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【Special】伝説の一戦を振り返る。「見ている人の数だけ“武尊×天心”がある」by 中村拓己

【写真】ABEMA格闘公式Xの特別企画で伝説の一戦に選ばれたのは武尊×那須川天心だった(C)THE MATCH 2022

6月26日はアントニオ猪木×モハメド・アリ(1976年)が行われ、「世界格闘技の日」に制定されている。ABEMA格闘公式Xでは、これにちなんで格闘技ファンが選ぶ伝説の一戦を幅広く募ったところ、2022年6月19日にTHE MATCH 2022で行われた武尊×那須川天心戦が1位に選ばれたという。
text by Takumi Nakamura

【ABEMA格闘公式X “伝説の一戦”ランキング結果】
1位:那須川天心×武尊(THE MATCH 2022, 2022年6月19日 東京ドーム)
2位:桜庭和志×ホイス・グレイシー(PRIDE GP 2000, 2000年5月1日 東京ドーム)
3位:アントニオ猪木×モハメド・アリ(1976年6月26日 日本武道館)
4位:朝倉未来×平本蓮(超RIZIN.3, 2024年7月28日 さいたまスーパーアリーナ)
4位:高山善廣×ドン・フライ(PRIDE21, 2002年6月23日 さいたまスーパーアリーナ)
5位:畑山隆則×坂本博之(WBA世界ライト級タイトルマッチ, 2000年10月11日 横浜アリーナ)
5位:青木真也×長島☆自演乙☆雄一郎(Dynamite!! 2010, 2010年12月31日 さいたまスーパーアリーナ)


 この試合が多くのファンに記憶に残る要因は幾つもあるだろう。同時代に生きた最強の2人が雌雄を決したこと、実現不可能と思われていた試合が実現したこと…など。当時私はK-1プロデューサーとして、このイベントに携わり、試合決定からイベント開催、そして大会終了まで実行委員会の一員として大会を見守ってきた。

 初めて武尊と天心が並んで記者会見を行った時は逆に気持ちが落ち着いていて「本当にこの2人が試合をするんだな」と思った記憶がある。当時交流がなかったRISE伊藤隆代表と久々に顔を合わせ、武尊×天心以外の対戦カードを決めるマッチメイク会議をやった際には、両陣営が想定・希望していたカードがほぼほぼ同じで、会議そのものは2時間足らずで終わった。

 大会当日はリングサイドでオープニングファイトから試合を観戦し、武尊×天心は実況席にも座った。正直、実況でどんなことを話したのかは覚えていない。K-1プロデューサーとして武尊×天心を含めて、K-1勢が負け越したという試合結果を受け止めることに必死だったのだろう。唯一覚えているのは、試合終了後の(おそらく)最後のコメントで「見ている人の数だけ“武尊×天心”がある」と言ったことだ。

 武尊を応援している人、那須川天心を応援している人、K-1を応援している人、RISEを応援している人、キックボクシングを好きな人、MMAもキックも好きな人、MMAしか見ないが武尊×天心だけは見た人、普段は格闘技を全く見ないけど武尊×天心はとりあえず見ようと思った人…………本当に多くの人が、それぞれの立場で2人の戦いを見ていたと思う。

 この大会のあとに武尊選手はK-1を離れてONEへ移籍し、天心選手はボクシングに転向した。K-1も2014年11月から続いた新生K-1体制から、新たな方向性に舵を切ることになり、私もK-1プロデューサーを退任して格闘技ライターに復帰することになった。他にもTHE MATCH 2022を機に新たな道に進んだ選手もいて、あの大会が人生のターニングポイントになった人も多かったはずだ。

 格闘技が多くの人を熱狂させ、人生を変える影響力も持つ。それをたくさんの人が体感したからこそ、武尊×天心は伝説の一戦として記憶されているのだろう。

 ちなみに私は大会の写真集販売に向けたYouTube企画の仕事で武尊×天心の映像を見ただけで、それ以外では一度も試合映像を見返していない。2022年6月19日、あの日、あの瞬間に見て感じたもの。それが私にとっての武尊×天心だ。

■「THE MATCH 2022」ノーカット無料再放送 視聴方法(予定)
7月6日(日)午前10:00~ ABEMA格闘チャンネル

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