【WJJC2021】レポート<02>加古拓渡、常に自己最高を目指した柔術家のラスト・ムンジアル
【写真】加古は敗戦後、帯を畳に置き座して一礼した(C)NARITA SATOSHI
8日(水・現地時間)から12日(日・同)まで、カリフォルニア州はアナハイムのアナハイム・コンベンションセンターにて、IBJJF主催の世界ブラジリアン柔術選手権が行われた。
Text Isamu Horiuchi
2年半ぶりに開催された、道着着用柔術の世界最高峰の大舞台。レポート第2弾はライトフェザー級に挑んだベテラン=加古拓渡のラストムンジアルの模様をレポートしたい。
<ライトフェザー級1回戦/10分1R>
ケヴィン・カラスコ(米国)
Def. 1分03秒by 腕十字
加古拓渡(日本)
競技柔術が大きな変革期を迎えたゼロ年代後半、いち早くその技術を吸収し「日本のベリンボロ・マスター」と呼ばれた加古の相手は13歳年下、22歳のケヴィン・カラスコは昨年のパン大会の茶帯の部を制し、師匠のケイシーニョことオズワウド・モイジーニョから黒帯を与えられた新鋭だ。
試合開始と同時に引き込む加古だが、同時にカラスコも足を左足を飛ばしており、これがテイクダウンと判定され2点が宣告された。
片襟の加古に対して、カラスコは素早く左に回ってのパスを仕掛ける。上四方につかれたかに見えた加古だが、ここはヒザを入れて隙間を作り体勢を戻す。するとカラスコは、左手で加古の右のズボンを掴んで大きな動作のレッグドラッグへ。
カラスコはそのままサイドに回ると、間髪入れず腕十字を仕掛ける。
完全に右腕を伸ばされながらもなんとか動いて脱出を試みる加古だが、腰を浮かせたカラスコに強烈に極められてしまい万事休す。僅か1分3秒の出来事だった。
敗れた加古は、試合後自らのSNSにて10年に及ぶムンジアル挑戦からの撤退を表明した。
日本における競技柔術新時代を牽引し、2016年には優勝したパウロ・ミヤオの失格もあったが、ライトフェザー級で3位を獲得。ライトヘビー級で戦うための過酷な減量、ムンジアル出場ポイントを得るために豪州遠征など、競技柔術家として自己ベストを目指す姿勢を貫き、その名を柔術史に刻んだ。
今回も最後まで妥協せず勝利の可能性が最も大きいライトフェザー級に出場した加古拓渡。新鋭に真っ向勝負を挑んだ上での潔くも見事な散り際だった。