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【Shooto】宇野薫に完勝防衛、修斗世界フェザー級王者・斎藤裕─01─「追い込まていたのは僕の方」

Yutaka Saito【写真】修斗世界フェザー級のベルトを肩に掛ける斎藤。左目が充血している理由は続編で明らかとなる(C)MMAPLANET

4月23日(日)、浦安市・舞浜アンフィシアター大会で修斗世界フェザー級王座防衛戦を宇野薫相手に戦い、防衛に成功したチャンピオン斎藤裕。

レジェンドの挑戦を、2連敗中の状況で受ける。実は後のないプレッシャーが大きかったのは斎藤の方だった。そんな重圧を跳ねのけての完勝劇を改めて振り返ってもらった。


──宇野薫選手に完勝といって良い内容で防衛に成功しました。まず、宇野選手の挑戦を受けるというオファーが来た時はどのような気持ちでしたか。

「1月のマイク・グランディと戦うために練習をしていた時には、その話は伝わってきていました。宇野選手もその頃からオファーが言っていたと思います。

防衛戦は契約事項に含まれていますし、ランキングの1位が宇野選手です。決められた試合を戦うのが役目ですから」

──そして、1月のグランディ戦の敗北を受け、宇野選手との防衛戦になりました。

「僕の中ではグランディに負けたことで気持ちの整理をつけるには少し時間が必要でした」

【防衛戦前のグランディ戦の敗北】

Saito vs Grundy──グランディはこれまで日本人選手と戦ってきた斎藤選手にとって規格外のフィジカルだったと思います。

「練習で1階級上の選手と手を合わせるのですが、それとも違う経験したことのない圧力と重さを感じました。その点については戸惑ったことは否定できないです。そこを修正できずに試合が終わってしまって……」

──効いて然りだったヒザも入れていました。

「効いていたんですよね。『ウッ』って声を漏らして。体も丸めていて。でも、グランディはケージに押し込めば何とかなる──そこを気持ちの支えとして戦っていたんだと思います。彼のクリンチを持ち込めばという部分で、押し込まれてしまいましたね」

──最後にマウントを取られた時に、気持ちが折れたかなと感じました。

「心は折れていなかったのですが、試合の後半になるとあの重さがどうにもならなかったです。技術的にもどう来るのか分かっていたし、気持ち的にも逆転を諦めていなかったですが、……やはり経験したことの圧力で、『どうにもならんな』って考えてしまったのは良くなかったです。本当に考えさせられる敗北でした」

──あのグランディ戦の敗北があって、宇野戦の完勝があったのではないかと考えているのですか。

「それはあったと思います。グランディと宇野さんを比較すうと体力や圧力の部分で明らかに違いがありました。宇野さんとの試合は、1Rで『これだと行けるかな』と少し思いました。それでも最初は凄く良いタイミングで右を差されて、倒されましたけどね。

ただ今回の試合は倒されても、絶対に止まらず動き続けようというのがあったので、すぐにリカバーできました」

──そこからは一度も倒されることはなかったです。

「もう長い間、金網ありきで壁際の練習をしてきたので。敗れはしましたが、グランディと戦った時もISAO戦もそこは意識して練習し続けていました。ISAO戦では最終的には立ち上がっても、それまでに背中をマットにつけてしまうことがあったので、そういうことのないよう意識していました。

宇野選手はスクランブルのなかでバックを狙っていたと思いますが、それでも動き続けて粘り強く戦おうと……それをやり切る体力には自信を持っていたので」

──宇野選手が対戦相手になる。もちろん、両者とも負けられないです。宇野選手も負けて良いという考えは微塵もなかったでしょう。ただし、宇野薫選手には実績がある。宇野薫として負けても生きていくことができる。ただし、斎藤選手は負けると全てを失う。それは現時点の実績も将来も。そういう厳しい状況だったと思われます。

「負ければ、もう終わりでした。そこは凄くプレッシャーになっていました。3連敗したら、もう続けることはできない。練習中もそのことは何度も頭を過っていました。なので、実際に追い込まれていたのは僕の方だと思います」

──そんななかでMMAPLANETでは宇野薫サイドからあの試合を注目するという盛り上げ方をしました。Abema TVも宇野選手のドキュメンタリーで押しました。

「はい、でも……盛り上げ方としては、ああいうやり方もあるなとは思っていました。青木選手がインタビューされていて、ああいう風に言う。僕は宇野選手を個人的に知っているわけではないですが、あそこも意図して心理戦をしているのかなっていう気持ちでいました。青木選手があそこで出てきたことで、アンチ青木選手の人達から激励の言葉がダイレクトメッセージやフェイスブックのメッセンジャー、ツイッター、たくさん届きました(笑)。反響は凄かったです」

【青木真也インタビューの余波】

──斎藤選手に失礼ですが、MMAPLANETもAbema TVも狙いはある意味、当たりました(笑)。

「それこそMMAPLANETの青木選手のインタビューが出た直後ですよ。『あのインタビューはちょっと……』とか、『あれは許せない』とか、色々と届くようになって(笑)。『青木に負けるな』って……俺は宇野さんと戦うのに(苦笑)。青木選手は良くも悪くも、人の注意を引く術を知っている。

そして、良い人にならないから目立つことができる。大内(敬※パラエストラ小岩代表)さんの名前を出した時も、道場の空気感は変わりましたしね」

──あれは記者である自分も斬りつけているんですよ。自分が気を使って、大内さんの名前を出さないと、彼に負けたことになる。もう真剣勝負です、青木選手と記者の。

「うわぁ……そういうことなんですね。でも、刺すわけじゃけどって言って、刺していますからね。プロとして参考にさせてもらいます(笑)。あの人の引きよせ方は。試合直前までアンチ青木から、激励の連絡が届いていましたから。でも、俺に言われても困るなぁって(苦笑)。何より、彼らから試合後に『おめでとう』っていう連絡はなかったですからね(笑)。勝ったのは青木選手だったんですよ……」

──……、あぁ、そういうことに……。これは酷な言い方かもしれないですが、青木で盛り上がった斎藤×宇野を斎藤のモノにするには2RぐらいでのKO勝ちが必要だった。そうすれば青木選手でも、宇野選手が頑張った──でもなく、斎藤選手が勝った試合になっていた。

「本当にそうだったと思います。間違いないです」

<この項、続く>

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