【KNOCK OUT65】戦渦の日々から、夢を掴む。ユリアン・ポズドニアコフ「KNOCK OUTの全てのベルトを」
【写真】とにかく明るい。本当の意味で自由を謳歌できるのは、彼がウクライナで厳しい時を過ごしていたからだろう (C)MMAPLANET
21日(日)、東京都渋谷区の国立代々木競技場第二体育館で開催されるKNOCK OUT65「THE KNOCK OUT 2026」で、KNOCK OUT-BLACKウェルター級王者ユリアン・ポズドニアコフが、松岡力と戦う。
Text by Manabu Takashima
昨年4月の初来日から3試合目、12月30日に早くもチャンピオンとなったポズドニアコフ。圧倒的な強さと躍動感ある試合で見せつけてきたウクライナ人、24歳のチャンピオンに初インタビューを試みた。
若くして戦争が原因で、母国を離れたポズドニアコフは、その機会に世界に踏み出す覚悟を決め、タイ経由で日本に辿り着いた。とにかく日本で戦うことが楽しくてならない様子のチャンピオン。その明るさの裏に存在する、歩み――とは。
チェコに住むようになってから、ようやく自由の身になれたと感じた。そして、夢に向かってもっと遠くへ足を伸ばすことができると思った
――ユリアン、6月21日に4度目のKNOCK OUT参戦が控えています。
「ようやくだよ。もう待ちくたびれた(笑)」
――今回もタイからの来日になるのですか。
「そうだよ。今はプーケットにいる。以前はバンコク郊外のシッソンピーノン・ジムで練習していたけど、僕のウクライナ人コーチがプーケットにジムを開いたからこっちにいるんだ。今では試合の準備は、ここプーケットで行っているよ」
――そもそもタイに拠点を置くようになったのは? やはり、ウクライナ紛争の影響でしょうか。
「僕が個人的に決めたことだけど、戦争が影響していないとはいえないね。ロシアの侵攻が始まってから1年、僕はウクライナにいた。でも父がチェコに避難していて、僕も父の下に身を寄せるようになったんだ。
チェコに住むようになってから、ようやく自由の身になれたと感じた。そして、夢に向かってもっと遠くへ足を伸ばすことができると思った。タイでトレーニングをすること、そして日本で戦うことはずっと夢だったんだ。子供の頃から、日本のアニメが大好きで。本当に色々なアニメを見ていたけど、一番はNARUTO-ナルトだったよ。でも、どんどん面白い作品が生まれてきて。他にもたくさん見ている(笑)。
日本のアニメには、アニメに留まらない何か特別に心に響くモノがあるんだ。結果、アニメだけでなく日本の武士道や他の文化も凄く興味深くなり、大好きになった。10代の頃から日本で戦うことが夢だったけど、ウクライナの小さな村に住んでいたから、そんなことが現実になるとは思ってもいなかった。戦争が始まったことでウクライナを離れ、チェコに移り住むようになった。そしてタイで練習しようと行動に移すことができた。
シッソンピーノン・ジムで練習をしていたある日、確か朝のムエタイ練習を終えて食事を摂っている時だった。ヤマグチさんが、ジムにやってきたんだ。最初は誰か分かっていなかったけど、シッソンピーノン・ジムのマネージャーからヤマグチさんがKNOCK OUTのボスだと聞かされた。そしてヤマグチさんが『日本で戦えるよ』と言ってくれた時は、その状況が理解できなかったぐらい感激した(笑)」
タイにいたからONEで戦う機会は何度もあった。ONEはムエタイで世界最高峰の舞台だけど、日本で戦うことには代えられない
――いやぁ、自ら人生を切り開いた故のマジックアワーですね。
「本当に信じられなかった。そして、一度チェコに戻って両親に会っている時に、マネージャーから『4月に日本で試合ができる』という連絡を受けたんだ。眠っていて夢を見ているんじゃないかと思ったよ。両親を呼んで、『目を覚ませ』と言ってくれって頼んだ(笑)」
――アハハハハ。
「最初はリョーキ(漁鬼)と戦う予定だったけど、レイ・ナカジマ(中島玲)に代わった。ただノンタイトルだけど、彼はウェルター級のチャンピオンだから、僕の力を見せつけてやろうと思った」
――そして勝利を手にしました。
「試合に勝ってタイトルマッチが決まった。でも、彼がケガをして今度こそリョーキと戦うことになった。とにかく初めて日本で試合をして、KNOCK OUTは僕にとってパーフェクトな場所だと感じた。スタッフの人達は皆一生懸命だし、ショーも凄かった。その方が大切だったかもしれない。
実のところ、僕はタイにいたからONEで戦う機会は何度もあった。ONEはムエタイで世界最高峰の舞台だけど、日本で戦うことには代えられない。物凄くモチベーションも高くなったし、毎日が本当に充実しているんだ。
2戦目でリョーキに勝ち、3戦目でナカジマに勝ってチャンピオンになった。2回目の日本も、3回目の日本も初めて日本を訪れた時のように最高の気分を味わったよ。試合だけでなく、日本にいることが本当に楽しくて。街を歩いて、食事をして、人々と触れ合う、全てが最高だ。何より、日本のファンはワールドベストだよ。僕が初めてKNOCK OUTで戦った時の気持ちは、今後一切変わることはなく持ち続けるだろうね」
――3月にオーストリアでルーマニア人ファイターのパウル・コルネアを破り、Vendetta Fight Nightの65キロ級チャンピオンになりました。それほど日本に心酔しているユリアンですが、このタイミングで欧州で戦ったのは?
「KNOCK OUTでチャンピオンになった時、ずっとタイにいて両親の顔を見ていなかった。だから家族に会いにチェコを訪れたんだ。両親と会って、少し休みたいと思っていた。1カ月ぐらい、練習もしないで過ごそうって。
でも、チェコにいる間に……以前、タイに移る直前に(※2024年12月)にパウル・コルネアと戦い、スプリットで負けたVendetta Fight Nightからオファーがあった。あの試合は、調整に失敗してずっと悔いが残っていたんだ。こういうとなんだけど、自分より弱い相手に負けてしまったからね。
あの時のリベンジの機会になり、ベルトも掛かった試合だ。でもベルトなんてどうでも良かった。金のためでもない。パウルに本当のユリアン・ポズドニアコフの力を味合わせてやりたかったんだ。KNOCK OUTチャンピオンの力を、ね。そして心を折ってやりたかった。その方が大事だった。
オファーを了承してから、オランダに行った。ただ場所を借りただけで、コーチなしで試合の準備を1人で全部した。自分の知識と、これまでの経験だけを頼りにして。僕にとっては、その点でチャレンジングな試合だったよ。そして、大会にはウクライナ時代の僕のコーチ、最初に指導してくれたコーチがウィーンまでやってきてくれた。
今、僕がタイで練習をして、日本でチャンピオンになれたのも、そのコーチがいてくれたおかげだ。彼の前で勝利することができて、本当に嬉しかった。判定勝ちだったけど、初回にダウンを奪うこともできたしね。欧州のプロモーションのベルトを巻けたけど、一番大きかったのはあの敗北の呪縛から解かれたことだ。もう、何も僕を縛ることなく日本で戦っていける」
――24歳になったばかりのユリアンですが、物凄く濃密な人生を生きていますね。では21日に日本で戦う松岡力選手の印象を教えてください。
「良いファイターだよ。タイ・スタイルだね。でも、僕を驚かすような動きは何一つない。毎日のようにタイ・スタイルの選手たちと練習を積んできているから。彼のように右ローキックが強いファイター達とね。彼の強い武器は右ローだけだ。ボディショットを怖がっているから、僕の力を見せつけてやろうと思う。
とはいってもKrushのチャンピオンだったし、根性があって良いファイターには違いない」
――どういうところが、タイ・スタイルなのでしょうか。
「動きが少ない。一つの場所に留まって、相手の動きを見て戦う。ルールはキックボクシングでも、動きはキックボクサーではないよ。特に日本のキックボクサーっぽくない。日本のキックボクサーは常に動いて、色々な攻撃を仕掛ける。でも、彼は一発に賭けている感じだ」
――なるほど、です。ユリアンはタイでトレーニングを積んでいますが、KNOCK OUTでは3試合ともBLACKルールで戦ってきました。REDルールで、首相撲フリーのファイトをしたいという気持ちはないですか。
「僕はムエタイ、ボクシング、キック、UNLIMITED、何でも戦える」
――UNLIMITEDも、ですか?!
「Why not ? 僕はKNOCK OUTの全てのルールのベルトを巻くつもりでいる。まぁUNLMITEDを戦うには、少しはレスリングを学ぶ必要はあるけどね。でも、問題ない。現状、UNLIMITEDルールで戦う予定はないけど、BLACKとREDはいつだって戦うことができる。それにタイではムエタイだけでなく、BLACKルール用の練習も日常的に採り入れているからね。どのルールであっても、誰とでも戦えるよ。どんなスタイルのファイターを相手にしてもね」
皆を驚かせる技を用意している
――KNOCK OUT特有の八角形リングでの試合は慣れましたか。
「問題ないよ。オーストリアでの試合はキックボクシング・ルールだけど、ケージでボクシンググローブをつけて戦った(※2024年12月の試合はMMAグローブ着用だった)」
――そうだったのですか!!
「だから八角形のリングでも、全く問題ないよ」
――では来週、どのような試合を日本のファンに見せたいと思っていますか。
「新しい僕だ。髭をカットして若返った僕の顔を見て欲しい。アハハハハハ。KNOCK OUTチャンピオンになった時とは外見が違うから、皆、僕だと分からないかもね(笑)」
――……。
「いや外見は大切だからね(笑)。ファイターとしては、前回の試合よりさらに成長している姿を見て欲しい。蹴りも強くなったし、パンチも強い。でも、もっと皆を驚かせる技を用意している。今は言えないけどね。皆、楽しみにしてほしい。とにかく日本で戦うことが待ちきれない。ファンの皆に、最高の試合を見てもらう。そのために全力で戦うよ」
■視聴方法(予定)
6月21日(日・日本時間)
午後12:45~U-NEXT
■KNOCK OUT.65「THE KNOCK OUT 2026」対戦カード
<KNOCK OUT-BLACKスーパーフェザー級(60キロ)王座決定戦/3分3R+ExR>
龍聖(日本)
小森玲哉(日本)
<KNOCK OUT-REDスーパーライト級(65キロ)選手権試合/3分3R>
[王者]デンサヤーム・ウィラサクレック(タイ)
[挑戦者]久井大夢(日本)
<KNOCK OUT-BLACKスーパーバンタム級(55キロ)選手権試合/3分3R>
[王者]森岡悠樹(日本)
[挑戦者]晃貴(日本)
<KNOCK OUT-BLACKウェルター級(67.5キロ)/3分3R>
ユリアン・ポズドニアコフ(ウクライナ)
松岡力(日本)
<KNOCK OUT-BLACKライト級(62.5キロ)/3分3R>
大沢文也(日本)
ニカ・パパヴァ(ジョージア)
<KNOCK OUT-BLACK 61キロ契約/3分3R>
レオナ・ぺタス(日本)
成尾拓輝(日本)
<KNOCK OUT-UNLIMITED 59キロ契約/3分3R>
チュームーシーフー(中国)
有川直毅(日本)
<KNOCK OUT-UNLIMITED 73キロ契約/3分3R>
木村“フィリップ”ミノル(ブラジル)
草MAX(日本)
<KNOCK OUT-UNLIMITED 61.5キロ契約/3分3R>
大雅(日本)
福永輝(日本)
<KNOCK OUT-UNLIMITED女子バンタム級(53.5キロ)/3分3R>
鈴木万李弥(日本)
リュウ・ユエアル(中国)
<KNOCK OUT-UNLIMITED 77キロ契約/3分3R>
宮原穣(日本)
神保克哉(日本)
<KNOCK OUT-BLACKフェザー級(57.5キロ)/3分3R>
古木誠也(日本)
河崎鎧輝(日本)
<KNOCK OUT-REDライト級(62.5キロ)/3分3R>
古村匡平(日本)
木村涼仁(日本)
<KNOCK OUT-BLACKスーパーフェザー級(60キロ)/3分3R>
辰次郎(日本)
宇山京介(日本)
<KNOCK OUT-BLACKフェザー級(57.5キロ)/3分3R>
福田拓海(日本)
雅治(日本)
<KNOCK OUT-REDフェザー級(57.5キロ)/3分3R>
竹内賢一(日本)
茂木豪汰(日本)
<KNOCK OUT-BLACKスーパーフェザー級(60キロ)/3分3R>
祐輝(日本)
荒井幸太郎(日本)
<KNOCK OUT-BLACKバンタム級(53.5キロ)/3分3R>
工藤“red”玲央(日本)
知花優太(日本)
<KNOCK OUT-UNLIMITEDスーパーフェザー級(60キロ)/3分3R>
石渡寛崇(日本)
藁谷兼介(日本)


















