【RIZIN53】36歳、夢の舞台へ。ライアン・カファロ「ファンが僕の勝利を願い、勝つと期待している」
【写真】ファンとの触れ合い、スタッフやメディアとのやりとりの一つ一つをエンジョイし、大切にしている感じが伝わってきたカファロだ(C)MMAPLANET
10日(日)に神戸市中央区のGLIONアリーナ神戸で開催されるRIZIN53。同大会でライアン・カファロがRIZIN初来日を果たし、同じくRIZIN初陣となる松嶋こよみと戦う。
Text by Manabu Takashima
試合の2週間前に来日し、時差調整を行ってきたというカファロを4月30日の公開合同練習会前にキャッチ。Xで日本の日々を伝え、公開練習時も徹底してファンと触れ合っていたカファロは35歳でLFA、Fury FC、A1 Combatと並ぶフィーダーショー大手CFFCフェザー級王者に就き、36歳にして、初めてビッグステージで戦う(Bellator出場はローカル枠の第2試合出場だった)。
RIZINのオファーに涙したと振り返る際には、涙ぐむこともあったカファロにオリジナル、MMAファイター&コーチ人生、そして松嶋戦について尋ねると――。
バックボーンや今後について、そしてRIZINやRIZINルールについて深く話すファイターは少なくない。しかし、カファロは技術的、戦略的に松嶋攻略方法にも、決して少なくないだけ言及した。もちろんブラフということは十分に考えられる。例えそうであってもMMA観戦が、少し深く愉しめるカファロの松嶋攻略方法をぜひとも観戦の手引きにしてほしい。
年齢のこともあってUFCは僕に興味を持っていないことは分かっていた
――最初にライアンのルーツについて伺わせてください。米国ではライアン・キム・カファロとコールされ、コリアン・サンダーの異名を持っています。ライアンには韓国の血が流れているのですか。
「イエス。母は純粋なコリアンだ。キム・ジョンヨンという名前で、ジュリアード音楽院で父に出会った。両親揃ってフィラデルフィア管弦楽団に属していたんだ。母はピアノ、父はチェロ演奏者だった。僕はそんな音楽一家に育ったんだ」
――一見、韓国系には見えないですね。
「だろう? よくウズベキスタンやタジキスタン人と間違えられたよ(笑)。髪を伸ばし、少し髭を生やしていた時は、本当に勘違いされた」
――あぁ、それは何となく分かります(笑)。とはいえアジアの血があることで、幼少期に虐めにあったりはしなかったですか。
「まぁ、ないことはなかったよ。でも、虐めがあったことが僕とファイティングを結び付けた。有難かったね」
――では改めて。10日もすればRIZIN神戸大会で、松嶋こよみ選手と対戦しますが、今の気持ちを教えてください。
「こういう表現が正しいか分からないけど、気持ちはバケーション気分だよ」
――えっ?
「さぁ、バケーションも終わりだ。ファイトが待っているというような」
――マジ……ですか。
「もちろん、ファイトに関しては本当にシリアスに考えているよ。日本で戦うことが、夢心地の気分で。それだけハッピーだと伝えたかったんだ。能力的として、RIZINのようなステージで戦うだけのモノを持っているとは思っていた。でも、まさかRIZINで戦えるとは思っていなかったから。本当にRIZINには感謝している」
――多くの米国人ファイターはUFCで戦うことを目標にキャリアを積んでいると思います。あるいは他のメジャーとされるプロモーションで戦うこと。35歳になってCFFCというメイン・フィーダーショーでタイトルホルダーになった時、今後のキャリアに関してどのように考えていたのでしょうか。
「キャリアの終盤になって、CFFCのベルトを巻いた。正直、年齢のこともあってUFCは僕に興味を持っていないことは分かっていた。ただ、僕は指導を通じて多くのUFCファイターと自分を比較できる。ファイターとしての僕を車に例えると走行距離がそれほどでない、先代モデルのプリウスなんだ。まだまだ走ることができる。TKO負けは一度あるけど、ノックアウトされたわけじゃない。プロデビュー戦で、疲れて動けなくなった時だけで。
シリアスなケガをしたこともないし、ずっと体調管理には注意を払ってきた。そして、練習を継続してきた。もっともっと戦える。RIZINで戦うことは、ファイトを続けるうえで最高のモチベーションになっている。僕のファンベースが日本にあるなんて、全く思ってもいなかった。本当に驚かされたよ。
UFCとRIZIN、ONE Championshipが最高のレベルにある団体だけど、日本のファンの存在がUFCからRIZINで戦いたいと、気持ちがシフトしたきっかけになった。RIZINからオファーがあった時、思わず妻の前で涙してしまった。月曜日の朝だった……(と話すカファロは涙ぐんでいた)、ソーリー。RIZINでの試合は、ついに自分が思い描いていたステージで戦えるということなんだ」
――36歳までローカルショーで戦う。数千ドルで年に3試合ほど、これでは食べていけないのでMMAから離れる決断をする選手がほとんどだと思います。
「僕の場合は指導をしていることで、キャリアを続けることができた。エリートファイターのコーチをしていると、経済的な下地が確保でき、トレーニングを続けることも可能だった。だから、諦めることがなかったんだ。
派手な生活を送ることはないし、2009年からモデルが変わっても、ずっと乗っている車はプリウスだ。車種を変えるのは、RIZINのチャンピオンになった時だよ(笑)」
――ハハハハ。そんなライアンですが、MMAを始めようと思ったのはなぜですか。
「ハイスクールでレスリングをしていた時、2005年にエヴァン・タナー✖デイヴィッド・ロワゾーが戦うUFCの試合を視た。レスラーのタナーが良い試合をしていたけど、エルボーでドクターストップ負けした。『なんだ、このスポーツは?』って衝撃を受け、トライしてみたいと思いMMAの練習を始めたんだ」
マーク・ヘンリーとヒカルド・アルメイダから本当に多くのことを学ばせてもらった
――フィラデルフィアでMMAを始めたのですか。
「いや、ニュージャージーだよ。フィラデルフィアには5歳まで住んでいたけど、それ以降はニュージャージーで育った。で、当時の僕のムエタイ・コーチが、ヒカルド・アルメイダがマット・ブラウンと戦った時にサポートしていた関係で、アルメイダのところで練習しないかと勧められた。それからフランキー・エドガーとも、トレーニングをするようになったんだ」
――ヒカルド・アルメイダと柔術&グラップリング。マーク・ヘンリーと打撃。ニック・カトーネのジムでMMA。エディ・アルバレスやマルロン・モラエス、コーリー・アンダーソンら多くの選手が一緒にやっているなかで、ライアンも彼らのチームにいたということですね。
「そうだね。アルメイダ&ヘンリーと練習するようになって1年後ぐらいにエディ・アルバレスが、スケジュールの関係でマーク・ヘンリーと練習ができない時があって。彼にミットを持ってくれないかと尋ねられ、個別で一緒に練習するようになった。それを見てマルロン・モラエスからも、パッティングの相手になって欲しいと言われたよ。それから、僕は打撃コーチになったんだ」
――あのスター軍団をライアンが、支えていたのですね。
「パンデミックの時にエディがONEで試合を組まれ、当時の状況ではコーナーマンは1人しかつけることができなかった。マーク・ヘンリーはレスリングができない。ヒカルド・アルメイダはミットができない。だからエディが、僕にコーナーマンをしてくれと言ってきた。試合前のキャンプも、マークが『ウチの地下のスペースで練習をすれば良い』と言ってくれて。エディが僕にミットを持ってほしいと言ってくれた一言で、僕はコーチになれた。凄く幸運だったと思う」
――実はもう10年以上も前に日本人選手たちとニュージャージーを訪れ、ヒカルドやマーク達の指導を受けたことがあり、とても懐かしいです。特にマーク・ヘンリーには、それこそ自宅の地下ジムに誘ってもらって、凄く良くしてもらいました。
「マークはフットボールのヘッドコーチみたいな指導者だよ。僕自身、マーク・ヘンリーとヒカルド・アルメイダから本当に多くのことを学ばせてもらった。それにフランキー・エドガーもね。試合をTVで視ていたファイターのコーチになれた。コーナーにも就いた。ラスベガスやアイルランド、シンガポールをコーナーマンとして訪れることができた。
彼らのコーチをしていた経験、世界各地を訪れた経験は、RIZINで戦うためだったと思う。時差ボケ対策を、コーナーマンとして経験できたことも、その一つだ。RIZINで戦う日がやってきた。この日のために、これまでの僕のファイターとしてのトレーニング、コーチとしてのトレーニングが存在していたんだ」
――コーナーマン、コーチをしている時もファイターとして、何かを成し遂げるという想いを抱き続けてきたからですね。
「その想いは、今、過去最高に強い。僕はコーチをすることが大好きだ。でも、コーチはこれからもずっと続けることができる。もちろん、今もコーチをしているけど、スポンサーのサポートを得ることができれば、ファイターに専念したいと思っている。今は、自分のことを考える時だ。僕がファイターとして、できることをすべて出し切るためにもね。
同時にさっきも言ったように、コーチとして経験してきたことは本当に大きい。だから日本にも試合の2週間前にやってきた。池袋に滞在して、HEARTSやキックボクシングのジムで練習して、公園でミットをしている」
――池袋……。随分と喧噪の中にステイしているのですね。
「大丈夫。僕はフィラデルフィアを知っているから(笑)。僕にとって池袋は静かな街だよ」
プレッシャーを受けた時に、気持ちが脆くなる。そこが松嶋の弱点だよ
――ハハハハは。ファイターとして、これからが勝負となるライアンですが、RIZIN初戦の相手となる松嶋選手の印象を教えてもらえますか。
「マツシマはRIZINにあって、最も危険なファイターの一人だと思う。ファンの多くが、僕の勝利を願い、勝利するものだと期待してくれている。でも彼の力は、シリアスに捉える必要がある。凄くデンジャラスなウェルラウンディット・ファイターだ。素晴らしいテイクダウンと、破壊力のある極真スタイルの打撃の持ち主でスピニングエルボーやローリングサンダーキックという派手な技を出すのと同時に、強烈な右カーフや右オーバーハンドを持っている。
僕とチームは彼のDEEP時代から、全ての試合をチェックしてきた。彼の全ての試合を10回から15回、見てきた。試合で何を使うのか、把握できている。ベストバージョンのコヨミ・マツシマが僕の前に立ちふさがることを想定してきたよ。
マツシマはプレッシャーを受けた時に、気持ちが脆くなる。そこがマツシマの弱点だよ。だから僕も圧を掛け、彼を疲れさせる。結果、マツシマは雑になる。自分の思い通り戦えている時のマツシマは、本当に強いから彼のやりたいことを潰していく。その結果、僕は彼をノックアウトできるだろう」
――粗いテイクダウンが来た時は、ライアンのギロチンが効果的かと。と同時に、松嶋選手のテイクダウンは低いので、RIZIN特有の攻撃の的になる可能性もあるかと。
「彼が僕とレスリングをしたいなら、本当にギロチンには注意を払うべきだ。マツシマのコーチは、しっかりと僕を分析しておかないといけない。それに彼が僕をテイクダウンできたとしても、抑えることは簡単じゃないからね。
テイクダウンも簡単に許さないし、抑え込ませない。それにKOされたこともないから、マツシマが良い一発が入ったと思っても僕は戦い続けることができる。そして、彼はパニックに陥る。
RIZINからオファーがあった直後からサッカーボールキックとグラウンドでのヒザを練習に取り入れた。最初は凄く怖かったよ。どのポジションにいても安全に感じられなかった。それからRIZINルールに則した練習を続け、今ではグラウンドでのヒザ、サッカーボールキックを使えることが楽しみでならない。
特にグラップリングゲームにおいて、どういう攻撃ができるか。サバテロのようにコントロールしつつ、ダメージを与える攻撃をする。サイドを取った時の攻撃手段が、ユニファイドルールとはまるで違う。それがRIZINルールセットだ。自分のファイティングスタイルを変えることは、凄く興味深く、本当に楽しかったよ」
彼の苦手なパンチが、僕のベスト・パンチ。本当に松嶋にとって、僕は相性が悪い相手
――RIZIN特有の攻撃手段を繰り出すためには、その前の段階も大切になっています。ライアンはオーソドックスと戦う時でも、左に回ることが多いですね。アレはテイクダウンに移行しやすい角度を取ろうとしているのでしょうか。
「それもある。でも、一番の理由はベストショットがレフトハンドだからだ。僕の左は凄くパワフルなんだ。マツシマは左フックを被弾することも多い。彼の苦手なパンチが、僕のベスト・パンチ。本当にマツシマにとって、僕は相性が悪い相手ということになる。ちゃんと僕の左フックが見えていないと、大問題になるよ。
もしマツシマがスイッチしても、僕にはもう答が用意されている。彼がスイッチするなら、僕だってスイッチできる。僕の方が自分を通して、戦いやすい流れを創る。そんなファイトになるよ」
――今の話を伺っていても、コーチとしての経験が対戦相手の分析に凄く役立っていることが理解できます。戦略面も、テキストブックのような模範例を多く持っているかと。
「でもファイトはファイトだ。思い通りにならないことはいくらでもある。それでも、僕は相手の戦い方に自分の戦い方を合わせることができる。CFFCでリカルド・フォンテスと戦った時(2025年3月、左フックからパウンドアウト勝利)は、プレッシャーを掛けて戦った。アンソニー・ディレミーとのCFFCフェザー級タイトル戦で、そんな戦いをするとKO負けしていただろう。だから、レスリング主体のファイトをした(2025年5月、判定勝ち)。
それができるのはMMAを長年、休むことなく続けてきたからだ。どの局面でも戦えるだけでなく、何が必要かを考えて戦うことができる。ムエタイでも2試合、プロファイトの経験がある。ムエタイでもボクシング、レッスル、柔術でも戦える。MMAに必要なスタイルを、そのオリジナルのルールで戦えるだけの技術が僕にはある」
――引き出しが多いということですね。
「そうだね。試合が上手くいかない時は、違う手段と戦略に移行できる。そんな僕だからRIZINファイターも、一列に並べることができるんだ。どのファイターとも同じ土俵、違う土俵で戦うだけの技術があるから」
――松嶋選手との試合でどのようなMMAを見せるのか、とても楽しみです。
「何よりも大切なことは、エキサイティングな試合をすることだよ。試合をして何が怖いって、退屈な試合でファンをガッカリさせることなんだ。最高の試合ができたなら、KO負けしても構わない。ファンがそれまでの攻防を喜んでくれていたならね。15分間、固め続けて勝っても自分を許すことができない。絶対にそんな試合を日本のファンの前ですることはないよ」
――今後、RIZINでのキャリアアップをどのように考えていますか。
「この試合に勝って、チヒロ・スズキと戦いたい。彼のケガが癒え、完調でリングに戻ってこられるならね。手負いの相手と戦って連勝記録を創りたいなんて一切思わない。イージーファイトは必要ない。僕の目指すところはRIZINフェザー級王座だから。タイトル挑戦に繋がらないファイトに興味はないよ。
だからこそ、5月10日のマツシマとの試合もファンをがっかりさせない戦いをする。皆が見たい試合をするから、ぜひとも注目してほしい」
■視聴方法(予定)
5月10日(日)
午後12時30分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!
■RIZIN53対戦カード
<RIZINライト級選手権試合/5分3R>
[王者] イルホム・ノジモフ(ウズベキスタン)
[挑戦者] ルイス・グスタボ(ブラジル)
<スタンディングバウト特別ルール 無差別級/3分3R>
平本蓮(日本)
皇治(日本)
<フェザー級/5分3R>
高木凌(日本)
リー・カイウェン(中国)
<バンタム級/5分3R>
太田忍(日本)
金太郎(日本)
<女子51キロ契約/5分3R>
ケイト・ロータス(日本)
ケイティ・ペレス(米国)
<ライト級/5分3R>
雑賀ヤン坊達也(日本)
宇佐美正パトリック(日本)
<フェザー級/5分3R>
松嶋こよみ(日本)
ライアン・カファロ(米国)
<バンタム級/5分3R>
ダイキ・ライトイヤー(日本)
梅野源治(日本)
<62キロ契約/5分3R>
ジョリー(日本)
児玉兼慎(日本)
<フライ級/5分3R>
飴山聖也(日本)
平本丈(日本)
<フェザー級/5分3R>
中川皓貴(日本)
ジェイク・ウィルキンス(日本)
<フライ級/5分2R>
濱口奏琉(日本)
砂田華杜(日本)
<キック 62キロ契約/3分3R>
勇志(日本)
麻太郎(日本)
<キック 女子46キロ契約/3分3R>
上田樹那(日本)
北野ヒナタ(日本)
<キック 57キロ契約/3分3R>
祥汰(日本)
須藤智也(日本)




















