【Pancrase359】最強カリベク戦前の平田直樹「樹には『セコンドは代わりを用意しておいてくれ』と」
【写真】連敗中にキャリア最強の相手、ワールドクラスのカリベク・アルジクル・ウルルと戦う (C)MMAPLANET
9日(日)、東京都港区のニューピアホールで開催されるPancrase359。昼の358大会とダブルヘッダーとなる当大会のメインで平田直樹がカリベク・アルジクル・ウルルと対戦する。
Text by Manabu Takashima
MMAPLANETは勝手にRIZINフェザー級王者ラジャブアリ・シェイドゥラエフ、アクバル・アブデュラエフ。ムルタザリ・マゴメドフ。エルデュカルディ・ドゥイシェフと、このカリベク――合算戦績63勝1敗(31KO、29一本勝ち)――を無敵のキルギス・フェザー級五将と呼んでいるが、カリベクがパンクラスで戦った2試合の合計タイムは僅か3分02秒という凄まじい戦いを見せてきた。
対して、平田は昨年12月にフェザー級王座決定戦で三宅輝砂選手にKO負けを喫し、6月の再起戦では柳川唯人選手に判定負けと連敗中だ。この状況で、カリベクという強者と戦うことを決めた平田に、その心境を尋ねた。
悲壮感はない。かといって、リラックスしている風はまるでない。将来の真面目な性格で、カリベクを真っ向から受け止め乗り越えようとしている平田の覚悟に耳を傾けて欲しい。
もう3Rのことは考えずに2つのラウンドで出し切る
――昨年12月のフェザー級王座決定戦、6月の再起戦での敗北から5カ月、まさかのカリベク・アルジクル・ウルル戦。発表を聞いた時は本当に驚きましたが、まずは連敗を喫した時はどのような心境でしたか。
「6月の試合は勝たないといけない試合でした。勝てた試合だと、試合映像を見て思ったし……。タイトル戦で自分を出し切れず負けたにも関わらず、自分の良いところを出せない。自分の性格的な部分が、悪い方に出てしまいました。
この間、そういうところを見直さないと誰とやっても勝てないと思い、そこを意識して練習をしてきました。相手どうこうでなく、自分を変えないといけないと思って」
――現状の国内MMAは防御という面で組み力は、全体的にレベルアップしています。そのなかで倒して、コントロールが軸にある選手は判定でも勝ちづらくなっています。スタイル的な部分で見直すことはありましたか。
「打撃の練習もするようになって、色々と試してみようと思っていたのですが、試合になると迷いが出ていました。アレやってみよう、コレやってみようと。そこで自分の強い部分が出ないようになって。デビューしたての頃は、巧くはないけどコレしかないという気持ちで、組んで、投げて、殴って、極めるという自分の戦いができていたのに」
――対戦相手の強くなっていますし、苦手部分の強化をするのも絶対に必要だとは思います。
「もちろんデキないことを練習で克服しないといけないのですが、試合では自分の強い部分は何かを一度思い出して、自分を出していく……。自分が疲れる覚悟、削られる覚悟で削って行かないと。後の展開を考えて戦っていると、相手も元気なままですし」
――柳川選手との試合では、その自らの組みで削られることを気にしているファイトには見えました。それも絶対悪ではないですが、負けると敗因にもなるかと。
「結果、終わってみると『もうちょい出来たのに』とか不完全燃焼で。それなら、もう3Rのことは考えずに2つのラウンドで出し切る。もちろん最後の5分はきついけど、相手もきつくなっている。その競った状況で勝負をする。そんな風に戦わないといけないと思って、見直してきました。
試合は立って打撃からスタートします。そこを避けることはできないですけど、組んだ状況になったら自分に自信を持って戦うことが大切で。コントロールだけでなく、極めにいく。アタックするということは八隅(孝平ロータス世田谷代表)さんとも話してきました」
――そこもMMAの妙ですね。アタックすると、相手も挽回しやすくなる。でもそうしないと、取れない。自分の戦いを貫くことにも相当な覚悟が必要ですね。
「そこは腹を決めなといけないです」
――とはいえ連敗中で、腹を決めるにしても対戦相手は大きなファクターになるかと。なのでカリベクというのは……。
「僕も正直、オファーが来た時はビックリしました。11月……、本音をいえば前回の試合でケガをしたこともあって12月にランキングで下の選手と戦うことになると思っていました。それがカリベクで、時期も11月で……」
――12月希望ということもありましたし、試合を受けるか悩みませんでしたか。
「正直、準備期間を考えると12月にという気持ちはありました。8月の終わりにオファーを貰って、2カ月と3カ月では準備期間も違うので。
でも八隅さんと話した時に『11月も12月も変わらない』と(笑)。これまでやってきたことをぶつけるのに、この1カ月で何が変わるのか。そうだなって、思いました。八隅さんの言葉で、スイッチが入りました。
12月だと違う相手になりそうだったので、勝った時の見返りはカリベクと戦う方がある。誰と戦うよりも、あります。それにいずれは戦わないといけない相手だし、いつかやりたいと思っていた選手です。この機会を逃すと、もう戦えないかもしれない。今の僕は二連敗していて、これ以上失うモノもないじゃないですか。もう、やるしかないです」
――八隅さんは、自分の言葉に責任を感じる人です。指導している選手の敗北に、かなりセンシティブな面もある。その八隅さんの言葉ですね。にしても……いえばチャンピオンより強い。そういう風に周囲も見ている相手かと。
「そうですね。過去一番で強い相手だと思っています。それだけに自分への挑戦にもなります」
ただで終われる戦いだとは思っていないです
――実はカリベクに関して、暴風雨が全てを一瞬にしてなぎ倒してしまうようなファイトで。パンクラスでの試合はその動きを研究するに至らないというか。
「そうなんです。ハイライトリールのような試合で、研究するとかに至らないですよね。もちろんフィジカルは強いし、何かを効かせた後の畳みかけ方を見ても、勝負所を把握する感覚はどの選手よりも凄い。その勢いに皆やられてしまっているので、自分は何ができるのか。あるいは、あの勢いに持っていかれることなく戦えるのか。色々考えますね。
プレッシャーは過去最強だし、向き合った時に恐怖を感じるかもしれない。ただ、そこはいくら気構えを創っても、試合が始まらないと分からない。カリベクを目の前にして、組んだ時にどう感じるのか。そこでどれだけ自分が立ち向かえるのか。それも自分への試練だと思うので、そこも楽しみにしようと思っています」
――平田選手の長所に対して、カリベクがどれだけ強さを持っているのか。
「強いはずです。そこまで行かずに勝っているだけで。でも自分が勝つには、組んで投げるしかない。自分をぶつけます。組み技をどれだけ出せるのか。相手の勢いに飲み込まれずに、自分の得意なところに持ち込めるかが鍵になります。
体的にはコンディションは良いですが、試合のことを考えると怖いです。どういう姿でケージから出てくるんだろうって想像します。でも、それはファイターなら皆思うことで。『無事に帰ってきてね』って皆に言われます(笑)」
――やはり勝ち負け以上に、ケガがないように。そう思うのは普通で。自分もそうやって、試合に挑む前に個人的に連絡をくれた選手に伝えることも多かったです。でも、なぜか最近……凄く無責任なのですが、『ケガをしようが、現役生活を終えようが、この一番は勝て。強い姿を見せてくれ』と思うことがままあります。
「分かります。ケガはしたくない。でもケガをしようが勝ちたい。その気持ちでいることが大切だと思います。今回は特に、そういう試合です。ただで終われる戦いだとは思っていないです。
1週間後のONEで妹(平田樹)の試合があるけど、今回ばかりは樹には『セコンドは代わりを用意しておいてくれ』と伝えています。カリベクとやれる相手は、僕しかいなかった――平田直樹を当てて良かったと思われるような試合にします。しっかりと勝ちに行って、カリベクがこれまで見せたことがない姿を皆に見せたいし、それは成長した僕の姿を皆に見てもらうということで」
――では最後に、意気込みを一言いただけますか。
「僕の覚悟を見てください」
■視聴方法(予定)
11月9日(日)
午後5時15分~U-NEXT





















