【DEEP111】フライ級GP準々決勝で村元友太郎と対戦、宇田悠斗─01─「仕留めるために練習している」
【写真】自信の裏にある実力と練習について語ってくれた宇田。抽選会の村元に対する意見は後編にて(C)SHOJIRO KAMEIKE
11日(日)、東京都港区のニューピアホールで開催されるDEEP111 Impactでは、フライ級GPの準々決勝が実施される。抽選会の結果、宇田悠斗が村元友太郎と対戦することが決まった。
Text by Shojiro Kameike
1回戦では島袋チカラを超高速ヒジ連打で沈めた宇田。今回は「前の試合では見せていないものがある」と、その計り知れないポテンシャルをうかがわせるインタビューとなった。その自信の根拠とは――。
――先日はグランプリ準々決勝の抽選会の模様がインターネット上で放送されました。全選手リモート参加で和気あいあいと抽選会が進むなか、宇田選手だけが殺気だっているようにも見えました。あの時の心境から教えていただけますか。
「えっ、殺気だっているように見えましたか? 僕自身は何とも思っていませんよ。抽選会のなかでも言ったんですけど、選手みんな仲良いから外敵感があっただけです(笑)」
――知らない場所で、自身以外は全員知り合いのところに突然放り込まれたような……もしかして人見知りなのでしょうか。
「そうですね。人見知りなほうだと思います」
――地元の愛媛県から上京して、CAVEで練習し始めた頃はいかがでしたか。
「最初はメチャクチャ緊張していたので、自分から話かけられないし、他の人が話しかけてくれたら自分も話すような感じでした。たくさん人がいるなかに混ざって練習して、帰る――っていう。
もともと自分から人に話しかけることは少ないタイプなんですよ。みんなが自分に寄り添ってくれるほうで。だから、学生時代から『黙っていると怖い』って言われていました。自分としては、全然そんな気はないんです。だけど、話かけづらいって言われていて(苦笑)」
――それが現在は、どのように変化してきていますか。
「あまり変わらないです。みんな、そんなにワイワイするタイプではないので。もちろん話はしますよ。でも格闘技の話、技術の話とかが多いですね」
――では前回の島袋チカラ戦についてお聞きしたいのですが、試合後には「面白くない試合だった」というコメントがありました。あのヒジ連打によるフィニッシュは、面白くないどころか戦慄が走ったと思っています。
「まぁ、確かにそうかもしれないですね。1発目は、そんなに思いきり打っていないんですよ。シングルレッグでケージに押し込まれて、ワキを差し返すために相手の気を散らそうと思って打ったら――思いのほかクリーンヒットして。え、めっちゃ入ると。それで2回目は思いきり強く打ち込むと、相手がガクンと落ちたので。これは効いた、終わるなって連打しました」
――2発目で島袋選手もヒザを着きました。ただ、その後の連打は今まで見たことがないほど高速でした。
「自分も、あんなに速く連打したことはないです(笑)。何も考えていなかったわけじゃないですけど、あんなに出そうとは思っていなくて。ただ、石渡(伸太郎)さんから『離れ際は打撃というより暴力として出せ』と言われているんですよ」
――これはまた怖い表現ですね(笑)。
「アハハハ、打撃じゃなくて暴力っていうのが(笑)。あの展開では、相手の嫌がる攻撃を出せるヤツが強いと教わったんです。石渡さん自身、一緒に練習していても離れ際の打撃やヒジが巧いですからね。それを、いつも自分がやられていて……練習だから思いきり入れられることはないけど、石渡さんから『お前、今のはやられてるよ』としてくれるんです。だから、練習でも絶対に気が抜けないです。その経験が前回の試合では生きたと思いますね」
――あの展開でとっさにヒジの連打を打ち込めるというのは、普段の練習から自分の中に染みついているということかと思います。
「はい。トドメを差すための勝負勘というか。勝負どころで仕留めるために攻撃をまとめる、っていう練習をしています。あの展開ならワキを差し替えすか、ガブってバックに回るという選択肢もあると思うんですよ。実際、試合中もそれは考えました。でも仕留めに行ったほうが早いかなって。2発目のヒジで完全に相手の力が抜けていたので、あれは仕留められるっていう確信のもとに連打しました」
――島袋選手のステップと打撃は、ずっと見えていましたか。
「見えていました。最初は距離が遠いなと思っていたら、正面から飛び込んできたので。自分はカウンターをもらってしまうから、絶対に正面から飛び込まないです。だから、相手が正面から飛び込んで来るっていうことを考えていなくて……。そこで次に正面から飛び込んで来たらカウンターを合わせようとシフトチェンジしたら、思っていたよりプレスがかかっていました。
ずっと島袋選手はサークリングしていたじゃないですか。これは結構嫌がっているなと思ったんです。プレスかけたら攻撃を出してくるので、そこにカウンターを合わせるか。行けるなら自分からも飛び込んでパンチを当てに行こうかな、と。そこで島袋選手は二段蹴りとか出してきましたよね。これは面倒くさいなぁ、イチから距離を作り直そうと左フックを出したところにシングルレッグを合わされて。あのタイミングはバッチリでした。でも、相手がそこまでテイクダウンにこだわっていなかったのかな? ケージ際で一度落ち着いて対処しようかなと思ってからのヒジでした」
――島袋選手がシングルレッグで組んできたのは意外だったのですか。
「そうですね。あそこで組んでくるとは思いませんでした。組んで来るような構えではなかったし、カウンターで組んできた時はビックリしましたね。あぁ、組んで来るんだ、って」
――そのような試合展開と結果でも、ご自身としては面白い試合だとは思えなかったのですか。
「前の試合では、もっと打撃を見せたかったんです。右ストレート、左フックを出したり、その打撃でダウンを取ったりとか。それができなくて、自分の中で不完全燃焼みたいな感じがありました。もうちょっと試したかったというか」
――パンチを狙っていたのですね。試合も序盤から打撃中心の構えとスタンスでしたが、それは以前の構えとは異なっていたように思います。
「体のバランスが変わったと、自分でも思いますね。打撃はスパーリングよりフォームの練習のほうが多いんですよ。素振り、シャドー、サンドバッグ、ミット打ちとかで体の重心や体幹、足の使い方、バランスを見ながら――毎日1時間から2時間ぐらいやっています。自分も最初は一切できなくて。最初から石渡さんに『体のバランスがメチャクチャ悪い』と注意されていました。自分はずっと腰を怪我することが多かったんですよね。それも体のバランスや使い方が悪いから、腰に負担がかかっているんだよって言われて。それを直す練習をやってきて、だいぶ改善されてきたと思います」
<この項、続く>