー級/3分3R>
ラデ・オパシッチ(セルビア)
イラジ・アジズプール(イラン)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
ボカン・マスンヤネ(南アフリカ)
山北渓人(日本)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
グスタボ・バラルト(キューバ)
箕輪ひろば(日本)

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