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【ONE172】武尊・野杁と共に戦う、渡辺雅和トレーナー「ONEで試合をする=別競技へのチャレンジ」

【写真】ONEは戦う舞台であり、ONEという競技でもある。渡辺トレーナーにとっても新たな挑戦だ(C)TAKUMI NAKAMURA

23日(日)に埼玉県さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで開催される「ONE 172: TAKERU VS RODTANG」。今大会でロッタン・ジットムアンノンと対戦する武尊、タワンチャイ・PKセンチャイムエタイジムと対戦する野杁正明。2人をteam VASILEUSで指導するのが渡辺雅和トレーナーだ。
text by Takumi Nakamura

昨年から武尊と野杁がK-1からONEに主戦場を移し、K-1時代から苦楽を共にしてきた渡辺トレーナーも指導者としてONEで戦うようになった。ダメージ優先・KOを狙う姿勢が評価され、ラウンドごとに10-10のイーブンがつくK-1。手数やコントロールも評価され、ラウンドマストで10-9をつけるONE。ヒジ・ヒザなしのキックルールであっても、ONEとK-1の戦いは全く異なる。渡辺トレーナーの目に映るONEでの戦いについて訊いた。


――武尊・野杁選手のONE参戦により、渡辺さんも指導方法や内容をONE仕様に変えていると思います。どんな部分が一番変わりましたか。

「ONEは各ラウンドでドローがつかない、どちらかにポイントをつけるラウンドマストじゃないですか。K-1とは試合の見方がガラリと変わりましたね。例えば(野杁)正明が安保瑠輝也選手とやった試合(2021年9月)。あれがもしONEの判定基準だったら1・2Rは安保選手についてると思うんですよ。安保選手の方が手数が多かったので。結果は3Rに正明が倒して勝ちましたが、あのままダウンを取られずに判定まで粘られていたら、ONEの判定基準だと勝敗が変わっていたかもしれないですよね」

――ダウンがなかったら29-28で逃げ切られていた可能性もあった、と。

「武尊とスーパーレック(・キアトモー9)の試合もスコアを見直すと武尊が取ったのはボディを効かせた3Rだけで、それ以外はすべてスーパーレックが取っているんです。あれだけ攻めたラウンドでもダウンを取らなかったら1ポイント、どちらについてもおかしくないよう僅差でも1ポイント、ジャッジの上での評価は同じなわけですよ。そうなると全く見方が変わりますよね」

――試合の組み立て方や戦術も変わってきまよね。

「僕も自分でポイントをつけながらONEの試合を見るようにしていて、ONEはムエタイの流れがあるからか、バランスを崩す・転ばされることがマイナス評価なんですよ。だからほとんど差がない展開のなかで1回崩される・転ばされる、そこがポイントの分かれ目になることもあります。あとは多少相手の攻撃を受けてもダメージで上回ればいいという考えもなくして、攻防を足し算・引き算で見るようになりましたね。最終的にそこの足し引きで上回った方に10-9がつくという見方をしています」

――まさにONEで勝つための戦い方をしなければいけないわけですね。

「ONEはポイント制のスポーツという側面を忘れてはいけないです。僕自身もミットの持ち方がガラリと変わったし、それこそONEで試合をする=別競技にチャレンジするくらいのつもりで取り組んでいます。もちろん武尊も正明も最後は倒して勝つ、ダメージを与えてポイントを取るという意識は変わらないです。ただそこに至るまでの過程や戦い方は変えなきゃいけない。それこそ5Rの試合はダウンを1回取っても、ひっくり返せないことも全然ありえるわけで、ちゃんとラウンドを取る意識は持たせています」

――渡辺さんも武尊・野杁選手を指導したり、ONEの試合を見ていく中で、ONEでの勝ち方は分かってきましたか。

「段々と分かってきましたね。ONEはバチバチに打ち合って派手に倒しているイメージがあるかもしれませんが、戦績が安定している選手はちゃんとポイントも頭に入れて戦いながら、倒しに行っていますよね」

――技のラリーがあってポイントゲームで負けない。その上で倒し合うという意味では、まさにONEのキック・ムエタイはムエタイの進化版であり、新しい時代のムエタイだなと感じました。

「そうだと思いますね。蹴りのポイントが高かったり、自分の攻撃で終わることが大事だったり、崩しやコカシも評価されたりするところもムエタイ的な要素があると思います」

――渡辺さんから見て、今回の武尊・野杁選手の仕上がりはいかがですか。

「めちゃくちゃ調子いいですよ。武尊も正明もこうやっていこうという戦略もあるし、それぞれ対策してきた技もあります。先ほど話した判定基準だけじゃなく、ハイドレーションやイベントの雰囲気など、2人ともONEに慣れてきたところもあるし、僕らの方に流れは向いているのかなと思います。当日を楽しみにしていてください」

■放送予定
3月23日(日)
午後2時30分~U-NEXT

■ONE172対戦カード

<キック・フライ級/3分5R>
ロッタン・ジットムアンノン(タイ)
武尊(日本)

<ONEキックボクシング世界フェザー級暫定王座決定戦/3分5R>
タワンチャイ・PKセンチャイムエタイジム(タイ)
野杁正明(日本)

<ONEムエタイ世界バンタム級王座統一戦/3分5R>
[正規王者]スーパーレック・キアトモー9(タイ)
[暫定王者]ナビル・アナン(アルジェリア)

<ONE世界フライ級(※61.2キロ)王座決定戦/5分5R>
アドリアーノ・モライシュ(ブラジル)
若松佑弥(日本)

<ONEキックボクシング世界女子アトム級選手権試合/3分5R>
[王者]ペッディージャー・ルッカオポーロントン(タイ)
[挑戦者]KANA(日本)

<ONEキックボクシング世界ストロー級暫定王座決定戦/3分5R>
ジョナサン・ディベラ(カナダ)
サムエー・ガイヤーンハーダオ(タイ)

<キック・フェザー級/3分3R>
マラット・グレゴリアン(アルメニア)
海人(日本)

<ムエタイ・アトム級/3分3R>
ラック・エラワン(タイ)
吉成名高(日本)

<ライト級(77.1キロ)/5分3R>
エドゥアルド・フォラヤン(フィリピン)
青木真也(日本)

<キック・バンタム級/3分3R>
ジョン・リネケル(ブラジル)
秋元皓貴(日本)

<ライト級(77.1キロ)/5分3R>
エイドリアン・リー(シンガポール)
小川健晴(日本)

<ムエタイ・フライ級/3分3R>
ヨードレックペット・オー・アトチャリア(タイ)
吉成士門(日本)

<キック・フライ級/3分3R>
ザカリア・ジャマリ(モロッコ)
陽勇(日本)

<キック・132ポンド契約/3分3R>
スリヤンレック・ポーイェンイェン(タイ)
龍聖(日本)

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