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【PJJC2022】ソドレ兄弟が金銀のフェザー級で、優勝したソドレ兄に惜敗──も肉薄の嶋田裕太にNY効果

【写真】同じ技にはめ込むことができている。それだけ高度かつ強度が高くなっていることが確認できた嶋田。微妙なアドバンゲームを制してこそのIBJJF競技柔術だけに──不明瞭なポイントボード問題はなんとかしてほしいものだ(C)IBJJF

6日(水・現地時間)から10日(日・同)まで、フロリダ州キシミーのシルバー・スパーズ・アリーナにて、パン柔術選手権が行われた。
Text Isamu Horiuchi

レビュー第2回はNYの神童マルセロ・ガウッシア道場にて長期修行に励む嶋田裕太が出場したフェザー級の模様を、嶋田の戦いぶりを中心に紹介したい。


<フェザー級1回戦/10分1R>
嶋田裕太(日本)
Def. by 17-0
ティエリー・ファリア(ブラジル)

ガードに跳び付いたファリアに対し、すぐに嶋田は両足担ぎの体勢に。そのまま立ち上がって圧力をかけた嶋田は、ファリアの右足を抑えて右に動き、さらにファリアの右ワキを差して背中を付けさせて相手の上半身を殺すと、絡まれた左足を抜いてマウントへ。すぐにファリアが下から左足を嶋田の股間に入れたからか、嶋田にはアドバンテージに加えてパスの3点のみが与えられた。

ファリアは下から動いてディープハーフを作るが、右ワキを制している嶋田はバランスを保ちながら圧力をかけてアドバンテージを重ねる。やがて嶋田は絡まれている左足を抜き、再びマウントに。今度はパスガードの3点とマウントの4点が与えられ、10-0と大きくリードした。

その後も下から懸命に動いてディープハーフに戻すファリアと、ワキを殺してさらにパスを狙う嶋田の攻防が続く。一度クローズドガードに戻された嶋田だが、立ち上がってファリアをリフト。その足を押し下げてガードを開かせ、足を超えてまたしてもマウントを奪取。17-0 とリードを広げた。

その後嶋田は腕十字やギを絡めたチョークを狙ってゆくが、ファリアはしぶとくディフェンスして極めさせない。なんとか足を絡めて下からの反撃を試みるファリアだが、トップの嶋田はその度に素早い反応で足を捌きワキを制しては、極めを狙っていった。

結局ファリアの守りの前に極めきることはできなかったものの、トップから終始攻め続けた嶋田が17-0で完勝。今年に入ってフェザー級で連戦を重ねて臨んだこの大会で、動きの良さを見せつけた。

<フェザー級2回戦/10分1R>
アレクサンドロ・ソドレ(ブラジル)
2-2 アドバンテージ2-1
嶋田裕太(日本)

初戦を10分間フルに戦った嶋田は、その後同マットで1試合が消化された後に再び登場。対戦相手は、シード故にこれが今大会初戦となるソドレ。19年に2連敗を喫しているこの若き強豪と、わずか10分少々の休憩時間で対峙するという厳しい戦いだ。

試合後両者同時に座るや、嶋田はすぐ上に。これが嶋田のアドバンテージではなく、ソドレの引き込みと判断されてしまいアドバンが入らない。

すぐに左で得意のラッソーを作ったソドレはそこからの仕掛けを試みるが、嶋田もワキを閉めてうまくソドレの攻撃を遮断する。ソドレが煽ると素早くスプロウルする等良い反応を見せる嶋田は、横に動いてのパスを見せるがソドレも対処。鋭い動きの両者による緊張感のある攻防が続いた。

4分過ぎ、下から嶋田の右足を抱えたソドレは、そのまま引き付けて嶋田のバランスを崩してシットアップ。相手を後ろに崩す得意の形で2点を先制した。嶋田もソドレの右足を抱えて起き上がってのシングルレッグを狙うが、ソドレはそれを跳ね返してニースライスの体勢を作った。

右足にハーフで絡む嶋田と、上体を起こして嶋田の首に道着を巻きつけてチョークのプレッシャーをかけつつ侵攻を試みるソドレ。嶋田はシッティングガードからソドレの右足にラペルを巻きつける形でテイクダウンを狙うが、ソドレは巧みに嶋田の左脇をすくいながら動いて防御。結局両者は離れた。

残り3分半。シッティングを取る嶋田は素早くソドレの体を引き付けて前に崩してから右足を抱えてディープハーフへ。そのまま素早く立ち上がってシングルに移行すると、片足で堪えようとするソドレの軸足を刈りながらのテイクダウンに成功。切れ味鋭い見事な動きで2-2とした。

そのままガードを閉じるソドレと、それを開けにかかる嶋田。画面に表示されている得点表は同点だが、動こうと試みる嶋田と体勢キープを試みるソドレという攻防になっている。

残り1分半。ソドレは再び下から嶋田の右足をキャッチ。動きを作りたい嶋田が上体を起こしたところで、ソドレは右足を強烈に引き寄せながらシットアップし、先ほどと似た形で上を狙う。ここで下にはなれない嶋田が背中を見せて距離を取ろうとしたところで、ソドレはその背中に付くと、跳び付いてシングルバックに。終盤のこの攻撃で、ソドレは大きなアドバンテージを一つ追加した。

場外際のブレイクを経て再開。時間のない嶋田は、絡みつくソドレの足を腕で押し下げて解除すると、上体を低くしてソドレを前に落とすことに成功する。ここからテイクダウンを仕掛けるがソドレは下がって場外へ。このように不利なときは無理せず下がって場外に出るインサイドワークは、常に前に出て攻め続ける嶋田の戦いにはあまり見られないものだ。

残り29秒で再度、中央でリスタートに。この時、ソドレが取ったアドバンは実は(それまでの掲示どおりの1つではなく)2つだったと得点表が修正された。下がるソドレに迫る嶋田は、背負いの仕掛けから引き込んでシッティングを作ると、ソドレの襟を強烈に引き付けてから右足に絡み付いてのシングルへ。

逃げようとするソドレの右足を抱えて前に出た嶋田は、両者が場外に出そうになると、ソドレの体を回して方向転換して試合場内で倒すことに成功。が、次の瞬間ソドレは跳ね立つ。それでも右足を離さない嶋田はさらにソドレを倒そうと前進するが、ここで両者の体が場外に出るとともに時間切れ。最後に嶋田にアドバンテージが入ったが、一歩及ばず。

嶋田、三度ソドレの軍門に降る──が、3回同じスイープで点を許して2-8で敗れた19年の世界大会と比べ、今回ははるかに競った内容だった。しかも前戦をフルに戦った後、僅か10分程度のインターバルを経ての戦いだったにもかかわらずだ。

シッティングからの鋭い仕掛けを起点とし、ソドレの軸足を刈って倒した1度目のシングル、そして結局は逃げられたものの、場外に出そうなソドレを引き戻しながら倒した2度目のシングル等、嶋田の特性を活かした動きがいよいよ世界最高峰に通じるレベルとなってきたことが見て取れた。

また、ソドレに2度目のスイープを仕掛けられた際、背中に廻られてアドバンテージは失ったものの、最終的にポイントを献上しなかったことも収穫と言えるだろう

1度目のスイープの後にニースライスを仕掛けられたこと(画面では表示されなかったが、ここでソドレにアドバンテージが与えられたのだろう)や、最後に倒しきれずに逃げられてしまったこと等、課題は見られた。が、嶋田は必ずこれらの課題を克服してさらに強くなるはず──そう思わせてくれるこの日の戦いぶりだった。

さて、嶋田に辛勝したソドレは、続く準々決勝で難敵アイザック・ドーダーラインと対戦。得意の後ろに崩すスイープで先制すると、終盤にもスクランブルで競り勝って取った上のポジションを守り切り、4-2で勝利。

続く準決勝では、優勝候補ディエゴ・パト・オリヴェイラの欠場もあって勝ち上がってきたチアゴ・マセドと対戦。ここでもやはり後ろに崩すスイープを決めて先制すると、その後50/50シーソーゲームを経て取り返した上のポジションを試合終了まで巧みにキープ。オープンガードから後ろに倒す必殺のスイープと、終盤にポジションを守って勝ち切る勝負強さを存分に発揮して決勝進出した。

そしてもう一方の決勝進出者は、なんと弟のジエゴ・ソドレ。ジエゴは準決勝で、ケネディ・マシエルやシェーン・ヒルテイラーといったビッグネーム相手にレフェリー判定で勝利して勝ち上がったヒカ・ノゲイラ相手と対戦。こちらもレフェリー判定にもつれ込む接戦を制したのだった。

当然ソドレ兄弟は決勝では戦わず、弟が兄に譲る形でクローズアウト。25歳と23歳、若き兄弟は世界大会クローズアウトという偉業を達成する可能性も秘めている。そのソドレ兄と互角の攻防を繰り広げた嶋田、既に1カ月半後に迫っているムンジアルに向け──NYでの生活のよる成果は如実に表れている。

【フェザー級リザルト】
優勝 アレクサンドロ・ソドレ(ブラジル)
準優勝 ジエゴ・ソドレ(ブラジル)
3位 チアゴ・マセド(ブラジル)、ヒカ・ノゲイラ(ブラジル)

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