【ONE165】若松佑弥、キンガドとの再戦へ。「自分を肯定して、信じて、認めて、試合を楽しみます」
【写真】自分を否定する=追い込むではない。自分を肯定することで追い込み、3度目のONE日本大会に臨む若松だ(C)TAKUMI NAKAMURA
1月28日(日)に江東区有明の有明アリーナで開催される「ONE 165: Superlek vs. Takeru」で若松佑弥がダニー・ギンガドとのリマッチに臨む。
Text by Takumi Nakamura
7月のONE FN12では2度目の計量失敗となるも、シェ・ウェイにTKO勝利して連敗から脱出した若松。ウェイ戦以降は練習内容ではなく、練習に向かうマインドや取り組み方を見直し、己を磨いてきた。今回は約5年前のONEデビュー戦で敗れたキンガドとの再戦となり、まさにONEで積み重ねてきたものが試される一戦となる。
――ONE日本大会まで10日となりました。今の練習の状況から聞かせてもらえますか。(取材日は1月18日)
「今日でハードなスパーリングはラストで、土曜日(20日)までは動きます。ファイトウィークに入ってからは調整という感じですね。身体の状態もばっちりです」
――日本での大会ということで普段とは練習スケジュールも違ってきますか。
「今まで海外でやってきて、海外での調整が当たり前だと思っていたので、今このキャリアで日本で試合するとなると、自分としては気持ち的にすごく楽しめるし、楽という言い方は違いますけど、日本大会はやりやすいかなと思います」
――ONEの日本大会は約4年ぶりの開催となります。また日本で試合をしたいという気持ちはありましたか。
「そうですね。いつか(日本大会)はやると思っていましたし、なかなか海外まで応援に来てもらうことは難しかったので、日本大会が決まってすごくみんな喜んでくれています」
――7月のシェ・ウェイ戦は前日計量でハイドレーションテストはパスしたものの、135ポンドのリミットを0.5ポンド(226.79グラム)オーバーとなり、キャッチウエイトでの試合実施となりました。試合そのものは若松選手のパウンドによるTKO勝利でしたが、あの試合を振り返っていただけますか。
「自分の中の色んなモヤモヤが吹っ切れて、しっかり自分の戦いができたと思います。2試合連続で計量クリアできなくて、試合前は前々回(ウ・ソンフンにTKO負け)と同じ心境になっていて。そこでこれは何かの試練だと気持ちを切り替えて、余計なことを考えずにシンプルに勝つことだけに集中したんです。そうしたらああいう戦いができて勝つことが出来ました」
――試合直前に吹っ切れたということですか。
「そうですね。計量クリアできなかった時点で一回気持ちが落ちたのですが、そこから吹っ切れましたですね」
――計量をクリアできずに試合成立となると、日本人選手の場合は心境的に思い切りいけないことが多い印象がありました。若松選手が吹っ切れた要因はなんですか。
「前々回の試合がまさにそうだったんです。日本人の悪いところが出たというか。そこを経験していたことが大きな経験値だったかなと思います」
――試合の動きの部分でも吹っ切れた感触はありましたか。
「ゾーンに入っていたじゃないですけど、いつでも倒せるというか。1R序盤のフィニッシュだったんですけど、飛ばせるところで飛ばそうと思って。これからもあの戦い方が出来るんだったら、もっと上までいけると思います」
――頭で考えずに本能で戦っていた感覚ですか。
「身体が反応して勝手に動いていた感じですね。頭で考える前に身体が『行ける!』と判断して動いていましたね」
――それを踏まえて今回はどんなことを意識して練習してきましたか。
「シンプルに楽しんで考えすぎない。色んなことを想定して準備したうえで思いっきり楽しんで、自分が出来ることの中から最良の選択をして戦いたいと思います」
――具体的に心がけていることは何ですか。
「練習を楽しいと思うことですかね。例えばキツい時に『うわ…キツい…』と思ってしまうのが前の自分だったんですよ。でも今はキツい時こそ『よし!乗り切るぞ!』と思って、自分を肯定するようになりました」
――自分を肯定する、ですか。
「今までの僕は練習で『もっとやらないとダメだろ?』や『なんでこんなところで疲れてるんだよ?』という考えで、どんどん自分を追い込んでしまっていたんです。それが『思いっきり練習して怪我しちゃったらしょうがない』や『今は調子が悪くてもいいんだよ』と思えるようになった。否定じゃなくて肯定して、自分で自分を乗せることができるようになったんです。そうなると今までキツかった練習が楽しくなってくるし、ガラッと変わりました」
――若松選手は性格的に自分を追い込んでしまうタイプだったのですか。
「成功するためには何かを犠牲にしなきゃいけない、苦しい想いをしなきゃいけない……そういう気持ちを持っていましたね。最近はそこをもう通り過ぎたというか、今よりもう一段階上の選手になるには、自分を否定じゃなくて肯定して、自分のことを信じて認めて、試合を楽しむことが最高なんじゃないかなと思います」
――では今は自分の長所に目がいくようになったのではないですか。
「はい。今まで自分は長南(亮)さんや周りが認めてくれているほど、自分の実力を認めてなかったんですよ、『まだまだ俺なんて弱いんで……』って。そこも自分を肯定するようになって、『俺の打撃が当たれば絶対倒せる。俺は普通とは違う選手なんだ』や『俺には俺にしか出来ない戦い方とストーリーがあるんだ』と思うようになってきて。そうやって自分にフォーカスして、楽しんで思いっきりやればいいんだよという気持ちで練習も続けています」
――マインドが変われば同じことを練習していても全く違う感じ方をしますよね。
「全く違いますね。でも僕は過去を否定するわけじゃなく、色んなことを経験したからこそ、今のこの考えになっているので、自分にしかできない経験だったと思って感謝しています」
――さて今回はキンガドとのリベンジマッチになります。最初にオファーを受けた時の心境を聞かせてください。
「はじめは前々回の試合で負けているウ・ソンフンとのリマッチでオファーが来たんですけど、試合合意には至らなかったんです。次にONEから提案された試合がキンガドとのリマッチでした。願ったり叶ったりと言った感じで嬉しかったです。やっとリベンジできると思いましたね」
――キンガドとは2018年9月のONEデビュー戦で対戦し、判定で敗れています。あの時はどんな印象を持ちましたか。
「MMAの競技的にあっちの方が上だったと思います。打撃は僕の方に強みがあったんですけど、組み技・寝技・スタミナ…そういったMMAの総合力や技術の配分という面で差をつけられたなと思いました。まさにMMAで上回られた感想ですね」
――そこまでキンガドがMMA的に完成されていたのは意外でしたか。
「当時の僕は試合で出たとこ勝負の現場合わせじゃないですけど、じゃんけんみたいな試合のやり方だったんです。逆に今思うとキンガド選手はMMAの完成度が高くてゲームプランも立てて試合していたと思うので、そりゃ、負けるだろうと思いますね。あの時点ではキンガド選手が僕の先を行っていたと思います」
――今回の再戦はまさにONEでやってきたことが試される試合ですね。
「まさにその通りですね。今回はすべての面でプレッシャーをかけて圧倒したいです。どんな状況になっても楽しんで戦えれば、自分の実力を出せる感覚があります」
――日本大会への出場は今回で3度目、すべての大会に出場することになります。過去の日本大会とは心境が違いますか。
「今までの日本大会はあまり日本でやることを気にしてなかったんですよ。それよりも自分の勝ち負けの方が大事で、勝てるんだったらどこでやっても一緒だろくらいに思っていました。でも今回はみんなで勝利を分かち合いたいという気持ちが出てきているんです。だから応援に来てくれる人たち、見てくれる人たちに最高の勝ちを見せて、感動を届けたいなと思っています」
――キャリア的にも若松選手はONEで戦うMMAファイターとしては古参の部類になってきました。
「5年のキャリアでここまで来れたことは自分でも褒めてあげたいです。でもそれで天狗になっているようじゃ、すぐに引きずりおろされる舞台だし、僕の中では崖っぷちぐらいの気持ちもあります。ただここからがスタートだとも思っているし、この状況を楽しみたいですね。今回は武尊選手も出て注目度も上がっているし、ここで勝てばまたONEに注目される選手になれると思っています」
――若松選手のことを初めて見るファンも多いと思いますが、どんな試合を見せたいですか。
「パフォーマンスじゃなくて15分間の戦いの中で『MMAって面白いんだな』とか『キックには武尊選手がいるけど、MMAにはこういう選手がいるんだな』とか、ちょっとでも自分を知ってもらうきっかけになったらいいなと思います。今ONEはキック・ムエタイの方が盛り上がっていると思うので、またMMAを盛り上げたいし、そのためには倒せる選手が求められていると思うんですよ。自分はそういう試合をしてONEのMMAを盛り上げるきっかけになりたいです」
――キンガド戦も含めて2024年の目標を聞かせてください。
「今回しっかりKOで勝って、夏頃にDJ(デメトリウス・ジョンソン)にリベンジしてチャンピオンになりたいです。前回のDJ戦は捨て身でガムシャラに戦ったんですけど、今の自分はそうじゃないので。DJはフライ級で世界一の選手だと思うので、その相手を倒してチャンピオンになりたいです」
■視聴方法(予定)
1月28日(日・日本時間)
午後5時00分~ABEMA格闘チャンネル
午後6時30分~ABEMA PPV
■ONE165対戦カード
<ONEキックボクシング世界フライ級選手権試合/3分5R>
[王者] スーパーレック・ギアットムーガーオ(タイ)
[挑戦者]武尊(日本)
<ONEサブミッショングラップリング世界ライト級(※77.1キロ)選手権試合/12分1R>
[王者]ケイド・ルオトロ(米国)
[挑戦者] トミー・ランガカー(ノルウェー)
<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
青木真也(日本)
セイジ・ノースカット(米国)
<スペシャルルール187.25ポンド (※84.94キロ)契約/3分3R>
秋山成勲(日本)
ニキー・ホルツケン(オランダ)
<キック156.5ポンド(※70.99キロ)契約/3分3R>
マラット・グレゴリアン(アルメニア)
シッティチャイ・シッソンピーノン(タイ)
<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
ゲイリー・トノン(米国)
マーチン・ウェン(豪州)
<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
平田樹(日本)
三浦彩佳(日本)
<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
ダニー・キンガド(フィリピン)
若松佑弥(日本)
<キック・ヘビー級/3分3R>
ラデ・オパシッチ(セルビア)
イラジ・アジズプール(イラン)
<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
ボカン・マスンヤネ(南アフリカ)
山北渓人(日本)
<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
グスタボ・バラルト(キューバ)
箕輪ひろば(日本)