【Grachan79×Herios02】手塚基伸と防衛戦&リベンジへ、伊藤空也ー01ー「あの試合後に目標ができた」
【写真】手塚との再戦を語るうえで、伊藤のファイトスタイルの変化は欠かせない(C)SHOJIRO KAMEIKE
21日(日)、東京都江東区の有明TFTホール1000で開催される「Grachan79 × Herios02」。当日は二部制でGrachan79が昼興行、Grachan Herios02が夜興行として行われる。Herios02のメインではバンタム級王者の伊藤空也が手塚基伸の挑戦を受けることとなった。
Text by Shojiro Kameike
昨年、豪州エターナルMMAとグラチャンの2冠王となった伊藤。今年5月にはRoad to UFCに出場するも、初戦でシンガポールのカイ・シャンに判定負けを喫した。その後、復帰戦として9月にエターナルMMAの王座防衛戦が組まれるも、対戦相手のマッティ・イアンの負傷により試合は中止に。改めて今回のグラチャンで再起戦を迎える。
挑戦者の手塚とは4年前の2021年12月に対戦しており、開始早々52秒で腕十字を極められ、当時保持していたベルトを手放した。前戦と同じ形=伊藤が王者、手塚が挑戦者として戦うリマッチ。インタビュー前編では、敗北を経て進化してきたファイトスタイルについて訊いた。
MMAの技術は年々、必要不可欠なものが増えている
――今年は5月にRTU出場後、9月のエターナルMMAでの防衛戦中止を経て、7カ月振りの試合となります。初防衛戦の相手である手塚選手とは2021年12月以来4年振りの再戦となりますが、その間に伊藤選手のファイトスタイルも大きく変化してきました。
「はい、それは間違いないですね」
――まず前回の手塚戦を振り返った際に「僕が色気を出しすぎてしまった。金太郎戦(2021年7月に判定負け)で、激闘をして評価された結果、金太郎戦以上のものを求められていた」という旨の反省がありました。その後から伊藤選手が安定した試合の組み立てを見せるようになったと思います。
「はい。そこから練習内容や練習方法を大きく変えました。手塚さんに負けた当時の自分はまだ若手で、そこまで経験もなく勢いだけで戦っていたというか。あとは20代前半という若さとタフさだけで……。試合後、自分に足りないものを客観視して、いろいろと取り組んで足りないものを取り入れていったんです」
――当時、自分に足りないと感じたものは何だったでしょうか。
「間違いなく、柔術ですね。エターナル、そしてRoad to UFC——MMAの世界標準を見て見ると、求められるのはストライキング力と、黒帯クラスの柔術力だと思います。この2つは絶対必要条件であり、そういった舞台に出るための資格ですよね。と考えた時に、僕に足りないのは柔術でした。
それまではレスリングとスクランブルしか取り柄がなくて。もちろん柔術をやっていなかったわけではないですが、細かい動きやグラップリングに特化した技術が足りない。そこでトライフォース柔術アカデミーのクラスに参加するようになりました」
――打撃やレスリングの重要性ばかり取り上げられることが多いものの、UFCをはじめ海外のMMAを見ると、やはり潜りなどガードポジションからの展開は柔術の動きによるものですよね。
「特にUFCのファイターは皆それができますから。MMAの技術が年々進化している――いや、進化しているというより『必要不可欠なものが増えている』という状態で。『これはできなければダメですよ』と、僕たちに求められているものが増えていますよね。
たとえばエターナルで他の階級の試合を見ても、皆それだけの動きができている。Road to UFCを勝ち上がっている選手は尚更で」
――そんななか、伊藤選手はグラチャンの試合でも左ハイ、左ミドルと綺麗な蹴りを見せてきました。あの蹴りは昔から使っていたものですか。
「いえ、昔は左ミドルを蹴ることはできませんでした。とにかく蹴りがヘタクソで、禅道会時代の先輩から『ムエタイの左ミドルを蹴れないとダメ』だと言われたんです。MMAで蹴っても掴まれない左ミドルを。そこからムエタイのジムにも通い始めて、まずその成果が首相撲と左ミドルに表れてきましたね。たぶん骨盤をしっかり使って蹴っているから、見た目も綺麗に感じたんじゃないかと思います」
――左ミドルはムエタイで、左ハイはどうでしょうか。あれはムエタイではなく空手の要素も大きいように感じました。
「そうですね。左ハイは少し空手の要素も入っています。ウマル・ヌルマゴメドフも似たような蹴りを出していて。やっぱり柔術をやって、たとえ蹴りを取られてテイクダウンされても大丈夫という意識になっていたことは大きいです。
確かに以前は、キャッチされないような蹴り方をしていました。でもMMAは常に、その先を考えて取り組んでいかないといけない。蹴りが当たった後、あるいは蹴りを掴まれてからの展開、蹴りを出せないぐらい相手がガンガン出て来た時のこととか。そういうことを想定して取り組んでいると、今はさらにその先を見ることができています」
手塚さんと戦った時の柔術力、グラップリング力は今の半分もなかった
――なるほど。
「やっぱり格闘技って、まず打撃は効かせないといけないと思うんですよ。それは意識しています。昔のムエタイ選手のサムゴーのように、ガードごと壊す左ミドルとか。ジャブも――たかがジャブではなく、MMAグローブだとジャブだけでKOできますからね。
そうやってポイントを取るための打撃ではなく、効かせるための打撃——これをやったら相手は嫌がるだろうということを自分は対グラップラー、対レスラーで意識して練習してきました」
――その打撃について手応えを感じ始めたのは、いつ頃でしょうか。
「手塚さんに負けて1年後……いや、2023年に入ってからですね。グラチャンの15周年記念興行の頃、またイチから打撃を見直しながら練習していたんです。それこそジャブでKOできるぐらい、しっかりとナックルを当てる打ち方とか。それで成果を実感できたのは、15周年記念興行の高須将大戦でした。
高須選手は柔術もレスリングもできる。そうなると左ミドルがキーポイントとなると思って。実際に試合では左ミドル、あと右カーフもバンバン入りましたね。その蹴りがあるから左ハイも決めることができたんだと思います」
――柔術に取り組み、打撃も改善してから迎えた2024年にはエターナルとグラチャンのベルトを獲得します。エターナルではタフな試合を展開しながら終盤に盛り返して判定勝ち。そしてグラチャンでは粘る王者を終盤に削り倒すという、新たなステージを見せたように思いました。
「エターナルの試合は1Rを僕が取って、2Rは確実に取られたじゃないですか。3Rが分からず、4Rが相手で5Rは分からないというギリギリの勝負でした。当時はまだ試行錯誤の部分もあって、今であれば戦い方も変わってくるとは思います。ただあの時は、最終ラウンドで打ち返していなかったら負けていましたよね」
――序盤は自分が抑えていても、それが体格差なのか技術差なのか……どちらにしても、徐々に削られてくることは多いです。そんななか、最後にひと踏ん張りできるかどうか。続くグラチャンのTSUNE戦でも、最後に力を出し切っていました。
「TSUNE選手との試合については、2Rの時点で勝てるという確信を得ていました。その時に相手はすごい力を使っていて、腕もパンパンになっている。ラウンドが終わってコーナーに戻る時も息切れしていて。『もう3Rめは厳しいんじゃないか』と思って。僕はもともと競り合いが得意で、相手が落ちていくなか自分はギアを上げていきました」
――相手が力を使っていることに対し、自分も力を使って押さえに行きすぎてしまうため、自身がヘロヘロになってしまうパターンもあります。伊藤選手の中では、そのパターンはありえませんか。
「トライフォースで柔術とグラップリングを練習していて思うのは、『これをやられたらグラップラーは一番嫌だろうな』『キツイ展開になったら、これをやってくる』というものが分かってきました。もしテイクダウンされても自分がこうしていれば、その先はないだろうというものとか」
――相手にとっては、どんどん進む道も戻る道も防がれてしまう。そうなると心理的にもキツイでしょうね。
「今の自分と比べて、たぶん手塚さんと戦った時の自分の柔術力、グラップリング力は半分もなかったと思います。あの試合後に自分の中で目標ができ、いろいろやってきた結果、再び手塚さんと対戦するのは今だと思いました」
<この項、続く>
■Grachan Helios02 視聴方法(予定)
12月21日(日)
午後5時~ U-NEXT
■Grachan79 視聴方法(予定)
12月21日(日)
午後1時30分~ GRACHAN放送局、GRACHAN公式YouTubeメンバーシップ
■Grachan Herios02 対戦カード
<Grachanバンタム級選手権試合/5分3R>
[王者] 伊藤空也(日本)
[挑戦者] 手塚基伸(日本)
<Grachanウェルター級王座決定戦/5分3R>
林RICE陽太(日本)
山田哲也(日本)
<フライ級/5分2R+ExR>
三澤陽平(日本)
増田比呂斗(日本)
<フライ級/5分2R+ExR>
宮内拓海(日本)
平野紘希(日本)
<バンタム級/5分2R+ExR>
野澤海斗(日本)
足立晃基(日本)
<バンタム級/5分2R+ExR>
長野将大(日本)
大村友也(日本)
<フェザー級/5分2R+ExR>
佐藤藏ノ介(日本)
吉田剛(日本)
■Grachan79 対戦カード
<フライ級/5分2R+ExR>
能坂陸哉(日本)
宮島夢都希(日本)
<ライト級/5分2R+ExR>
アリアン・ナカハラ(カナダ)
西條貴陽(日本)
<フライ級/5分2R+ExR>
二之宮徳昭(日本)
AXEL RYOTA(Tri.Hstudio)
<ヘビー級/5分2R+ExR>
井上悠司(日本)
瓜田幸造(日本)
<ヘビー級/5分2R+ExR>
佐々木克義(日本)
パウロ・フェレイラ(ブラジル)
<63キロ契約/5分2R+ExR>
おはぎ(日本)
竹下登(日本)
<バンタム級/5分2R+ExR>
渡部大斗(日本)
中嶋紳乃介(日本)
<フライ級/5分2R+ExR>
小松原翔太(日本)
金森琢也(日本)
<アマチュア/3分2R>
佐藤珀虎(日本)
飛鳥成宣(日本)


















