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【UFN71】二転三転ヤヒーラ戦に向け、金原正徳「コンディションが1%でも上がればラッキー」

DSC_0377【写真】ひかりTVのUFC中継で入れ替わりで解説を行った日本バンタム級最強の裏ボス=金原と元エース=水垣(C)MMAPLANET

15日(水・現地時間)、カリフォルニア州サンディエゴのヴァレービューカジノ・センターで開催されるUFN71「Mir vs Duffe」でハニ・ヤヒーラと対戦する金原正徳。

昨年9月の日本大会でUFCデビューを飾り、胸の負傷もあって2戦目をなかなか迎えることができなかった。そして決まった今大会の一戦。本来は6月27日にブラジル・サンパウロでハニとの試合が決まっていたが、その後フロリダ州ハリウッド大会へ開催地が移行。さらに米国国務省のビザ発給システムに問題が起こり、約3週間遅れでオクタゴン第2戦に臨むこととなった。

MMAPLANETではヤヒーラ戦がサンパウロからフロリダに変更された5月13日にひかりTVのUFC中継の収録を行っていた金原にインタビューを試みていた。さらに出場延期を受けて6月末に2度目の取材を敢行。ハニ・ヤヒーラ戦に向けて、この2度のインタビューから金原の身に起こった目まぐるしい状況の変化と、それに伴う決断が迫られたことが分かった。

まずは5月に行なわれた取材から──金原同様に収録のためにスタジオを訪れていた水垣偉弥の飛び入りコメントも加え、いきなりの番外編的なインタビューをお届けしたい。

──ハニ・ヤヒーラ戦が決まった金原選手です。

「きっと、まだ正式発表ではないと思います。ただ、戦うことは決まっています」

──当初はブラジルのサンパウロで戦うことになっていたのですが、今日の今日にフロリダに開催地が変更されました。(と、ここで同日に収録があった水垣偉弥が通りかかり──インタビューに口を挟んでくる)。

水垣 アッ、何か開催地変わったって聞きましたよ。どこになったんですか。

「フロリダです。マイアミの奇跡です」

水垣(金原のボケをスルーし)フロリダか、暑いですね。

──水垣選手、まだ何かありますか?

水垣 少しでも、水垣偉弥という名前が載ればと(笑)。

──試合後とはいえ、ゆるみきっていますね(笑)。

水垣 太りましたしね(笑)。

「その日焼けはチャリンコでしょ?」

水垣 ハイ、そうです。

「いいチャリ乗って、日焼けして。練習は来ない(笑)。WECのTシャツを着てノスタルジックに浸り、もう諦めたって感じで」

──あとは取らぬ何とかの皮算用ばかりですよ(笑)。

水垣 いやいやいや、諦めてないですって(笑)。ちょっとケガをしているから、練習できないだけで。

ヤヒーラと戦っているんだから、対策を教えてくださいよ」

水垣 もう何年前だと思っているんですか(※2010年4月、WEC48にて)。全然、金原さん行けます。全然、問題じゃない。

「ホントに軽い。全く真剣さが感じられない(笑)」

水垣 でも、負ける姿が想像できないです。

「僕もそうでしたよ。この間の試合、水垣君が負ける姿が想像できなかったのに」

水垣 いや、あれは……。僕は予想通りの負け方だったと。そんな風に思っているんですけど……。

「ハハハハ。今日、ちょうどあの試合の音入れだったんですけど、どうしちゃったんですか?」

水垣 もう迷っちゃって……。

「全く自分の下半身に神経がいっていなかったですよ。上半身ばかり気にしていて」

──収録の合間に金原選手が『そりゃあ、ノリ君(田中路教)にダメ出しされますね』って。

「ノリ君のダメ出しには愛がない。僕は愛情を持って水垣君にダメ出ししているから(笑)。でも、ノリ君は腹黒い。アレは悪い、悪いヤツです(笑)。強くなることには真っ直ぐですけどね」

──ということで水垣選手にはそろそろお引き取りを願います(笑)。

水垣 ハイ、ちゃんと僕の言葉使ってくださいよ!!

──ようやくインタビューの本題です。サンパウロからフロリダのハリウッドに会場が変更されました。ATTとブラックジリアンのお膝元ですね。ズッファ体制になってからブラジルで勝った日本人選手はいません。UFCの歴史にあってもSEG時代に高阪剛さんが米国人のピート・ウィリアムスに勝っているだけです。そう考えると、フロリダに変わったのは幸運だったのは?

「正直なところブラジルは一番戦いたくない場所でした。時差、移動距離、日本人が勝てない、理由はいくらでもあります。でもサンパウロに一度は決まったので、決定したことに不満を持っても精神的にどんどんとマイナスの方向に向かってしまうので、逆に『ブラジルでブラジル人に初めて勝つ日本人になる』っていうことがモチベーションになっていました」

──それは素晴らしい心構えですね。対戦相手のハニ・ヤヒーラについては、どのような印象を持っていますか。

「ハニは10年ぐらい前、22歳の時に初めて米国に行った時に彼のクラスに出たことがあるんです。色々と技を教えてもらいました。ノースサウスチョークで一世を風靡していた頃ですね。日本で戦っていた時も、展開が好きな選手だったので試合は常にチェックしていたんです。まさか、自分が戦うことになるとは思っていなかったですけど」

──正直、バンタム級のハニよりもフェザー級のハニの方が強いのではないかという風にみていました。減量が巧くなくて、相手が大きくてもフェザー級の時の方が戦えている。そういうことも踏まえ、ブラジルのハニは母国で調整も簡単になり、バンタムでも相当強くなる──と怖かったのですが、フロリダになりここもラッキーだったかと。

「ずっとサンディエゴにいるし、米国なら問題ないんじゃないですか。ただ、フロリダに変わったことに関してはラッキーだったと思いました。ブラジルが向こうのホームだというのはありますが、何よりも自分のコンディションを考えると、フロリダとサンパウロでは大きな違いです。僕のコンディションが1パーセントでも上がればラッキーですから」

──金原選手は米国では何度も長期間練習しています。フロリダに開催地が移ったことで、向こうで調整を積む時間を取ることも考えられます。

「まさにそうなんです。ブラジルで戦う時も米国でキャンプを張るのか、どうするのかって考えた結果、日本で調整することにしました。でもフロリダになったことで、状況が変わってくるのでキャンプをどうするのかというのは、本当に考えています。

ブラジルだとセコンドで向こうまで行ってくれる人自体、本当に制限があったんです。セコンドにもビザが必要になってきますからね。

ブラジルの時は本当に一緒に行ってくれる人を見つけることができなくて……。北岡(悟)さんは米国でも7月20日に試合があるから無理だし。松本(崇寿)は道場を任せている。で、最後の最後の神頼みっていうか、最後は協力してくれるのはGOZOさん(※古巣パラエストラ八王子の塩田歩代表)だろうっていうのがあったんです。体調が余り良くないって聞くし、指導もある。もうだいぶ顔も合わせていなくても。

実際、僕も独立した身だし、頼っちゃいけないという気持ちもありました。でも俺が窮地に陥ったら、助けてくれるんだろうなって。まぁ、断られてしまいましたが(笑)」

──最後に塩田さんに頼むというのは、良い話でしたが……。

「最後よりも、最後の最後ですね。本当に困っていたんで。体調がやっぱり悪いということだったんです。まぁ、ブラジルですからね……ハワイじゃなくて……」

──そのハワイというのは言及しないようにします。フロリダになってセコンドの人選、そしてキャンプを張ることに関しても仕切り直しですね。

「セコンド申請まで時間もあるし、キャンプは当たり外れがあるから慎重に考えないといけないです。日本から誰か連れて行きたいと思ってはいますが、そうなると誰になるのか。そこを考えて、向こうにいつ入るかなども決めていこうと思います。

早目に米国に入るとしても僕と同じ世代や先輩たちは、ほとんどが道場をやっていて日本を長く離れることはできないので、練習仲間や後輩に来てもらうことになるとでしょうね。ブラジルもHEARTSで練習している高野優樹君が来てくれることになっていたらパスポートが切れていて、再発行していては間に合わなくて無理だった。米国ならセコンドはビザは要らないので、また高野君に頼めるかもしれないし。そこもリセットして考えます。

いや、でも今回は条件が整っていないというか……。ROAD TO UFCの収録があって、練習仲間が米国に行ってしまうんです。それでも不幸中の幸いというか、相手がハニだったからMMAよりも柔術に力を入れてやっていこうかと思っています」

<この項、続く>

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