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【ONE55】トノン戦後の青木真也─01─「前転された時に完全に作られていた」。その刻、勝負は決していた。

Tonon def Aoki【写真】赤丸の部分、ここを前転からクロスヒールの前に作られており勝負を決していた (C)MMAPLANET

26日(金・現地時間)、シンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムで開催されたONE55「Dynasty of Heroes」で行われたゲイリー・トノンとのグラップリングマッチで、一本負けを喫した青木真也。

新次元足関節の旗手に対し、ケージを使った動きで攻め込み、足関節狙いをかわしてバックマウントを奪取するなど見応えタップリ、手に汗握る展開のなかで序盤は優位にたった。

カニばさみをすかし、自分の領域から少し踏み出して勝ちに行った結果──青木は前転から足を捉えられ、ヒールでタップを強いられた。その瞬間、青木とトノンの間にどのような意思疎通があったのか。

格闘家ならではのやり取りを始め、この試合の意味と意義を青木が語った。


【最高に楽しい1カ月でした】

──トノン戦、ヒールを取られてタップアウト負けでした。

「負けたんですけど──勝負もできたし、良い取り組みができ、自分自身100パーセント、ほぼ完璧な仕上がりだったんです。なので結果は結果として敗北なのですが、手応えを感じたし、良かったなという感情が凄くあります。なんか、ちょっとホッとしています」

──ホッとしているというのは、どういう部分で?

「本当に良い状態の取り組みをして、試合に戻ってこられたことにホッとしたんです。やっぱり、去年の11月に負けて……からの孤独感。アレは孤独感で負けたと自分は思っています。その孤独感から解放されて……まだまだ孤独であることは確かなんですけど、選手をやり続ける以上は。でも、その部分で色々な人に支えられて、万全の態勢で試合に臨めたことが、本当に良かったです」

──青木選手は4月の宇野薫選手との付き合い方を見て、チームを求めていると感じました。それは練習だけでなくてイベントを作っていくことも含め……チームで。DREAMの頃のような感じで試合をしていくことをどこかで望んでいるんだろうな、と。

「自分のためだけより、他の人と一緒にやっていると最後の粘りは違うと思います。今回、新しいヘッドコーチのブライアン・エヴァーソールとも、前のコーチのヒース・スミスと同じように相性が良くて。ブルーノ・プッチとレアンドロ・イッサが本当に良くしてくれました」

──そういう状態で挑んだ一戦、内容的にはどのように振り返ることができますか。

「正直、もうちょっと酷い試合になると思っていたんです。やり辛いことをやられ続けて、やられるとイメージしていたので。その恐怖感がありました。でも、最後以外はブルーノやブライアンがやれって言っていたことを守って戦うことができました。本当にできたので……」

──青木選手のギロチンの防ぎ方、これこそケージ・グラップリングだと。これはMMAの一部であって、ADCCのグラップリングではないということを示していました。

「そうやってMMAPLANETでも、書いてくれていましたよね。長南(亮)さんも凄い攻防だ、でも分からない人間には分からないとツイッターで呟いていた。その通りで、分る人はいてくれても少ないでしょうね。狭いところに向けてやっている試合だと思っているし。

だから、ヒールを取られて負けたっていうだけで語られるところと議論する気はあんまないんです(笑)」

──自分はもっと皆にこの楽しさを伝えたいですね。

「そりゃあ、面白いですよ。自分が熱狂できること、どうだって見せつけてやりたいですよ。だって、こんなに面白いし。それをいうなら僕は実際にトノンとやってきて、高島さんより楽しめています。ハハハ、悔しいでしょ?(爆)」

──それが自分の能力ですし、青木選手が一番楽しくて当たり前じゃないですか。いやぁ、でもトノンに極められたいって思いますよ(笑)。

「戦う前に浪漫だって言っていましたけど、最高に楽しい1カ月でした。好きなことやって、遊んで、お金もらって」

【『ほら、もう極まってんだぜ。もう終わりだ』っていう目】

──最後の極められた局面ですが……。
01
「あれは、もう攻めた結果です。で、左足を取られて前転された時に、もう左足を完全にセットアップされていました」

──もう、その時に勝敗の大勢は決まっていたのですね。
02
「あそこで作られていて、まぁ粘ったんですけど……クロスヒールの時にはトノンは『ほら、もう極まってんだぜ。もう終わりだ』っていう目をしていたんです。

僕の方も分かっていた─けど、博打で左に振り返り足を抜こうとして無理だった。だから、その瞬間にタップですよ。トノンはそれ以上、捻るようなことはなかったし、全く潰しには掛かって来なかったです。だから僕、タップは1回。2回叩いていないんですよ。『分かった、観念した』って感じで」

──いやぁ、痺れる話です!!

「あの場で僕に付き合ってくれたトノンには、本当に感謝しています。トノンも僕からインスピレーションを受けたって言ってくれて。お客さんもMMAの大会のなかでグラップリングを戦う僕らをリスペクトしてくれていて」

──いや、あの雰囲気は素晴らしかったです。日本のMMA大会でグラップリングをやり、あの攻防であそこまで真剣にファンが見て、理解して喜ぶというのは過去になかったと思います。

「それをまたONEがちゃんとプロモーションしてくれて。青木真也が世界王者に挑戦するって感じで。まぁレジェンドっていう言われ方は嫌だけど、それでも気持ちよく戦うことができました」

──しかし、試合後からの幸福感アピールが過ぎませんか。負けた試合です。その裏には……。

「それは言わなくて良いでしょ?  そんなの分かりますよね? 悔しくないわけがないけど、全て明らかにするのは……それは無粋ですよ。

そりゃあ勝ちたい、格闘技が好きな気持ちと同じぐらい勝負が好きなんで。実は僕は格闘技選手で、勝負師なんだと思わせてくれたのは……宇野薫だったんです」

<この項、続く>

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