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【DEEP127】リベンジ&タイトル戦=村元戦へ、KENTA「勝ってDEEP王者としてRIZINに出ることになれば」

【写真】壮絶な減量と、色々な想いが存在した3月の本田戦。計量の時と試合後のKENTA(C)MMAPLANET

17日(日)に東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP126、DEEPフライ級王座決定戦でKENTAが村元友太郎と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

3月の本田良介戦に勝利し、王座決定戦のチャンスが巡ってきたKENTA。本田戦は僅差の判定勝利だったが、試合2週間前に股関節を剥離骨折し、万全ではない状態での試合だったという。

今回ベルトを争う村元とは約1年3カ月前に対戦し、スプリット判定で敗れている相手。因縁の相手へのリベンジ、そして35歳・キャリア4年目のチャンスに挑む心境を訊いた。


ほぼ絶食状態から水抜きしたんですけど、水抜き中に倒れちゃって

――KENTA選手にとって初のタイトルマッチが迫ってきました。最初にこのオファーを受けた時の心境はいかがでしたか。

「やっとここまで来たかなって感じですね。もともと去年の5月に村元選手とやった時に、ここで勝ったらタイトルマッチがあるかもと言われていたのですが負けてしまって。今年に入って上半期のフライ級の試合で勝った選手で年内にタイトルマッチを組む方向だと聞いていて、それで僕が本田(良介)選手に勝って、村元選手が関原(翔)選手に勝って、ベルトを賭けて対戦することになったんだなと思います」

――まさに待ち望んだタイトルマッチのチャンスがやってきわけですね。

「そうですね。前回の村元戦の時は自分が連勝して駆け上がっていた流れの中でチャンスをもらったのに、それを逃してしまって少し心が折れていた部分もあったんです。

それで再起戦で渡部修斗選手に勝って、神龍誠選手とも戦って、本田選手に勝って。ちょっとずつ光が見えてきたような感じだったので、そこでまたチャンスをもらえてよかったと思います」

――その意味でも3月の本田戦の勝利が大きかったと思うのですが、あの試合を振り返ってもらえますか。

「試合に勝った今だから言える話なんですけど、実は試合前に股関節を剥離骨折していたんです。最初は肉離れと診断されて麻酔を打って試合したんですけど、実は折れていて………。しかも怪我をしたのが試合の2週間前で、そこから試合までほとんど歩けなかったんです。だから減量も食べる量を減らして最後に水抜きで落とすしかない、みたいな状況でした。

それでほぼ絶食状態から水抜きしたんですけど、水抜き中に倒れちゃって。最後は付き添いの友達に抱えられながら体重を測る→汗を出す→体重を測る……を繰り返して『もしリミットをクリアしていたら、そのまま担いで計量会場まで運んでくれ』と伝えて、それで計量をパスした感じですね」

――そこまで過酷な減量だったとは分からなかったです。

「ただ計量はクリアしてもリカバリーが大変で、水抜きしすぎたせいか点滴が刺さらないし、低血糖症になっているからブルブル震えて布団をかけられたまま動けないんですよ。病院の先生からも『明日試合は無理じゃないの?』という話にもなりました。ただあの試合の前に僕をずっと応援してくれていた地元の先輩が病気で危ないという状態で、その先輩が会場に行くことは出来ないから中継で応援すると言ってくれていたんです。その人に試合を見てもらえるのは今回が最後かもしれないと思って精神力だけで乗りきりました」

――その先輩のためにも勝たなければいけないという気持ちがあったのですね。

「はい。計量後はずっと『体が言うことを聞いてくれ』と祈り続けて、なんだかんだで試合当日はリカバリーで7~8キロ戻すことが出来たんです。それで病院に行って股関節に痛み止めの注射を打ってもらって、試合をしたんですけど、どうしてもそういう状態だったので体に力が入らなくて、あんな感じになってしまいましたね。結構SNSでつまらない試合だったみたいなことを言われたんですけど、実はそういう状態で戦っていました(苦笑)。

とにかく本田選手に勝たないとタイトルマッチには辿り着かないので、何が何でも勝つという気持ちだけで戦っていましたね。自分はいつも応援団が200人くらい来てくれるんですけど、自分のためだけではなく応援してくれる人たちからも力をもらいました。試合後にも先輩に向けてメッセージも送ったんですけど、先日亡くなってしまったんです。試合中は先輩のためにも勝とうと思って戦っていたので、その先輩のおかげで勝つことが出来たと思っています」

――まさに多くのことを乗り越えて掴んだ勝利ですね。

「はい。自分の中では精神的に強くなれた試合だったと思います」

神龍選手とああいう試合ができたという意味では、自分とやったあとの神龍選手の試合を見て少しずつ自信に変わってくるようになりました

――また昨年11月には神龍選手と対戦してスプリット判定までもつれる接戦となりました。

神龍戦は下馬評では圧倒的に不利だったんですけど、自分は普通に勝てると思って戦ったので『いい試合だったね』と言われても『俺は勝つつもりだったから』というのが正直な心境です。だからこそあそこで神龍選手に負けたことで結構メンタルがやられて、あそこで神龍選手に勝てないようでは×世界とかRIZINで戦うと言えるレベルじゃないと思ってしまいました。

でもあれから神龍選手がホセ・トーレスと接戦を演じたり、RIZINでも勝っている姿を見て、逆にそれが自信に変わったというか。日本でトップの神龍選手とああいう試合ができたという意味では、自分とやったあとの神龍選手の試合を見て少しずつ自信に変わってくるようになりましたね。あと僕がダウンを奪ったパンチが後頭部だったと言われるんですけど、自分の腕が側頭部に当たった感触があったし、腕がぶつかった場所も覚えているんですよ。

映像だったら後頭部に見えるかもしれないですが、僕の前腕が耳裏に思いっきり当たったのが分かったので、あれを後頭部だと言われるのは正直不服な気持ちはあります」

――あの試合で得た手応え、あと一歩足りなかったところはどこだったと思いますか。

「神龍選手が途中から戦い方を変えてきて、フィニッシュするというよりも抑え込みに来ているのは分かりました。正直、あそこで極めに来てくれたり、パウンドを打ってきてくれれば、自分も隙間を作ってスイープできるんですけど、完全に神龍選手が抑え込み中心でコツコツ殴る戦法に変えてきて、これだと自分が逃げるチャンスがないなと感じました。そういう試合運びは上手かったなと思いますし、自分の通用するところも分かった試合ですね」

――そして今大会では村元選手と約1年ぶりの再戦となりました。

「前回村元選手とやった時は、自分の力をほぼほぼ出していないんじゃないかなという試合内容でした。それまで自分は6連勝していて、いつも絶対に勝つという気持ちを強く持って戦っていたんですけど、ここで勝てばタイトルマッチと言われたことで、初めて消極的になっちゃったんですよね。

ここで負けたらどうしようとか、今まで積み重ねたものがなくなっちゃうとか、変なプレッシャーを初めて感じちゃって。いざ試合になったら負けられない・負けたくないという気持ちが前面に出てしまって、相手のことを見てしまって自分から手を出せなかったです」

――勝ち負け以外のことを意識しすぎてしまったのですか。

「そうですね。それまでは自分からガンガン打撃でいって投げたりしていたのに、すごく消極的な試合でズルズル判定までいって、どっちつかずの試合になって負けてしまいました(苦笑)。今回は前回と違って前に出て、気持ちを前に出していこうと思っています」

――村元戦はKENTA選手にとって大きな教訓になりましたか。

「あの時、村元選手はDEEPとRIZINで交互に試合をしていて、僕はDEEPフライ級グランプリに出ている選手たちを一人ずつ倒して下から上がっている状態で、ここで村元選手に負けて今までの勝ちをすべて持っていかれたらどうしよう?とか、余計なことばかり考えていました(苦笑)。しかも村元選手は僕に勝ってタイトルマッチをやりたいとマイクアピールしていて『俺が今まで勝ってきた相手に負けている選手が何を言っているんだよ!?』と思ったり、何か変な感情が生まれた試合でしたね」

――その反省も踏まえて、今回は自分の力を出し切ることがテーマですか。

「はい。僕はもう今年35歳で、後悔のないように1Rから出力しようかなと思っています」

――改めてベルトに対してはどのような想いを持っていますか。

「僕は32歳でプロデビューして、3年以内にベルトを獲るという目標を掲げていたのですが、ここまで来るのに3年半かかりました。ようやく掴んだチャンスなので絶対にモノにしたいです。また自分はずっと柔道をやっていて、当時から日本一になりたいという目標があったのですが、全日本ジュニアは5位、講道館杯も全日本選手権ベスト16止まりで、一度も日本一になったことがないんです。だからMMAではベルトを欲しいという気持ちが大きいですね」

――柔道時代には日本一に手が届かなかったからこそ、DEEPのベルトを巻いて自分がやってきたことの形を残したいと。

「そうですね。しかも牛久(絢太郎)選手、伊澤(星花)選手、CORO選手…自分の周りの選手はみんなDEEPでチャンピオンになっているんですよ。それこそジムの代表の横田(一則)さんはDEEPの2階級王者ですし、DEEPという舞台で自分が本気でやってきたMMAの形を残したいという想いがあります。今DEEPのフライ級には色んな選手が集まっていて、ベルトの価値も上がっていると思うので、そのDEEPでベルトを獲ることに意味があると思っています」

正直『なんでこの選手がRIZINに出ているんだろう?』と思うような選手もいます

――今年はRIZINでのフライ級グランプリが開催されていますが、DEEPのベルトを巻いたあとはRIZINフライ級の選手たちとも戦っていきたいですか。

「僕自身、佐伯代表にRIZINに出たいということは話していて、実際に僕はRIZINに出たことがある選手と試合をして勝ったこともあるし、正直『なんでこの選手がRIZINに出ているんだろう?』と思うような選手もいます。今年のRIZINフライ級グランプリにもDEEPの選手がたくさん出ていて、チャンピオンになっていない選手も出ているので、自分も出たかったなという気持ちもありました。

でも今はDEEPでベルトを巻くチャンスをいただいて、だったらDEEPのチャンピオンになってRIZINに出ればいいじゃんと思ったんです。村元選手に勝ってDEEP王者としてRIZINに出ることになれば、いきなり上位選手と絡むことだってあるだろうし、そういった意味でもしっかりDEEPでチャンピオンになって、それからRIZINに出たいと思います」

――当日は超満員の後楽園ホールでのタイトルマッチになると思います。最後にファンのみなさんにメッセージをいただけますか。

「僕のことを応援してくれている人たちは、僕がデビューする前から知り合いだったり、ずっと昔から応援してくれている人が多いんですね。しかも僕はK-Clannに入ってヒザを怪我して1年間練習が出来なかったり、デビューするまでに本当に色んなことがあったりして、デビューする前に地元に帰ろうと思ったこともありました。

みんな僕のそういう過程を知ったうえで応援してくれているので、亡くなった先輩もそうですし、自分を応援してくれている人たちの想いも背負ってベルトを獲って、みんなにもベルトを巻いてもらって喜んでもらいたいなと思います」

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