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【Special】月刊、青木真也のこの一番:5月─その壱─フレイレ×チャンドラーからのストップ論

Freire vs Chandler【写真】階級が上の王者が、下の王者に敗れたチャンプ・チャンプ対決(C)BELLATOR

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2019年5月の一番、第一弾は11日に行われたBellator221から
パトリッキー・フレイレ✖マイケル・チャンドラーの一戦を語らおう。


──5月の青木真也が選ぶ、この一番。最初の試合は?

「ベラトールのパトリシオ・フレイレ✖マイケル・チャンドラーですね」

──おお、ベラトール世界フェザー級王者パトリシオ・フレイレが、チャンドラーの持つ世界ライト級に挑んだ一戦ですね。なんだか意外な選択です。

「そうですか? チャンドラーはライト級だったら最強に近いと思っていました。UFCにいたとしても結果を残していただろうし。タフファイトをやらせるとナンバーワンというところがあったじゃないですか?」

──ハイ。エディ・アルバレス戦を始め、ウィル・ブルックス戦、ブレント・プリマス戦など数々の名勝負があります。

「それがフェザー級のフレイレに負けるとは……。これは思ってもいなかったです」

──青木選手も経験していますが、最近のMMA界はチャンプ・チャンプ路線や階級を越えたタイトルマッチが多く、ランキング制を瓦解してしまうのではないかと危惧していて。

「飛び道具だし、安易にやると危ないですよね。楽なんだと思います。僕自身もやったけど、石井和義的ですよね。それをいえばスコット・コーカーは館長の影響を受けていますからね」

──どうしても重い階級が勝つだろうという見方があり、そのなかで重い方の選手はあまり得がないような。さらにいえば階級が上の選手が勝つ方が多いですし。

「チャンプ・チャンプじゃないけど僕はアスクレンとやり、チャンピオンの立場でクリスチャンとやった。もう、分からなくなっています。言い方は悪いけど、僕も含めチャンドラーもちょっと年じゃないのかって。こっちが勝つよねと思われている方が負けたというのは。BJ・ペンの負けにしても、世代が違う感じがしますよね」

──……。フレイレの力については、どのように思っていますか。

「フレイレはフェザー級で長期政権を築ける力の持ち主だと思います。そのフレイレが勝った前に、フェザー級ではパット・カーランがAJ・マッキーに負けたのを見て、『俺はコイツと親父と戦っているんだぞ』って。そういうことを考えても、僕やチャンドラーは落ちているから、重い方が負けたという風に見えるのか。今の子たちは、アントニオ・マッキーとかロブ・マックローとか知らないでしょうしね」

──UFCの実力者、そしてWEC世界王者とDREAMでの青木選手は、実は査定的な試合が多かったですね。

「堀内さんがベン・ウェンとやるような試合ですよね」

──そんななか査定とは違いますが、チャンドラーは青木選手の言うように強い選手ですが、負けもままある。そうするとUFCだと、強い者同士の試合になって負けても相手が強いという見方ができます。

「ムエタイに近いですよね、UFCは。でもベラトールはそうじゃないから、コイツに負けたのかってなるってことですね」

──アクシデントでもありましたが、ブレント・プリマス戦とか。

「そこも踏まえてベラトールは面白いです。ドゥグラス・リマのマイケル・ペイジ戦のKOとか、そのプリマスがゴゴプラッタで勝った試合とか。蹴り上げから起き上がってKOとか、面白いことになっていますね。試合の跳ねる感が来ていますね。

話をフレイレ✖チャンドラー戦に戻すと、ストップはもう少し見てあげたかった。パンチが後頭部に入っていたのもあるし、少し見てあげたかったけど……しょうがない」

──レスリングでもああやって止まって、そこから動いていたという反論の言葉がありました。

「打撃有りだから、そこは。それでももうチョット見てあげてほしかったですね。そういう点でいえば、昨日の(※取材は5月27日に行われた)パンクラスで、川那子(佑輔)が負けた試合(※杉山和史戦)と米山(千隼)が勝った試合(※JOEY BOY戦)のレフェリー、島村(真司)さんっていう人は凄く上手かった。

どっちもストップが難しいタイミングで。米山の試合を早いという人がいるけどアレは初回だったら早いかもしれない。でも1Rも2Rもしばき続けていたから、あれで良かったです。あそこで止められる人はなかなかいない。背中を見せて、パンチをまとめられると止められてもしょうがないですからね。

川那子の試合はほとんど時間がないところで、関係なく止めて。あそこも見ちゃう人がいて然り、それも人情だし。だからこそ、あの試合はベスト・ストップ。ほんと、島村さんは良いレフェリー。選手を守ることができる人だと思いました」

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