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【Interview】あの敗北とその後──加古拓渡<03>「最終日のマットで試合をする。できれば2試合」

Takuto Kako【写真】再び、この強い意志が宿った表情で加古はムンジアルに挑む(C)MMAPLANET

昨年9月のアジア選手権で、茶帯から昇格したばかりの嶋田裕太に敗れた加古拓渡インタビュー最終回。

日本の柔術界を若手としてリードしてきた加古の転機となった敗北から、ソウル・オープンを経て今年も最高峰ムンジアルに挑む。

そんな加古にノーギ柔術を含め、柔術観に通じる話をしてもらい、ムンジアルへの意気込みを訊いた。

<加古拓渡インタビューPart.01はコチラから>
<加古拓渡インタビューPart.02はコチラから>


──それがアジア選手権で学んだことだと。

「あそこをキッカケに試合への心構えが少し変わりました。ただ、そこも難しいところで。年末にチャールズ・ガスパーと戦った時に変に冷静になり過ぎてスコアを考えていると、50/50で負けてしまって……。

攻める時にはガッと行かないといけないですし、その辺りは判断が難しいところもあります」

──自分がいうところの草食主義ファイトですね(笑)。

「ハハハハ。変に計算し過ぎて……。もちろん、計算通りに行けば勝てるのですが、そういうものじゃないですし。トップキープのはずが返されて、逆にキープされたり。そういう風にならないように気持ちの持ち方の調整が大切になってきます」

──ところで話が変るのですが、加古選手はグラップリングやノーギに対してはどのような捉え方をしているのですか。

「僕はノーギは全くやらないです。柔術への考え方ということではなくて、練習時間も限られてきていますし、そのうちの一つをノーギに費やすことは現時点では勿体ないと感じています。

もう一点、じゃあ誰とノーギの練習をするのかってこともあります。現状、僕の回りにはノーギのスペシャリストのような人がいません。普段、道着を着ている人とノーギでやることも良い面はあるのでしょうが、お互い慣れないことをやっているようなもので」

──確かにその通りですね。

「1日に2回、3回と練習ができるなら、週に2日や3日は一つをノーギに当てたいですけどね」

──そういう事情もあってか、年末のRIZINグラップリングでもノーギ柔術ではなくて、打撃のない極めっこMMA的な技術体系でした。ADCCのようなサブミッションレスリングにはなっていないのは、そのあたりが要因となっているのかもしれないですね。

「ノーギは日本では厳しいですね。良くも悪くも、MMAグラップリング。特にこの間のトーナメントはそうでした」

──ポジショニング的には嶋田選手は2試合目で戦った紫帯の佐野貴文選手以外は圧倒してしまいました。ノーギが強ければ、道着も強いという定義が存在するなら、日本のグラップリングは本当に危機的状況で、それが道着有りにも影響を及ぼすと感じました。あくまでも柔術側の見方ですが。

「スタイルも関係しますしね、柔術家にしても。それとヒールフックがある試合はなかなか出ていかないことも考えられます。ヒールができる、できないではなくて、リスクが高すぎます。

ノーギに出て、ヒザをやって全てを棒に振る可能性がある。IBJJFの世界選手権にない技でケガをすることは、やはりリスクが高いと言わざるを得ないです」

──バンドがない野球、ヘディングがないサッカーはないのですが、柔術は色々なルールや概念が存在しており、そこがまた面白いです。そして加古選手の目標は絶対的にムンジアルにあると。

「ハイ。去年はベスト8、なので今年もベスト8を目指すと言いつつ、できれば3位を狙う……高望みはせず、現実的に考えてベスト8。ムンジアルはどんどんレベルが高くなって、人数も増えるだろうし1度勝って2日目ではなく、2回、3回と勝って2日目に残れるようになっていくと思います。

同じベスト8でもハードルは高くなっている。なので、もう一度最終日のマットで試合をする。できれば2試合したいです」

──しつこいようですが、嶋田選手にリベンジはしたくないですか。

「したいです。したいですけど、だからといって彼を追いかけるという話ではないです。またそのうち当たるだろうし、下手をするとムンジアルの初戦で当たるかもしれない(笑)」

──それは見たくないです。海外で日本人対決が早々に実現するのは……。

「黒帯になってからはムンジアルで日本人対決はないですが、茶帯では経験しています。平田(勝裕)さんと当たったことがあって……、面識があったわけじゃないのですが、やっぱり切ないものがありました。

ムンジアルでなくても、ソウル・オープンでも決勝で大塚君と当たって、やっぱり切ないんですよ……。でも、ブラジル人は常にブラジル人と戦っていますしね。しょうがないことなんです。

嶋田選手に関しては、僕もまだしばらく選手を続けるつもりなので、すぐでなくてもまた機会が巡って来るはずです」

──押忍、ありがとうございました。

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