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【Shooto2025#07】12年前に返上したベルトに挑戦、山上幹臣「前に獲った時は通過点」&「今回は集大成」

【写真】戦闘モード5パーセントほどの山上幹臣(C)MMAPLANET

21日(日)、東京都港区のニューピアホールで行われる修斗の昼夜二部興行。昼の部=Shooto2025#07のメインで山上幹臣が修斗世界ストロー級チャンピオン田上こゆるに挑戦する。
Text by Manabu Takashima

14年前に腰に巻き、12年前に返上したベルトに再び挑む。階級を上げ世界の最高峰に挑む決意をし、1階級上のレジェンド=マモル超えを果たした。しかし世界への夢はアジアで潰え、1人の男として守るべき者を第一とした人生を選択。

昨年5月に9年5カ月振りに復帰しフライ級で、MMAの現実を見た。それでも、天才と呼ばれた男は9月に修斗、そしてストロー級に戻ると2連勝しタイトル挑戦権を手にした。そんな山上に、タイトル挑戦について話を訊いた(※取材は17日に行われた)。


今回の試合でハッキリすると思います。試合勘なのか、老いなのか

――ファイトウィークになって水曜日の正午過ぎ。ZOOMインタビューのタイミングとして、この時間を指定されたのは?

「午後2時から練習で、この時間帯が一番声が出るかなっていう(笑)。もう疲労は抜けているのですが、体重を落としているので。あと4キロなんですが、水抜きは2.5キロから3キロにしたいのでもう少し落とさないといけないですね」

――引退前と復帰後では体重の落ち方も違いますか。

「前はもう減量方法が分かっていなかったので、今の方が落としやすいですね。昔はガムシャラに落とすだけだったのが、今は栄養を摂りながら落とせていますし」

――12年前に返上したベルトに挑戦します。改めてどのような気持ちでしょうか。

「前に獲った時は通過点でしかなかったです。その先にUFCを見据えていて。今はもうUFCとか、さすがに見ていないですし。だから今回は集大成、ここで全てを出しきりたいです」

――昨年5月の復帰戦はフライ級でした。今からすると、あの判断は間違っていた?

「正直、フライ級の体ではなかったです。あの時は計量を終えて、ご飯を食べても体重が1キロも戻らなかった。そもそも食欲がなくて。何か食わないといけないと思って食事は摂ったのですが、試合前に体重を測ると計量の時と同じでした。調整の仕方が悪かったのか。56キロの体が合っていなかったのか……。ホント、なんでか分からなかったです」

――まず食べることができないということで、絶対的に違っていたのでしょうね。ちなみにストロー級まで落とした時は、どれくらい試合までにリカバリーしているのですか。

「60キロ前ぐらいですね。だから、フライ級で試合をした時の方がストロー級で戦っている時より体が小さいという状態でした。もともと20代でフライ級で戦おうとしたのは、UFCにストロー級がなかったからで。あの時も無理やりのフライ級でしたし、体はできていなかったです。

今やフライ級でも70キロぐらいから落とす選手もいますし、やっぱりストロー級が適正階級なんだろうなと思います」

――技術レベルはMMAの進化に伴い進んでいます。そのなかで競い合い、凌ぎ合いという部分でベルトを巻いていた当時と、今の修斗ストロー級は違いがあるのかと。

「実は僕もあの頃の方が厳しかったという気持ちはありました。でも、前回の試合で当真(佳直)選手と戦った時に『甘くねぇな』って。すんなり勝てると思っていたけど、全然そんなことなかったです。そう思うと、今は今で若い選手が頑張っていると思います」

超えている部分があったり、落ちた部分もあります

――そもそも10年近く退いていて、今懸命にやっている選手にすんなり勝てるという自信を持っていたことが意外です(笑)。

「アハハハハ。当真選手の試合映像を見て、調子が上がっている自分と比較して過信していましたね(笑)。まぁ、勝てたけど思ったような試合ではなかったです」

――山上選手の中で現状の能力は、引退前の時点と比較してどのように捉えていますか。

「超えている部分があったり、落ちた部分もあります。打撃に関しては昔の方がキレがあったかと感じる部分もありますが、それは試合勘がまだ戻せていないからパンチを貰ったりしているのか。そうでなくて、年を食って反応が落ちているからかもしれない。でも試合勘だと思う自分がいます。

いずれにせよ、以前と違うという意識があることで前回の試合とは違う戦い方ができると思います。あの試合の反省すべき点から、自分のスタイルを見直してきたので。そこがしっくりきているので、試合で試す。今回の試合でハッキリすると思います。試合勘なのか、老いなのか」

――組みに関してはいかがですか。

「組み技と寝技に関しては、前にチャンピオンになった時より上です。かなり上がっています。フィジカルも今はやり込んでいるので」

――そんななかチャンピオンの田上選手の印象を教えてください。立ち技出身で、一時はテイクダウンに苦しめられた時代がありましたが乗り越えてベルトを手にしました。

「打撃に関してはスピードもあるし、勢いもあります。ただしMMAとして考えると、穴はいっぱいあると思います。まだつながっていない部分があります」

――同じストライカーでも、違うと?

「彼の打撃と自分の違いは試合で出ると思います。彼はテイクダウンを切って振り回してくる打撃で、自分は散らす打撃。テイクダウンを取れる距離を把握しています。その差が出ると思います。

ただ、それは技術的なことであって、ファイターとして田上選手のことは絶対にリスペクトして戦います。戦えることも光栄だと思っているので。自分はチャレンジャーだという気持ちを忘れずに戦います」

――どのような戦いをしたいと思っていますか。

「やっぱり当真選手との試合では出し切れなかったので、勝ちに拘りつつしっかりと動きたいですね。田上選手をどんどん混乱させて倒したいですね」

――そのようななかでも、特に気を付けているところはありますか。

「気持ちの上下が激しくて、試合中にも上がったり下がったりして動きに影響が出ることがあったので、そこは一定の強い気持ちを持ち続けることを意識して練習してきました。

修斗に戻ってからは、そういう部分はあまり出ていなくて。落ち着いて戦えていますけど、引退前は明らかにそうでしたし。復帰後も……復帰戦はそうでした」

――引退前も、そういう風には感じたことはなかったです。ピンチになって、心が折れるようなことも見たことが無かったので。観念したという表情を見せたことはあっても。

「まぁ、危ないところで腕は折れても、心が折れるというのはないですよね。でも気持ちはブレていました。強い選手って、そういうことがないじゃないですか。平良(達郎)選手にしても、堀口(恭司)選手にしても。だから、今回も気持ちの上下がないように心がけています」

妻とは復帰する前に『ベルトを獲ったらおしまいね』ということで話していた

――精神的な部分でいれば、ゼロから社会人生活を送ってきて強くなるということはなかったですか。

「社会に出て、精神的には相当に削られました(笑)。だってパソコンも使えないし、コピーの仕方すら分からないような人間だったので。逆に社会に出て揉まれている時に、自分が格闘技をやってきたことを考えたらなんでもない。格闘技をやっていると、もっとしんどいことがあるというメンタルでやっていました。やっぱり頭を使うけど、体力を使うことはなかったですから」

――MMAはどっちも使うと。そういえば対戦カード発表ということでケージの中に入った時、他の選手と比較して山上選手からまるで戦うオーラが感じられなくて。まるっきり、オフ状態でした(笑)。

「アハハハハ。やっぱりオラオラ感っていうのは、抜けちゃっていますね。それが良いことかは分からないですけど。集中力の高め方が、変わったと思います。以前のように意気込んでいると、それはもう普段の精神状態ではないということなので。試合が始まるまで、気持ちは抑えています」

――6月で38歳になりました。この後は、どのように考えていますか。

「まぁ……今、妻がここにいないので話せますけど……。調子がマジで良いので、続けたいという気持ちがあります。ただ妻とは復帰する前に『ベルトを獲ったらおしまいね』ということで話していたので……」

――そうなのですか。

「だから今回も『獲ったら辞めるよね』とは言われています……。復帰は絶対的に自分のための決断でした。だから獲った後は、やっぱり何が家族にとってベストなのかを考えないといけないです。格闘技は五体満足で終われる保証がないモノなので。何かあると、家族に苦労を掛けます。

そこはベルトを獲ってから、ちゃんと向き合っていかないといけない。でも、自分は続けたいです(苦笑)。やっぱりまだ強くなれているので……まぁ、年齢のことも考えないといけないですし」

――とりあえず、それは試合が終わってから考えることとして。まずは日曜日の試合に集中をしてください。

「そうですね。本当に今、調子が戻ってきている感覚があります。チャンピオンだった時と同じか、それ以上になっていると思います。なので、絶対に倒します」


■視聴方法(予定)
9月21日(日)
Shooto2025#07 午後12時30分~~ ABEMA格闘チャンネル
Shooto2025#08 午後5時30分~~ ABEMA格闘チャンネル

■Shooto2025#07 対戦カード

<修斗世界ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者]田上こゆる(日本)
[挑戦者]山上幹臣(日本)

<ミドル級/5分3R>
岩﨑大河(日本)
ジャン・ボムソク(韓国)

<女子アトム級/5分2R>
中村未来(日本)
青野ひかる(日本)

<女子スーパーアトム級インフィニティリーグ/5分2R>
高本千代(日本)
片山智絵(日本)

<女子スーパーアトム級インフィニティリーグ/5分2R>
村上彩(日本)
嶋屋澪(日本)

<フェザー級/5分2R>
轟轟(日本)
ヨシ・イノウエ(日本)

<バンタム級/5分2R>
関根累(日本)
勝呂駿(日本)

<2025年度ウェルター級新人王決定T1回戦/5分2R>
六郷海南人(日本)
デソウザ・マルセル(ブラジル)

■Shooto2025#08 対戦カード

<修斗世界バンタム級王座統一戦/5分5R>
[王者]齋藤奨司(日本)
[暫定王者]永井奏多(日本)

<環太平洋フェザー級選手権試合/5分3R>
上原平(日本)
たてお(日本)

<バンタム級/5分3R>
宮口龍鳳(日本)
倉本一真(日本)

<バンタム級/5分3R>
杉野光星(日本)
ザヒド・アフメドフ(インドネシア)

<ストロー級インフィニティリーグ/5分2R>
旭那拳(日本)
友利琉偉(日本)

<ストロー級インフィニティリーグ/5分2R>
マッチョ・ザ・バタフライ(日本)
田口恵大(日本)

<2025年度バンタム級新人王決定T二回戦/5分2R>
飯野雄斗(日本)
齋藤優(日本)

<ストロー級/5分2R>
大城匡史(日本)
漆田直輝(日本)

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