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【Special】月刊、青木真也のこの一番:1月─その参─平良達郎✖アルマザン「地方で本当に強いヤツが育つ」

Taira【写真】2020年1月度は青木アワード受賞者があった──平良達郎、20歳 (C)KEISUKE TAKAZAWA/MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ1月の一番、第3弾は26日に開催されたプロ修斗公式戦から平良達郎✖ジャレッド・ライアン・アルマザンの一戦を語らおう。


──1月の青木真也が選ぶ、この一番。3試合目はどの試合になるのでしょうか。

「平良達郎とアルマザン、修斗の試合ですね」

──ということは、今月は青木アワードの受賞者がいるということですね。

「そういうことになりますね。平良選手は大きいです。体重オーバーしている相手より大きかったですよね」

──計量当日に東京入りで、空港から計量会場に直接やってくるという簡単でない状況でも、彼はしっかりと創っているということですね。

「彼は地力がありますね。打撃も凄くやりたいんだろうけど、基本は組みの選手で。なにがしっかり、なにがちゃんととか言い始めるとまた揉めるけど、軸がしっかりちゃんとしている。彼は日本の格闘技における良心ですよ、一つの。良心的なスタイル、打撃はまだ上手くないけど組みの基本があると、まだ大丈夫だと思いますよね」

──MMAと柔術を現役時代から並立させていた指導者を持つ若い選手が今、そういうスタイルになりつつありますね。

「そうなると地方で本当に強いヤツが育つようになるかと思います。殴りが強いのが、そういうジムに入ってやることで……打撃はあとから伸びるだろうし。いうと、結果的に打撃も組み技も蔑ろにしないということなんだけど。

組み技を最初にしっかりとやっていると、体を創ることになりますし、そして大切なキャリアの最初に安定した成績を残せるというのが僕の考えです。石田光洋さんとか、レコードが安定していたのはレスリングがあって、そして下もできたから。

そういうことだと思うんです。上に行くにはまず安定して勝つ力を持たないと、一発があっても勝ったり負けたりだとプロとしてスタートに立てても、世界で戦うスタート地点に辿り着けなくなる」

──そういう考えた方もできるのですね。

「組みの基礎がある平良選手のようなファイターは、太るように強くなっていける。これからしばらく輝くことができなくても、修斗に思い切り担がれなくても、いずれ頭角を現すことができる。そういう選手だと思います」

──既に国際戦の機会を与えられていますし、サステインも当然のようにプッシュするのではないでしょうか。

「ただ、そうやって担いで失敗した世代があるじゃないですか。平良選手はそういう状況になっても、冒険せずに堅実にやっていけばかなり強くなると思います」

──若さと堅実さが、強くなるには必要だと。ここは松根良太さんの育成方針も大きく関係してきそうですね。

「松根さんって、同世代なんですよ。その松根さんが、ここまでよく指導できるなって思っちゃうことがあります」

──というのは?

「現役生活に対し、ここまではっきりとケジメを付けることができるというのは興味深いですね。まだ自分がやることが楽しめる年齢で、他者がやることが楽しいと思えるのは凄いことだなぁって」

──松根さん自身は引退という言葉は使っていないですが、やはり全盛期に選手のキャリアを左右する大きな負傷をした。そこが青木選手との違いではないでしょうか。

「これからっていう時にですよね。その辺りの丸みを帯びていく感じ、自分の道を見つけているのが凄く興味深いんですよね」

──沖縄でジムをやってMMAと柔術を広め、アマチュアから選手を育ててプロ興行を打つ。そして平良選手のような教え子がいる。

「選手を育てるのって、ただでさえ大変なのに平良選手のようなクオリティのある選手を育てている。凄いです。手法としては修斗と柔術、古いようでそこが生きていますね。

プロになってからは、それはそれであるけど、アマ修斗からプロ修斗という道筋があるのは頑張りやすいですからね。修斗には闘裸男があったり、福岡に弘中(邦佳)さんがいて、沖縄に松根さんがいたりする。他も北海道、東北、北陸に礎がありますね」

──その礎が平良達郎を生んだということですね。

「そうですね。今、構造として勢いのある選手が出てきた時、どこの大会もトップが抜けて、繰り上げトップが出てくる。そういうことを繰り返しているので、平良選手たちとの間の層が薄い。そこをどうやって乗り越えていくのか。そういう点でも注目したいですね」

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