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【Pancrase360】笑顔の裏の使命感=サルドロフ「ベルトを巻くことでプロMMAが認められるように」

【写真】この笑顔の裏に、国の現状を変えるための強い決意があったとは……(C)MMAPLANET

21日(日)に東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase360。5階級でタイトル戦が組まれた同大会で、コシム・サルドロフが佐藤龍汰朗とミドル級王座決定戦を戦う。
Text by Manabu Takashima

20日(土)に行われた計量及び調印式では、対戦相手の佐藤と肩を組み非常にフレンドリーな雰囲気に醸し出していた。「空港に着いてから、本当に日本の人たちには親切にしてもらっている。だから、感謝の気持ちの表れなんだ」と言うサルドロフ。ここでは4日にリモートで行った彼のインタビューをお届けしたい。

計量で見せた笑顔の裏には――母国でプロMMA開催が許されるようになるためにベルトを巻く――という強い意志が存在していた。


タジキスタンではタジMMAFがファイナンシャルのサポートもしてくれて、遠征費、トレーニングに掛かる費用も全て用意してくれる

――21日にパンクラスのミドル級王座決定戦を戦います。今の気持ちを教えてください。

「タイトル戦に向けて2カ月間、トレーニングキャンプを行ってきた。順調に準備は整っている。21日にはケージの中でニュー・コシムの姿を見てもらえるだろう」

――9月の平田旭選手との試合は一方的な内容でしたが、試合のデキについてどのように思っていましたか。

「今回と同じように、しっかりと試合の準備ができていた。そしてプラン通りに勝ててハッピーだったよ」

――試合後に「日本の皆さんと、家族になりたい」というマイクがありました。すぐに次のオファーがあった時の気持ちは?

「また日本で戦えることが決まって、本当に嬉しかった。日本を初めて訪れたにも関わらず、日本のファンの皆はタジキスタン人の僕らを尊重してくれた。それに日本食が凄く美味しかった(笑)」

――減量もあったと思いますが、日本食が気に入りましたか(笑)。

「魚が美味しかったよ。本物の寿司を食べることができた。僕は日本、日本のファン、日本の人々が大好きなんだ。もう家族のように感じている。そして2度目のパンクラスでの試合が、タイトル戦になった。絶対に皆に喜んでもらえる試合をしてみせるよ」

――ところでコシムはプロ戦績こそ5勝0敗ですが、アマチュアで20戦のキャリアがあります。そしてIMMAF世界大会で2度優勝(2023年と2024年。ともにミドル級)、銀メダル(2021年ジュニアの部ウェルター級)を一度獲得。素晴らしい成績を残していますが、それ以前に何か格闘技の経験はありましたか。

「MMAの前に8年間、フリースタイル・レスリングの練習をしていて5度タジキスタン王者になった。マスター・オブ・スポーツの認定を受けたけど、国外に遠征したことはなかった。タジMMAFの支援があるから、アマMMAを戦うようになったんだ」

――支援とは?

「タジキスタンではタジMMAFが、MMAの普及に本当に力をいれていてアマチュア・ファイターが、良い環境で戦うことができるんだよ。連盟の会長がファイナンシャルのサポートもしてくれて、遠征費、トレーニングに掛かる費用も全て連盟が用意してくれる」

――それは凄いですね……。7年前、キルギスのMMA大会を取材した時、タジキスタン人選手はキルギス人ファイターの噛ませ犬のような存在でしたが、タジMMAFの成立とともに急激に力をつけたのですね。

「確かに以前はアマチュアでも、そんなに強くなかった。ただタジMMAFのアスリートへの支援が始まって、みるみる強くなったんだ。もともとタジク人は山岳民族で、肉体的には屈強な人間が多い。支援を受けることで、一気に能力が開花した。今やIMMAFでもトップ3の強豪国になったよ」

タジキスタン国旗を世界のMMAで掲げれば、プロMMAも認められるようになるだろう

――それだけアマチュアで強くなり、国内のプロMMAはどのような状況なのですか。

「実は政府からプロMMA大会の開催は、まだ禁じられている。でも、これだけタジMMAFが力を入れて、実力をつけているのだから将来は認められると期待している」

――ではプロキャリアは海外で積むしかないのですね。

「タジMMAFの会長が、ドロップファイト・プロモーションという組織を創り、IMMFで良い結果を残したファイターに対して、海外で試合ができるようプロモートしてくれている。僕やオタベクはパンクラスで。他の選手は中国のJCKやWKGで戦っている。僕らは国内の状況が変えるためにも、海外のハイレベルな大会で戦って良い結果を残さないといけない。タジキスタン国旗を世界のMMAで掲げれば、プロMMAも認められるようになるだろう。その力があると信じている。

僕がまずパンクラスでチャンピオンになり、オタベクが続く。他のファイターが、別の大会でベルトを巻くことでタジキスタンでもプロMMAが認められるようになる。そう信じている。そのためにも21日は絶対にベルトを巻くつもりだ」

――では、その大切なタイトル戦で戦う佐藤選手の印象を教えてください。

「彼の試合はチェックした。他の大会(NEXUS)でチャンピオンになっている。僕とは違うスタイルの良いファイターだけど、僕の打撃とレスリングの方が上だ。これまでアマチュアでも強い相手と戦ってきた。そんな僕の力を見せつけるつもりだ。

とにかく良い試合をするので、会場で僕の試合を見て欲しい。全力で戦うから。ベルトを巻いて、寿司を食べまくりたい(笑)。寿司でお腹がいっぱいになる準備もできている」


■Pancrase360 計量結果

<ウェルター級KOPC/5分5R>
[王者] 佐藤生虎:77.1キロ
[挑戦者] ゴイチ・ヤマウチ:77.0キロ

<フェザー級王座決定戦/5分5R>
栁川唯人:65.65キロ
カリベク・アルジクル・ウール:65.6キロ

<バンタム級王座決定戦/5分5R>
井村塁:61.1キロ
田嶋椋:61.0キロ

<ミドル級王座決定戦/5分5R>
コシム・サルドロフ:83.65キロ
佐藤龍汰朗:83.8キロ

<女子ストロー級王座決定戦/5分5R>
KAREN:51,4キロ
本野美樹:52.0キロ

<フェザー級/5分3R>
オタベク・ラジャボフ:66.2キロ
Ryo:65.85キロ

<ライト級/5分3R>
粕谷優介:70.5キロ
ISAO:70.45キロ

<ライト級/5分3R>
天弥:70.7キロ
クリストフ・キルシュ:70.4キロ

<ウェルター級/5分3R>
内藤由良:77.2キロ
髙橋攻誠:77.1キロ

<フライ級/5分3R>
浜本キャット雄大:56.9キロ
岸田宙大:56.95キロ

<ライト級/5分3R>
松岡嵩志:70.55キロ
神谷大智:70.5キロ

<フライ級/5分3R>
菅歩夢:57.0キロ
クーパー・ロイヤル:57.15キロ

<フライ級/5分3R>
齋藤楼貴:56.95キロ
小澤武輝:56.6キロ

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