【UFC273】ゾンビでなくなったコリアン・ゾンビ。ヴォルカノフスキーが圧勝、王座防衛
<UFC世界フェザー級選手権試合/5分5R>
アレックス・ヴォルカノフスキー(豪州)
Def.4R0分45秒by TKO
ジョン・チャンソン(韓国)
静かな立ち上がり、様子見のなかで右ローをジョン・チャンソンが蹴る。ヴォルカノフスキーも左を伸ばす、ミドルにジョン・チャンソンが右を合わせようとする。ジョン・チャンソンのワンツーに右を入れたチャンピオンは、左を受けても右オーバーハンドを振るってローを蹴る。ジャブの差し合い、距離はジョン・チャンソンでもスピードはヴォルカノフスキーか。左の空振り後、ジョン・チャンソンは左を受けそうになり右を当てる。ジャブ、スウェイで真っ直ぐのパンチをかわすジョン・チャンソンだが、フックを受けそうになる。
スイッチしたヴォルカノフスキーが左ローからワンツーを打ち込むと、これが効いたか……ジョン・チャンソンは既に右目の周囲が赤く染まっている。残り80秒のクリンチ合戦は、ヴォルカノフスキーがケージに押し込みボディロックでテイクダウンを奪う。ジョン・チャンソンもすぐに立ち上がったが、後手後手の感は拭えない初回だ。離れようとしたジョン・チャンソンに対し、ヴォルカノフスキーは左を当て、ステップインにワンツーを入れると足に来ているジョン・チャンソンをローで崩して、さらに右を打ち込んで初回をリードした。
2R、ジャブを伸ばすジョン・チャンソンが右ローを蹴る。ヴォルカノフスキーも左インサイドローを返し、右を空振りして姿勢を乱した近い距離で右をテンプルに打っていく。ジョン・チャンソンのカーフをチェックしたヴォルカノフスキーはガードを固め、ステップインに左を当てる。腰が落ちたジョン・チャンソンはケージ際にジリジリを下がるが、前蹴りから左ストレートをヒットさせる。さらに前蹴りを顔面に届かせたジョン・チャンソンだったが、ヴォルカノフスキーは右ストレートを打ち抜く。ユラリと体が揺れたジョン・チャンソンは踏み止まって左を振るうと、一発のリスクを避けてかヴォルカノフスキーが組んでケージに押し込む。
ボディロック&小外掛けでテイクダウンを奪ったヴォルカノフスキーは、腰を上げてパウンドを落とす。この動きにケージを背取って立ち上がろうとしたジョン・チャンソンは立ち上がり際にパンチを受け、ヴォルカノフスキーは組んでエルボー、アッパーを打っていく。ヘッドムーブで見切るような動きが、有効でないジョン・チャンソンは左で飛び込んだヴォルカノフスキーにまたもテイクダウンを許す。立ち上がり際のアッパーは空振りになったが、ヴォルカノフスキーが優勢なのは明白で左ジャブを当て、上腕が当たるような左フックもジョン・チャンソンは効いているように見えた。
3R、チャンピオンが左ハイ、ジョン・チャンソンも左から右、さらに左を振るう。流れを変えたいチャレンジャーは、とにかく前に出てリスクをおかした攻撃が必要だが、ワンツーを打たれる。左ボディを決めたジョン・チャンソンは直後に右を被弾し、クリンチでヒザをボディにもらうなどペースを握ることはできない。ヴォルカノフスキーはジャブからロー、左ジャブをしっかりと当てるとダブルレッグでテイクダウンへ。スクランブルでバックを譲ったジョン・チャンソンが、胸を合わせる。離れたヴォルカノフスキーがジャブを入れ、ワンツー。ジョン・チャンソンも左を返すが、パンチを振るうと軸が乱れてしまっている。
左ジャブ、右ショートフックを当てた王者。ジョン・チャンソンが左を返すが、ローに右を打たれる。残り1分、左ボディから前に出たジョン・チャンソンは頭を振って左ロングアッパー、右オーバーハンドと空振りする。そしてワンツーの左、続くワンツーの右を受けたジョン・チャンソンはダウンし、パウンドを纏められる。マウント狙いをハーフで潜って耐えたところで時間に。ジョン・チャンソンはいつ試合が止められておかしくないほど、動けなくなっている。ここで諦めないのがコリアンゾンビだが、動きが悪すぎる──ことは否定しようがない。
4R、ジョン・チャンソンは左リードフックを放ち、ゾンビ・チャントの後押しを受ける。スイッチしても右を打たれるジョン・チャンソンは、オーソに戻しても左ローからワンツーを打ち抜かれる。さらに右を受けてスローモーションのように後ろに下がったジョン・チャンソンを見て、レフェリーが試合をストップ。立った状態で試合終了に。ハーブ・ディーンの素晴らしい判断だった。
「試合前から僕が違うレベルにあると言っていた。危ないシーンになる前にストップされたね。次? 誰とでも戦う」と話したチャンピオン。一方、敗れたジョン・チャンソンは「キャリアで最大の自信があった。疲れてもいないし、やる気満々だった。でも、なぜか行けなかった。試合に負ける度にオクタゴンを離れる……MMAを引退することを考えるんだけど、少し時間が必要だ。続けるのか、引退するのか。考える必要がある」と話し、涙を流して頭をマットに埋めた。
日本で活躍していた時から激闘続きだったジョン・チャンソン。ゾンビがゾンビ出なくなる時もやってくる。ここでどのような選択をしようが、彼がリングやケージで残した即席は他に真似のできるモノではない。