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【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。キム・テキュン✖アキシェフ「斜と正面」

【写真】序盤は殴られ、2R以降は殴られなくなったというのは技術的な部分で、殴り合えるかというのは精神的──よりも、構造的なことが起因となっている (C)BRAVE CF

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たキム・テキュン✖ナルザン・アキシェフとは?!


──カザフスタンで開催されたBRAVE CFのメインで、韓国のキム・テキュンが地元のエース=ナルザン・アキシェフに初回にダウンを喫しながら、逆転勝ちを収めました。

「完全な打撃戦でしたね。カザフスタン人のアキシェフは根性がありましたね。まず最初のダウン、キム選手の構えはボクシングでした。ボクシングのセオリーとして相手と正対しないというのがありますよね。だから、初回にダウンを喫した時は『あっ、やられる』というのが分かりました。

ボクシングをしている選手にとって、あの斜め、斜に構えると間は対戦相手もモノになってしまいます。対して、空手は正面を向いて戦えというものです」

──キム・テキュンからすると、あの構で良いパンチが出せるのであれば、ボクシングの構えをとり続けるかと。

「ハイ。2Rになって分かりました。空手で正面に立つというのは、相手が動いても間合いを理解して立っています。ボクシングの構えも理屈は同じです。キム選手は2Rからパンチを貰わなくなりました。それはサークリングをしたからです。止まっていれば斜に構えようが、正面に構えようが要は同じだということですね」

──つまり、相手の攻撃に注意を払わないといけないということですね。初回にあのパンチを被弾したのは、は打撃でなくテイクダウンに来ると思っていたからかと。アキシェフはテイクダウンから寝技で勝負するタイプの選手だったので。

「なるほど、そういうことですね。アキシェフもあそこでミスをしました。倒したからパウンドで仕留めにいったのですが、あそこはスタンドに戻させていれば仕留めることができていたと思います。あと1発で倒すことができていた。でも実際はパウンドにいって自分が疲れてしまいました。寝技で凌がれ、結果的に完全にスタミナ切れを起こしました」

──キム・テキュンの攻撃よりも、疲れですか。

「もちろん、ダメージもあったかと思います。ただ2Rにドクターチェックが入り、アキシェフはスタミナを挽回できています。あの直後だけは、また勢いを取り戻しました。すぐに落ちましたが。ただ、あれだけ流血で顔面が真っ赤になっているのに、ずっと動こうとしていて、アキシェフは気持ちが強かったですね」

──その気持ちという部分なのですが、キム・テキュンはBRAVE CFと契約してカザフスタンでメインを入っている。試合という部分だけでなく、人生として気合が入っているかと。そうすると、自然とこのような試合が可能になるのか。その辺りのことを岩﨑さんはどのように捉えていますか。

「う~ん、精神的な部分ですね。それはもう関係するでしょう。しないわけがないというか……。BRAVE CFからUFCに選手はステップアップをしていますか」

──ハイ、特に中東ベースということもありUAE WarriorsとLFAはパンデミック禍で国際大会を開きアブダビのUFC Fight Island大会でオクタゴンデビューという選手はまま見られました。

「そこでキム選手は戦っているのですね」

──UAEWにもキム・ギョンピョ、ムン・ギボムという韓国人選手がいます。

「そして、日本人はいないと?」

──ハイ。

「あのう……なんていうのか、今UFCやUFCを目指そうおしている選手が戦うコンテンダーシリーズやLFA、このBRAVE CFで行われている試合と、日本のMMAは別競技に見えます。向うは要するに、打撃ですよね。打撃戦。それを組みや寝技ができる選手たちがやっている。もちろん組み技の練習も大切ですが、打撃という部分を見直す必要があるのかと。彼らとやりあえる打撃を使えるように」

──ただK-1やキックで日本人選手は結果を残しています。野球やサッカーでも対等にやりあうライバルですから、日本人がフィジカルで韓国人選手に圧倒的に劣っていたり、打撃で遅れを取ることはないと思います。

「ないです。ただし質量とは、エネルギーを沸騰させるものなんです。どこを見て、戦っているのか。その認識の違いは、試合に出ます。だから日本人選手は日本人を相手に殴れます。それが外国人になるとできなくなる。

日本は格闘技が盛んでした。UFCがちゃちいパンフを作っていたのが、立派なモノを印刷するようになった。ONEやBellator、このBRAVEを見ていてもPRIDEの影響を受けているのは明らかです。日本の影響を受けている。つまり、日本がMMAをリードしていたんです。

その良い記憶が、あまりにも鮮烈に残っている。それは今、育っている選手でなく指導者やプロモーションの人により残っているす。海の向こうにUFCを頂点としたえげつない戦いが存在しており、いくら選手がUFCに行きたいと口にしても、そこに本当に飛び込める人間がどれだけいるのか。指導者や関係者が、どれだけいるのか。

私の下には幸いにも、そんなところに挑もうとするバカが来てくれています。そんなバカだから、損得抜きにして強くなってほしいという想いになる。ジムにしてもプロを育てて経営上の利益など望めない。でも、強い選手を育てたいをいう酔狂な想いでやっている。そこで本気でバカのように目指せる選手でないと、口にするだけの選手にそこまで懸命になれないでしょう」

──プロを育て、UFCに挑む選手を育ててなおかつジム経営が健全である状況から必要になってくるわけですね。

「昔の良かった時代を今一度という想いでいることが、が悪いことだとは思いません。団体やジムの経営者として。悪くないから日本の総合格闘技とUFCを頂点としたMMAが、別モノになったという想いがするんです。話が戻るのですが、どれだけの人が本気でUFCに行きたいと発言してきたかということですね。そういう気持ちがあって、このキム・テキュンのようにBRAVEで、カザフスタンでもやってやるんだという覚悟があれば、日本の選手も外国人相手に練習通りの打撃が使える。殴り合いだってできるということはあるかと思っています」

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