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【ONE172】若松佑弥、モライシュ戦を振り返る「脇を差させずに突き放して殴る。それがハマった」

【写真】パントージャや堀口との比較について「そういう声は正直気にならない」と若松。これからも己の弱さと向き合いながら最強を目指す(C)TAKUMI NAKAMURA

23日(日)に埼玉県さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで開催されたONE 172「TAKERU vs RODTANG」でアドリアーノ・モライシュにKO勝ちし、ONE世界フライ級王座についた若松佑弥。27日(木)都内にて囲み取材に応じた。
Text by Takumi Nakamura

モライシュ戦前にチャンピオンになって着る用のスーツを事前に作っていたという若松。この日はそのスーツ着用でベルトを持って取材場所に現れ、モライシュとの一戦を振り返った。

若松佑弥
「本当にまだ実感がないというか、嬉しい半分、まだちょっと実感がない感じです。今までとあまり変わらなくて、たまにちょっと『チャンピオンなんだ』みたいに思って、ベルトを持つ自分がちょっと恥ずかしいぐらいの感覚です。でも最高の瞬間を迎えることが出来たんで、最強に嬉しいです。

今後は引き続き、自分自身との向き合いだと思います。ベルトを獲った中で改めて(向き合うのは)相手でもなく、他でもなく、自分なんだな、と。それがより一層強くなりました。今後も油断したらそれが負けの始まりだと思うし、今回勝って、僕はそこがちょっとした落とし穴だと思っているので、より一層自分はまだまだ弱いんだということを認めながら、もっと修行していけたらなと思っています」


囲み取材で若松はモライシュ攻略の裏側を明かしつつ、今後の展望についてもコメント。UFCや他団体への参戦についての質問には、「ONEとの契約をしっかりしつつ、そこは流れに任せる。(タイミングが合えば他団体でもやる意思はある?)そういう意思もあります」と語っている。囲み取材でのMMAPLANETとの質疑応答を以下に掲載したい。

――ご自身で試合映像は見直されましたか。

「はい、見ました。振り返ってみると試合中は本当に無でやっていて、思っていたより自分がやりたいこと、戦略や対策がしっかりできていたんだなと思います。しっかりタックルも切れていましたし、相手の技に付き合わないで殴って…というのはしっかり出来ていた感じはしましたね。自分は結構ステップイン、ステップアウトみたいな感じで、アウトボクシングのタイプだったんですけど、ここ最近は色んな戦い方ができるようになったと感じていて、あまりこうやろうというのを決めすぎず、自分はなんでもできるなというところは少し自信になりましたね」

――今明かせる範囲でどんな対策を練っていたのですか。

「もちろん判定で勝つというパターンもあったのですが、一番はテイクダウンを全部切って倒されないで、自分の土俵の打撃戦をやりたいと思っていました。もしそれを突破されたら寝技、スクランブルで上を取って、パウンドを打って、また立つとか。自分がダウンした場合はこう動こうとか、そういうイメージはたくさんありました。一番の理想は、ああいう感じで脇を差させない。脇を差されちゃうと、そこから巻き込まれたり、柔術的に絡んで(組み技を)仕掛けられるので、そうなったら首相撲で内側をとって突き放して殴る。殴り合いの展開に持っていくというのは、バッチリとハマった感じはあります」

――モライシュのテイクダウンを切った時に、試合を有利に進められるなという手応えはありましたか。

「思ったより自分も調子が良くて(モライシュに)組まれた時に、全然いけるみたいな感じで(テイクダウンに)入られた感じがなかったんですよね。映像で見ると2回タックルに入られたんですけど、自分の感覚では本当にフェイントをかけられたぐらいの感じで。アドリアーノは相手にタックル切らせておいて右ヒザを出してくるんですけど、そこまでタックルに入られている感覚もなかったです。むしろ試合中は、結構打ち合いに応えてくれているなという感覚がありました」

――フィニッシュまでの打撃戦ですが、見ている側からするとモライシュの右のカウンターが当たりそうな場面もあったと思うのですが、そこに怖さはなかったですか。

「自分が引いてアウトボクシングをしちゃうと相手も上手いんで。セコンドの仙三さんが、『今日はもらっても効かない。倒れないよ』みたいなに言われていて、もし今日死んでもいい、これが最後になってもいいぐらいの覚悟で戦いました。それで前に行けたというか、ちゃんと顎も引けていたし、あっち(モライシュ)は下がりながらのパンチだったんで、被弾はしていたんですけど、もらっている側としては大丈夫でした」

――最後のフィニッシュの部分はあそこで仕留めきろうという気持ちだったのですか。

「そうですね。1Rで(スタミナを)使い果たすぐらいの感覚でいきました。正直組んだ時にこれは組んでも勝てるなと思ったんですけど、それが自分自身に対する弱さだと思っちゃって。やっぱりキツいことをやって全力を出したいという思いがあって、そこで勝ちに徹すれば、あそこで休んでいた自分がいたかもしれませんが、殴り合いたいと思いました。相手も疲れていたし、俺も休みたいという弱さを出さない。ここで休んじゃダメなんだという意味で無我夢中に殴った感じです」

――試合後の反響はいかがでしたか。

「たくさんメッセージが来たんですけど、あまりにメッセージが来すぎて誰が知り合いなのか分からなくなって、携帯を見るのが怖くなっちゃいました(笑)。メッセージを返したい気持ちはあるんですけど、一回既読すると忘れてしまうし、子供の世話もあったりして、あんまり見れていないです」

――それも含めて大仕事をやってのけたという実感は湧いていますか。

「そうですね。ただ急にそう(チャンピオンに)なったので夢を見ているようで、どうしたらいいんだろうみたいな感じではあります」

――試合後はジムに顔を出して練習仲間にも勝利報告していましたが、長南亮代表の反応はいかがでしたか。

「長南さんも普段と変わらない感じでした。多分長南さんも自分と同じ気持ちなのかなっていう。まだフワフワしているというか。自分もジムに行ったらいつもと変わらない感じで、普通にしゃべってみんなの練習を見て…って感じでしたね」

――ONEでは2019年3月にデメトリウス・ジョンソン、2022年3月にモライシュに負けて紆余曲折あっての王座戴冠だったと思います。ここまでの道のりを振り返っていかがですか。

「今僕が与えられているものの中で、自分にしかできないストーリーというか、僕は散々いいところでベルトを獲れなくて、いつもいいところでやられていたので、ストーリー的には1番いいところでベルトを獲れたという想いがあります」

――今後はどんな相手と戦っていきたいと思っていますか。

「用意された相手と戦って、判定ではなくてKOで倒せば、自ずと自分の価値は上がるのかなと思います。今の自分はつまらない試合というか、流して勝ったり、そういうことをしなければ自ずとKO勝ちできると思うので、相手が誰だろうが、弱いヤツがタイトルマッチには上がってこないと思うので、倒して勝つことを積み重ねていければと思います。特にUFCに行きたいとかはなく、今自分が置かれた状況でKOを続けていけばいいのかなと思います」

――モライシュに勝ってONEのチャンピオンになったことで、UFC王者のアレッシャンドリ・パントージャ、RIZIN王者の堀口恭司選手と比較される部分もあると思いますが、そこはどう意識していますか。

「真実というか、他の人のことは正直もう戯言だと思ってるんで、自分が最強でいること、自分の中身が一番強いので、それに勝てば自分が最強だいうことは分かっているので、そういう声は正直気にならないです」

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