【WJJC2021】レポート<11>&インタビュー<09>茶帯ライトフェザー級。丹羽怜音「圧倒的に勝てる強さが」
【写真】ムンジアルの6月開催が決定したため、兄弟は日本への一時帰国を見送ってAOJでのトレーニングを継続するという(C)SATOSHI NARITA
2021年12月9日(木・現地時間)から12日(日・同)まで、カリフォルニア州はアナハイムのアナハイム・コンベンションセンターにて、IBJJF主催の世界ブラジリアン柔術選手権が行われた。
Text by Satoshi Narita
レポート最終回は、茶帯ルースター級に参戦した丹羽怜音の準々決勝及び準決勝の模様と──これからについて語ったインタビューをお届けしたい。
<茶帯ライトフェザー級準々決勝/8分1R>
丹羽怜音(日本)
Def. 7分31秒by トーホールド
オスカー・エドゥアルド・マリン(ブラジル)
ベスト4をかけた戦いの相手は、アリアンシ・インターナショナルから参戦のオスカー・マリン。開始早々、片襟に手を伸ばして引き込んだ怜音にマリンは足払いを合わせるも不発に終わる。逆に怜音に潜られてバックを狙われるが、トーホールドを仕掛けてアドバンテージ1を獲得する。対する怜音もすぐさま上体を起こして2ポイントを得ると、フックスイープを狙ってもつれたマリンを再び引き込んでクローズドに入れる。
クローズドからマリンの足を難なく掬ってスイープに成功した怜音はマウントも奪取し、ハーフに捕らわれた足を抜いてパスガードの3ポイントも加算。開始2分ほどで11得点とリードを広げる。
その後、ハーフガードの攻防で再びパスに成功した怜音は、デープハーフからスイープを狙うマリンの右足をトーホールドに捕らえ、さらに左足へのヒザ十字を仕掛ける。最終盤、怜音は50/50から上になったマリンの右足を掬うと再度トーホールドをセットし、残り29秒でタップを奪った。
<茶帯ライトフェザー級準決勝/8分1R>
セバスチャン・セルパ(ブラジル)
Def. by 0-0 アドバンテージ2-0
丹羽怜音(日本)
2021年のパンナムを制しているセバスチャン・セルパ(カーウソングレイシーチーム)は怜音が1勝3敗で負け越している相手。序盤、セルパがダブルガードから素早くベリンボロに移行すると、怜音もセルパの両足を抱えることでバックテイクこそ回避するが、背後からしっかり奥襟を取られ、足を抜かれればバックテイクは免れない劣勢に立たされる。
ここから両者とも大きな動きがないまま折り返しの残り4分を過ぎ、防戦一方といえる怜音にペナルティが入るが、その後も態勢は変わらない。
やがて怜音がセルパの左足をフットロックのグリップで抱えるが、足首にプレッシャーをかけることができず、さらに時間が過ぎていく。
残り40秒、ペナルティ1で後がない怜音はフットロックを解除して起死回生のアタックを試みるが、待っていたかのようにセルパが怜音を背後から引き付け、ニアバック、さらにバックチョークの仕掛けで怜音の動きを完全に封じたところでタイムアップに。
最終盤の攻防で2つのアドバンテージを得て勝利したセルパは、決勝で野村優眞から1分55秒、送り襟絞めを奪い、茶帯ライトフェザーの頂点に立った。
目標に掲げていた世界一には届かなかったものの、自身初の表彰台、また茶帯ルースター級準優勝の弟・飛龍とともに初めて兄弟で大舞台の表彰台に上った丹羽怜音は今大会をどう振り返るのか。最後に本人の言葉を紹介する。
ーー初戦、橋本淳選手との日本人対決はレフェリー判定の接戦になりました。
「身体がうまく動かなかったというか、動画を見返してみても止まっちゃっていましたね。でも1回戦が終わってからけっこう休めたので、水や食料を補給して回復して、2回戦からは調子良く動けたと思います」
ーー橋本選手との対戦は初めてで、大会前は「楽しみ」とも話していましたが。
「思ったより柔らかくて、力も強いし、上手い選手でした。AOJにいないタイプというか、橋本知之さんに似ていると思いました。スイープされる感じはなかったけれど攻めづらくて、なかなかパスのアタックにつなげられなかったです」
ーー2回戦については?
「7月のオースティンオープンの決勝で負けた相手で、ミヤオのところで練習しているフィジカルが強い選手です。前回はアドバンテージ1差で負けたんですけど、8分間固められた感じだったので、今回はその敗戦を生かして作戦をしっかり立てて、思い通りに運べたかなと思います。
逆に準々決勝はタリス・ポンテスが来ると思っていたんですけど棄権していて、想定とは違ったものの、余裕を持ってやれました。攻めて極めを狙おうと思って、最後はトーホールドで極めたんですけど、飛龍も言っていたように足関はこっちに来てから重点的に練習していた技の一つだったので、練習通りに出せたことは良かったです」
ーー準決勝は想定通り、怜音選手が負け越しているセバスチャン・セルパが勝ち上がってきました。どんなプランを思い描いていたのですか。
「前回はダブルガードで僕が上になってアドバン1で勝ってたんですけど、なかなかパスできず、最後の1分でスイープされて負けてしまいました。ほかの試合でも最後にスイープして勝つスタイルだったので、ギィとは『ダブルガードで足関を狙いながら攻めて、時間が少なくなってから上にいって、トップキープの時間を短くして勝とう』と話していたんですけど、序盤で失敗してダブルガードから悪い体勢に入ってしまって。
僕が足を離したらバックを取られるプレッシャーがあったし、向こうも足を掴まれているから動けなくて膠着状態になって、フットロックも狙ったんですけど角度を合わせられず、最後、1分を切って上に行こうとしたスキを突かれてバックに付かれてしまいました」
ーー怜音選手はペナルティが1つありましたから、動く以外の選択肢はありませんでした。
「そうですね。今回は最初にミスしてからずっと悪い体勢だったので、内容としては負けた前回のほうが良かったと思います。ダブルガードからいきなり攻められたことに対応できなかったのが敗因です」
ーーとはいえ、ムンジアルという大舞台で初めての表彰台です。
「率直に嬉しいという気持ちもありながら、優勝を狙っていたのでやっぱり悔しいです。ただ、どの階級でもレベルが上がっているし、強豪選手がいる中で勝ち上がれたのは自信になりました。ムンジアルのような大きな大会で勝つためには、小さな大会にたくさん出て経験を積み、圧倒的に勝てる強さが必要だとギィとも話しています。次こそは絶対に優勝したいという気持ちが大きいです」