【Pancrase360】復帰戦でベアナックル戦士キルシュと激突、天弥「血眼になって殴り合いたい。でも――」
【写真】ヤンチャ坊主の印象が強かった天弥だが、敗戦を経て大人になっていた。しかしステゴロについて語る時は嬉しそう――つまりファイターとしてのギラギラは消えていない(C)SHOJIRO KAMEIKE
21日(日)に東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase360で、天弥がドイツのクリストフ・キルシュと対戦する。
Text by Shojiro Kameike
今年4月、ライト級KOPの雑賀ヤン坊達也に挑み、壮絶なKO負け。この試合で追った怪我も癒え、天弥が8カ月振りの試合に臨む。復帰戦の相手はMMA戦績1勝1敗のキルシュだが、ベアナックルボクシングで無敗+ラウェイの試合経験もあるファイターだ。ここで再び殴り合いも期待される天弥だが――ヤン坊戦の敗北を経て「脱ステゴロ」を語る。
ヤン坊選手のことを甘く見ていましたよね。僕たちはボクシングで勝てると考えていました
――次の試合に関するお話の前に、12月7日のTORAO山口大会に出場した大地選手は天弥選手&海飛選手の兄弟なのですね。
「はい、兄弟です(笑)。僕が3番目で海飛が長男、大地が次男ですね。先日の試合は、僕は自分の試合前だから山口に帰っていないけど、海飛は応援に行っていました」
――3兄弟がパンクラス、DEEP、そして修斗と違う場所で戦っているのも浪漫です。以前のインタビューで4兄弟だと聞きました。
「一番下は格闘技をやっていないんですよ。大地は就職していて、サラリーマンやりながらMMAを続けると」
――なるほど。名前も海、大地、天……。
「天(そら)と海と大地ですね。名前の由来はまず親父の名前に星という漢字が入っていて、長男が海王星、次男が地球、僕が天王星。4男は名前に月が入っています」
――美しい! ロマンチックすぎる名前の家族ですね。
「親父もPRIDEとか格闘技が大好きだったので、今は息子たちがMMAを戦っているのを一番喜んでくれていますよ」
――兄弟3人全員がベルトを巻いたら、それこそMMA史上に残る快挙です。
「親父も全員のベルトが欲しいと言っていました(笑)」
――ただ、前回は天弥選手が雑賀ヤン坊達也選手に敗れ、ベルトに届きませんでした。試合後にSNSでは、病院で治療を受けている写真を公開しています。それだけの負傷があったということですか。
「あれは『とりあえず大丈夫だよ』という意を込めて撮った写真だったんですよ」
――いや、逆効果ではないですか(苦笑)。余計に心配が増えるような衝撃の写真でした。
「アハハハ。あの時は上アゴと、上の歯が3本グチャグチャになっている状態でした」
――えっ!? 試合直後は右目付近と口から出血が見られましたが、それほどだったとは……。
「今も上アゴにプレートが入っています。病院でも、下アゴを骨折する人は多いけど上アゴは珍しいって言われましたね。
右目は右フックがかすって切れたと思うんです。その時に一瞬、視界が真っ暗になって、気づいたら顔がマットに着いていました。正直、フィニッシュのヒザ蹴りは見えていなくて。意識は飛んでいなかったけど、『なんかエグイのを食らったな』という感触だけはあったんですよね」
――最後のヒザ蹴りで上アゴを骨折していたと。試合展開としては、最初に打撃でグラつかせたのは天弥選手でした。しかし差し合いでヤン坊選手が有利になったところから変わってきたように思います。
「病院で大沢(ケンジHEARTS代表)さんと敗因について考えていて――ヤン坊選手のことを甘く見ていましたよね。僕たちはボクシングで勝てると考えていました。実際にパンチを効かせたけどヤン坊選手に組まれた時、自分も一緒に休んでしまって。
実は自分たちの中に、組みをやるプランがなかったんですよね。打撃で圧倒し、1~2Rで倒すと。でも、そこで組みに付き合わされたというか。自分が両腕を差し上げた時、ヤン坊選手にオーバーフックで抱えられて、自分も休んでしまったのがよくなかったです」
――その際に天弥選手の呼吸を感じたのか、上下左右の立体的な打撃で盛り返すヤン坊選手も流石でした。
「ヤン坊選手もKO勝ちは多いじゃないですか。あの人はリーチが長くて、さらにパンチのタイミングが不規則なんですよ。自分でもそう言っていたと思いますけど、正統派のボクシングではなく我流でやっていると。ムチみたいにしなって、後から拳が飛んでくるから、僕も試合中にリズムが掴めなくて。3Rは腹を括ってインファイトを仕掛けていきました」
親父から『お前、初めてステゴロで負けたんじゃないか』って言われました
――それこそ実際に相対してみないと分からない部分ですね。結果は天弥選手がKO負け。試合後は入院し、スパーリングを再開したのも11月中旬だったのですか。
「入院は3週間ぐらいでしたけど、スパーリングができたのは結構最近でした。やっぱりコンタクトのある練習をすると、上アゴに入れたプレートがズレると言われていて。それと歯が3本折れていたんですけど、そのうち2本は奥にグチャって入り込んでいたんですよ。
だからまず歯の矯正から始めて、そっちのほうが治るのに時間が掛かりましたね。だから体を動かし始めてもフィジカルと打ち込みぐらいで、強度の高いスパーはできていなかったです」
――強度の高い練習ができない、試合にも出られないなかで焦りはなかったですか。
「いや、なかったですね。MMAを戦っていれば、こういうこともあるかなって。これもカルマなのかなと思いました。アハハハ」
――カルマ、ですか。天弥選手としては空手時代から、ここまでのKO負けを喫したこともなかったのではないですか。
「はい、今までで初めての経験でしたね」
――過去、プライベートでは?
「それも含めて初めてです。だから逆に吹っ切れましたよね。本当に負けたことがなかったので――そういう状況になれば、どんな汚い手を使ってでも生き残っていましたし」
――汚い手を使って(笑)。
「試合後は応援に来てくれた人たちのところへ挨拶に行ったんですよ。その時、一番に親父から『お前、初めてステゴロで負けたんじゃないか』って言われました。自分も、そうだねって答えて」
――名前の由来もロマンチックですし、ステゴロで初めて負けたからこそ気持ちもスッキリするというのもロマンです。特に天弥選手の場合、初めてインタビューした時はヤンチャな雰囲気がありましたが、今日はすごく大人になっているなと驚いています。
「えっ、変わりましたか!? 大人になったということですかね。負ける時は負けるんだなと思ったし、いろいろとスッキリしました。負けたおかげ……なんて絶対に言いたくはないけど、それが格闘技なんだよなって」
――負ける時は負ける、それもMMAの現実です。重要なのは負けた後にどうするか。
「そうですね。まず休んでいる期間に体重が90キロを超えていたので、食トレを始めたんですよ」
――食トレというと?
「僕は海外の選手に対して『アイツらは体が強い』『リカバリーできる。胃腸が強い』とか言っているのを聞くと、『自分も胃腸が強くなればいいじゃん』ってシンプルに思うんです。僕もアゼルバイジャンで練習したことがあるけど、同じ人間だから自分もできると考えていて。現地で同じものを食べて、同じトレーニングをしていたら僕も体は大きくなりましたし。
前回の試合後はガンガン食事して、フィジカルトレーニングして。そうやって日常から世界を意識してやってきました。するとハイクリーンで120キロまで挙がったんですよ」
――ハイクリーンで120キロ!?
「結構凄いって言われました。格闘家でハイクリーン120キロという人は、そんなにいないと思うので。そのあたりもどんどん伸ばしてきましたね」
ド突き合いたい気持ちを抑えてMMAをすることが、今回のテーマだと思っています
――ということは、復帰戦で海外ファイターと対戦することを意識していたのですか。ここでステゴロというわけではないですが、ベアナックル戦士を迎え撃つことになりました。
「面白いですよね。まず自分としては12月に復帰戦をやりたい、相手はランカーなら誰でも良いと伝えました。その時点では試合が決まっていたISAOさんと粕谷優介さんは試合が決まっていたんですよ。それ以外で交渉してくれた相手は見事に断られ続けたらしくて。
そんななかでパンクラスさんから『ドイツの選手から売り込みが来ているけど、どうする?』と聞かれて――プロフィールを見たらベアナックルの試合で強いというから即、やりますって答えました(笑)」
――ベアナックル戦士と聞いて気持ちも上がりましたか。
「アハハハ、それは上がりますよ。ベアナックル戦は無敗らしくて、メチャクチャ楽しみですよね」
――キルシュの試合映像、特にラウェイやベアナックル戦を見ると、首相撲でヒジではなく右拳を入れて来る。相手のパンチにも怯むことなく、しっかりと正確に素手パンチを当てていく。よほど気持ちが強いファイターなのだろうと思います。
「僕もその点は警戒しています。もう一つ今回の試合のテーマは、僕の向上心というか……正直言えば、ステゴロファイターとド突き合いたいですよ。それこそ血眼になって殴り合いたいです。でもその気持ちを抑えてMMAをすることが、今回のテーマだと思っています」
■視聴方法(予定)
2025年12月21日(日)
午後1時~ U-NEXT
■Pancrase360 対戦カード
<ウェルター級KOPC/5分5R>
[王者] 佐藤生虎(日本)
[挑戦者] ゴイチ・ヤマウチ(ブラジル)
<フェザー級王座決定戦/5分5R>
栁川唯人(日本)
カリベク・アルジクル ウール(キルギス)
<バンタム級王座決定戦/5分5R>
井村塁(日本)
田嶋椋(日本)
<バンタム級王座決定戦/5分5R>
コシム・サルドロフ(タジキスタン)
佐藤龍汰朗(日本)
<女子ストロー級王座決定戦/5分5R>
KAREN(日本)
本野美樹(日本)
<フェザー級/5分3R>
オタベク・ラジャボフ(タジキスタン)
Ryo(日本)
<ライト級/5分3R>
粕谷優介(日本)
ISAO(日本)
<ライト級/5分3R>
天弥(日本)
クリストフ・キルシュ(ドイツ)
<ウェルター級/5分3R>
内藤由良(日本)
髙橋攻誠(日本)
<バンタム級/5分3R>
松井斗輝(日本)
荒田大輝(日本)
<フライ級/5分3R>
浜本キャット雄大(日本)
岸田宙大(日本)
<ライト級/5分3R>
松岡嵩志(日本)
神谷大智(日本)
<フライ級/5分3R>
菅歩夢(日本)
クーパー・ロイヤル(豪州)
<フライ級/5分3R>
齋藤楼貴(日本)
小澤武輝(日本)
















