【WJJC2021】レポート<03>受けの強さを見せて、嶋田裕太がアドバン勝利で初戦突破
【写真】柔術はコンバットスポーツで例を見ない防御力が評価される競技。アドバン勝利で勝てる能力が欠かせない(C)NARITA SATOSHI
8日(水・現地時間)から12日(日・同)まで、カリフォルニア州はアナハイムのアナハイム・コンベンションセンターにて、IBJJF主催の世界ブラジリアン柔術選手権が行われた。
Text Isamu Horiuchi
2年半ぶりに開催された、道着着用柔術の世界最高峰の大舞台。レポート第3弾はNYのMGからライトフェザー級に挑んだ嶋田裕太の初戦の模様をレポートしたい。
LA入りしていた師マルセリーニョ・ガウッシアが体調不良で会場を訪れることが難しいという状況から一転、体調回復した師のバックアップを得て嶋田は初戦に臨んだ。
<ライトフェザー級2回戦/10分1R>
嶋田裕太(日本)
0-0 アドバンテージ1-0
ジョアオ・ペドロ(ブラジル)
NYのマルセリーニョ道場で練習を積んできた嶋田の初戦の相手は、本人も事前に「メッチャ強い」と警戒していたジョアオ・ペドロ。これまでは一階級上で戦い、19年のヨーロピアンでも3位入賞を果たしている強豪だ。
試合開始後、ペドロはすぐに近づいて引き込もうとするが、嶋田に伸ばした手を払われて失敗。ペドロは再び引き込み狙い。今回は、嶋田は同時に腰を落としてからペドロのクローズドガードの中へ。これで上を選択した形になり、嶋田がアドバンテージを先行した。
ペドロは嶋田の両手首を掴んでガードを開くと、両側でスパイダーに。そこから素早く三角を狙うが、嶋田は背筋を伸ばして対処。再びペドロは長い手足でスパイダーの形を作ろうとするが、嶋田はヒジと肩を使って上腕に足を当てさせない。時折り嶋田はペドロのグリップを切ろうとするが、ペドロはそこは許さず、また三角を狙う。
やがてペドロは嶋田の右足にデラヒーバで絡んでの崩しへ。が、嶋田が体勢を戻すとクローズドガードを取った。ここからペドロは襟を取り、再びガードを開いて前に嶋田を崩すが、嶋田はバランスを保つ。ここまで4分。強烈なペドロの崩しに対し、嶋田はやや守勢に回りながらも、上半身の動きで足の絡みを巧みに切り、また機敏なフットワークを用いて確実に対処している。
その後もペドロは嶋田を前に崩してからのシットアップや、スパイダーからの仕掛けを狙う。が、嶋田もバランスを保ちつつ逆にグリップを切ってプレッシャーをかけにゆく。両者譲らない攻防が続き、試合終了まで行けば嶋田は最初に得たアドバンテージを守り切っての勝利となる。
残り2分。ペドロは素早く小手絞りを仕掛けるが、嶋田もすぐに抜く。レフェリーを見るペドロだが、アドバンテージは与えられない。嶋田はヒジと肩を使ってスパイダーを作らせずにプレッシャーをかけてペドロを押してゆき、両者の体は場外に出た。
中央からのスタンド再開後、再び引き込んだペドロは一度立ってから勢いをつけての引き込みスイープ狙いや、片襟を引いての仕掛けを見せるが、嶋田のバランスは崩れない。
いよいよ残り時間が少なくなり、立ち上がったペドロは嶋田の奥襟を掴んで足を飛ばしてのテイクダウン狙い。嶋田は腰を引いて堪える。最後、ペドロは再び立ち上がってからの引き込み返しを狙うがこれも通じず、試合終了に。
ペドロの下攻めを上から受けて立った嶋田が、その仕掛けをことごとく凌いで初戦を突破した。確かに攻勢より守勢に回る場面が多かったのは事実だが、ガードを取る側が有利なことが圧倒的に多い軽量級最高峰の舞台にて、相手の下からの仕掛けの全てに対応、ポイントもアドバンテージも失わなかったのは見事だ。
世界レベルの実力を改めて証明した嶋田は、さらなる大物にして優勝候補筆頭ジエゴ・オリヴェイラが待ち受ける準々決勝に駒を進めた。